人麻呂03

2019年6月

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06/01/土
『人麻呂』というタイトルをつけたノートは3月目になった。本当は去年の年末から書き始めていて、まだ大学で学部長をやっている時に、入試の待機の仕事がある度にプリントしたものに赤字を入れていた。現在、半分くらいのところまで来ている感じがする。本が分厚くなると定価が上がってしまうので、450枚が限度かなと思っている。そろそろ半分を超えるくらいのところまで草稿はできている。まだ版元と詰めていないので、出版のGOサインは出ていないのだが、とりあえず完成させてから出版社を探そうと思っている。ただ難しい作品になりつつある。猿丸、人丸(人麻呂)という兄弟に、藤原不比等という謎の人物を絡め、さらに超絶的なカリスマの持統女帝、そしてそれぞれに個性をもった皇女たちを配して、恋愛などを描きながらも、言霊をめぐる神秘的な領域にも踏み込んでいくという、ややお風呂敷のテーマを用意している。これをコンパクトで躍動感のあるストーリーで描ききらないといけない。たとえはよくないかもしれないが、いまにも折れそうな竿竹で棒高跳びに挑むような気がしている。竿竹というのはリアルな文体ということなのだが、棒高跳びのバーの上には神秘的な空間が広がっていく。竿竹でその神秘的な領域に飛び込んで、あとはどうなろうとかまわないという気分で書き始めたのだが、半分近く書いてくると、竿竹の弱さが具体的に意識されるようになった。大丈夫か、と思ったところで、『漱石』という新書の仕事が入ったので、一時中断して、この新書と、児童文学の20枚と、「文芸思潮」に連載する『遠き春の日々』の最初の100枚を書くことにした。5月末締切の児童文学はすでに送った。新書も草稿は完成している。今月末の締切なのでもう1度プリントして読み返してから入稿にしたい。で、今月はとりあえずは「文芸思潮」の100枚、できれば短篇連作という形にしたいので、独立した短篇として読めるようなものに仕上げたい。7月末の締切だが、今月の半ばには100枚ぶんきっちり仕上げて、それから『漱石』を読み返し、次に100枚分を読み返し、完全に仕上げておいてから、『人麻呂』の棒高跳びに挑戦するという段取りにしたい。これは計画であって、そのとおりに実行できるとは限らないが、大学の仕事がなくなったので、たぶん予定どおりに行くと思っている。今月は講演などの仕事はない。いつもの会議があるだけなので、何とかなると思っている。さて、この週末は休み。妻が孫の運動会を見に行ったので、自宅にこもってひたすらパソコンに向かっている。『遠い日』。まだ文体が確立されていないので試行錯誤が続いている。まあ、作品の出だしというのは、いつもこんなものだ。

06/02/日
日曜日だ。ニコライ堂の鐘で起こされる。昼過ぎまでパソコンに向かっていた。スーパーで牛乳とヨーグルトなどを買う。ウヰスキーを1本だけ買おうと思ったにオマケがついていたので2本買った。そのオマケが何だかよくわからないものだった。夜、妻が帰ってきた。その前に嫁さんから画像が送られてきて、組み体操のようすは確認できた。日本の学校のマスゲームは素晴らしい。長男から送られてくるスペインの学校行事は思いきりバラバラになった自由奔放なもので、スペイン人に規律がないことがよくわかる。逆に言うと日本人は管理されすぎていて、大人になって自立できない人間が多いのではないかと思われる。教育のやり方が根本的に間違っているのだ。

06/03/月
今週は明日所用があるほかは毎日が日曜日。本日は妻と神田のうどん屋で昼食のあと、大手町の銀行へ行く妻と分かれて、こちらは運転免許更新センターへ。以前、三宿に住んでいたころは三軒茶屋の先にある世田谷警察署に行っていた。御茶ノ水に引っ越してからは2度目の更新。都内で更新できるのは3つの試験場の他に、2つのセンター、あとは各地の指定警察所ということになるのだが、そのセンターは新宿と神田にあるらしい。ということで、徒歩圏のところに神田センターがあるので前回もそこへ行った。今回は70歳になっているので先月、土地勘のある武蔵境の教習所で教習を受けてきた。その証明書があると手続きは簡単で、新たに講習を受ける必要はない。流れ作業で、暗証番号の入力、目の検査、写真撮影ということで、10分ほどで完了した。ただし次は4年後(令和5年)ということで、すると74歳だから、認知症の検査は受けずに更新できるのか。とにかく新たな免許証をゲットした。発行日も令和になっているのでありがたい。

06/04/火
文藝家協会で本の未来研究会。一人で出版社をやっている人の講演。有益な話であった。『遠き日』毎日少しずつ修正している。少しずつよくなっていると思う。

07/05/水
今日は休み。というか今週はずっと休みだ。しばらく車を動かしていないので妻の運転で深川ギャザリアに行く。イトーヨーカドーが入っているショッピングセンター。まだ三宿に住んでいたころに行ったことがあって、その近くを通りかかった時は、ここに店があると確認していた。御茶ノ水に引っ越してから、何度か門前仲町には行った。深川不動とか、花見とか。その門前仲町の少し先にギャザリアがある。外堀通りを大手町で左折して永代橋に向かっていけばあとは一本道。浜松の仕事場にいる時は、志都呂イオンとか、鷲津のイオンとかによく行くのだが、それよりも遙かに近い。住んでいる集合住宅の敷地内にスーパーがあるし、デパートも歩いて行けるところにあるので、車に乗って出かけるということがほとんどなかった。先週だったか、豊洲のホームセンターに初めて行った。ギャザリアはもっと近い。自分のズボン、半ズボン、ティーシャツなどを買う。お好み焼き屋で昼食。あとは妻が買い物をしている間、ベンチでメモをとっていた。この施設は志都呂イオンなどと比べれば異様にすいている。まあ、週末には混むのだろうが、駐車場も入れやすい。ここの駐車場は入る時にカードなどを発行しない。浜松では当たり前だが、都心の駐車場は無料ではないだろう。どうやらゲートに近づくと写真をとるらしい。そういえば住んでいる集合住宅の駐車場も、ナンバーを登録してあるので、ゲートに近づいただけでバーが上がるようになっている。ギャザリアでは店内から駐車場に出るところに機械があって、車のナンバーを入力すると写真が出る。それで自分の車を確認してOKのボタンを押すと、割引券があるかと機械が尋ねる。ズボンを買った時にくれた割引券のバーコードみたいなものをカメラのレンズに見せるとそれでOK。駐車券みたいなものは何もないので大丈夫かとも思うのだが、問題はなかった。これまではいくつかの駐車場(たとえばオペラシティー)で、入口で受け取った駐車券を機械に入れて清算すると、出る時に駐車券をチェックしないで出られるようになっていすたのだが、あれも車のナンバーをカメラで読み取っているのだろう。

06/06/木
今日も休み。猛暑をついて役所に行く。何かの書類を提出した。何の書類なのかよくわからないのだが、とにかく終わってほっとした。60歳になった時に、年金の手続きにどこかへ行ったことを思い出した。あれはどこだったのか。当時は世田谷区の三宿に住んでいた。世田谷線に乗ってボロ市の開かれる名主の旧宅の近くだったように思う。日本国民である以上、こういう手続きは大事だ。

06/07/金
銀行に行ってくれと妻に頼まれていたのだが、雨天なので延期。急ぐ用ではないらしい。昨日から、『漱石』の2回目のプリントを読み返している。1度じっくり見たはずなのだが、タイプミスがいくつか見つかった。それでも前半は何度も読み返したので、大幅な直しはない。後半は一気に書いたので、論旨を揺れているところや、説明がくどいところがあるかもしれない。とにかく最後まであまり時間をかけずに読み通したいと思っている。とはいえ『遠き日』も毎日少しずつは先に進みたい。ようやくこれまで書いたところの修正が終わって、先に進めそうだ。1964年という、自分が高校1年の時の話なので、時代状況を少しは書いておかないと、若い読者には伝わらないだろう。ただし歴史を書く作品ではないので、話の流れをそがないようになるべくコンパクトに語りたい。そのあたりが難しいところで、ただの小説ではなく、いわばぼく自身の個人的な歴史の集積となる作品なので、しっかりと時代を押さえておきたい。『夏目漱石の青春小説』でも、明治末期という時代背景が重要な意味をもっている。『こゝろ』の先生がなぜ唐突に自殺したのかを考えるためにも、時代を抜きに語ることはできない。いまここにいるぼくという存在にも、時代は関わっている。ぼくはここ数年、羽田プロジェクトというものに関わってきた。1967年の羽田闘争で亡くなった山ア博昭くんは、高校の同窓生だった。自分の高校時代を書くにあたっては、そのことを書かないわけにはいかない。もう一つは、埴谷雄高さんに会いにいった話も重要だ。当時の埴谷さんは、学生運動に関わっている若者にとっては、神さまのような人だった。そのことも、時代背景をちゃんと書いておかないと伝わらないだろう。だが、時代について書こうとすると、小説のストーリーの流れは滞ることになる。そのあたりに難しさがある。

06/08/土
急に思い立って映画を見に行くことにした。朝起きてすぐに映画館のサイトをチェック。チケットを購入してから、日本橋に向かう。歩いて映画を見に行けるのはありがたい。映画館に行く前に昼食。それからチケットをプリントして場内に。買い物をして帰る。戸外は涼しい風が吹いていたが、日当たりのいいわが部屋は温室みたいになっているのでエアコンが必要。『遠き日』は学生運動の説明に深入りしすぎた感じかするのだが、まあ、とにかく先に進んで行く。あとは『漱石』のプリント。いい感じで進んでいる。

06/09/日
不要な本をもって書庫に向かう。徒歩5分のところに部屋を借りている。本棚が必要なのだが手配をするのがめんどうなのでそのままにしてある。何度か箱の中の本を探したので、部屋中に本が散乱する状態になっている。まあ、そのうち片づけたい。必要な本があった。9月に朗読の会があるので自著の中で朗読に耐えそうな箇所を探している。『釈迦と維摩』と『西行』を候補と考えている。自宅に『釈迦と維摩』が見つからなかったが、書庫ではすぐに見つかった。その後、神保町の方に散歩するつもりだったのだが、雨が降り出したので自宅に戻った。運動不足で肩が凝っている。パソコンに向かう時間が増えている。少し仕事をセーブしないといけない。

06/10/月
今日も休み。今日は時の記念日だな。天智天皇が漏刻によって寺の鐘をつかせた。『白村江の戦い』にもそのことが書いてあるはず。ただしぼくの本では大海人が兄の中大兄に頼んで漏刻を作らせたことになっている。朝から雨。どこにも出かけず。

06/11/火
文藝家協会理事会の日だが、理事会前の常務理事会の前に百周年準備委員会というものがあると連絡を受けていたので午後一時半に文藝家協会に出向く。それから理事会、その後の飲み会まで、長い1日だった。加賀乙彦さんはいつもぼくのドストエフスキーを褒めてくださる。ありがたいことだ。『カラマーゾフの兄弟』の続篇などというものを読んでいる人は、数人しかいないのではないか。

06/12/水
本日は著作権情報センター総会。何やらいつも会っているようなメンバーと顔を合わせる。ぼくは理事会にも出席しているのだが、総会は年に1度なので、いつもの部屋がぎっしり満員になっている。その狭苦しい席で、ひたすらプリントを読む。40分くらいで総会は終わったのだが、その短い時間、集中したので、エンディングの直前まで読み進んだ。最後はややこしいので、パソコン上で少し試行錯誤したい。ということで、自宅に戻ってから、赤字入力をスタート。赤字を入力すれば完成なので、担当編集者に送ってしまいたいのだが、まあ、来週の頭でいいだろう。始めの部分はほとんど直しがないので、どんどんとページが進んでいくのだが、20ページ目くらいから直しが多くなる。ここからが大変だ。

06/13/木
妻とディズニーシーへ行く。四日市の孫2号が愛しているジェラトーニの着せ替えの衣服を買う。あとは散歩しただけ。よくわからずに乗ったアトラクションは1つは横揺れ激しく、もう1つは縦揺れが激しくて、老人には不向きであった。今度行く時は、幼児用のものに限定したいと思う。

06/14/金
医者に行く。先月、血液を採ってもらった。その検査結果。まったく問題なし。それから銀行へ行く。何かの手続き。こちらはお金には関わらないことにしているのですべて妻任せだが、手続きの時には本人がついていく必要があるらしい。帰りに近くのラーメン屋に寄る。あとはパソコンに向かってひたすら赤字入力。赤字を入れながら、さらに削れるところがあれば削っていく。この週末には作業が終わる。月曜には担当編集者に遅れるだろう。

06/15/土
昨夜、赤字入力が完了した。図2点もスキャンして画像化した。これで完了なのだが、最後のところは書き直しが多かったので、再度、8章と9章をパソコンの画面上で読み返して修正を加えた。これで完了。終わったところで時間を見ると、コーラスの練習の時間が迫っていた。八王子めじろ台というところなので、都営新宿線で笹塚まで行き、準特急に乗り換える。徒歩の時間も入れて、自宅を出てから1時間半くらいかかる。大学の仕事があまりに忙しいので2年間、休んでいたのだが、定年退職となったので先月から出るようになった。終わって団員6名で飲み会。このために行くようなものだ。ぼくが一番若い。ちゃんと退職金を貰ってリタイアした人々なのでゆとりがある。この人たちの退職金は、団塊の世代が支えたのだが、団塊の世代がリタイアする時には、下の世代は人数が少ないので、そのころから退職金が減るだけでなく、役職定年が設けられて退職間際の給料も減らされるようになった。まあ、団塊の世代が死に絶えるまでは、さまざまな問題が生じていくだろう。これは団塊の世代のせいではない。こういうカタマリが存在していることがわかっていながら、対策を立てなかった政治の責任なのだ。

06/16/日
昨日は一日中雨だったが、本日は快晴。久々に富士山が見えたが、雪が少なくて剥げた感じになっている。これからは夏の富士になっていく。妻が旅行に出かけたので、本日から独身。軽く散歩に出てから、パソコンの前に座っている。まずは昨日完成して『夏目漱石の青春小説』を担当編集者に送付。これがすべての作業が完了した。次は『遠き春の日々』。出だしで躓いたまま放置してあった。これを仕上げないといけない。

06/17/月
本日も快晴。空気が乾燥している。午後、散歩に出たが風が爽快だ。妻不在なので独身を楽しんでいる。『遠き春の日々』最初から書き直している。まあ、こうやって試行錯誤を重ねていきたいと思う。

06/18/火
本日も軽く散歩。妻の不在は今日まで。まあ、妻がいなくても短期間ならまったく問題はない。長期的になると支障が出てくるのだが。いま住んでいる住居についても、わからないことがいっぱいある。洗濯機の使い方がわからない。昔、子どもが幼かったころは、洗濯は自分の担当だった。しかしそれは昔の洗濯機で、いま自宅にあるものはまったく形状が違っているので、触らないようにしている。ディスポーザというものもよくわからない。一回くらいやり方を聞いたのだが、触らないようにしている。料理をするわけではないのでゴミは出ない。コンビニで買ったものは完食すればいい。まあ、とにかく、妻が帰ってくるのでほっとしている。

06/19/水
夕方散歩。水道橋まで歩くと5000歩を超える。今日は蒸し暑くてあまり快適ではなかった。『遠き春の日々』。ようやく動き始めた。この調子で進んでいけば今月中にはとりあえず100枚にはなるだろう。

06/20/木
本日はSARTRASの会員総会と理事会。どこが違うのかよくわからないが、多少のメンバーの入れ換えがある。総会が短く終わり、次の理事会までかなりのタイムラグがあった。その間、次の新書の企画を練っていた。小説はなかなか完成に辿り着けないし、『人麻呂』はじっくりと時間をかけて仕上げたいと考えている。そのため、並行して新書を書くことで頭脳のトレーニングをしたいと思っている。

06/21/金
午前中に役所に出向いて、定年退職の手続き。これで退職に関する手続きがすべて終わった。さて、担当編集者から、「青春小説」という文言を増やしてくれと注文が届いた。「教養小説」という言い方をしている箇所もあったので、なるべく青春小説で統一することとした。まだ原稿のうちだと検索で修正箇所がわかりやすいので、この段階で修正できてよかった。妻の運転で深川のスーパーへ。サイゼリアで昼食。生ビールをいっぱい飲む。夕方は日本点字図書館。

06/22/土
来週はひまなのでこの週末から長く休み。急ぎの仕事もないのだが、次の新書の企画を練って、レジメを書いている。企画を出さないと仕事ができない。新書は各領域を広げていくデモンストレーションなので、いままで書いていないジャンルを開拓したい。

06/23/日
日曜日はいつもニコライ堂の鐘に起こされるのだが、今日は鐘の鳴る前に目が覚めた。三宿にいたころに15年ともに暮らした犬の夢を見た。犬の散歩につきあうのは、いまから思えばたいへんな労苦だった。こちらが犬の奴隷になっている感じだった。幼い子どもがいる生活もけっこう疲れる。そういう意味では、妻と2人きりで生活しているいまがいちばん楽だ。次の新書の企画が出来たので担当編集者に送る。これですべての作業が終わったので、小説に戻る。『遠き春の日々』。15ページまで出来ている。半分くらいだ。締切は来月末なのでまだゆとりはあるが、早めに仕上げて『人麻呂』に移りたい。この作品の前半部では猿丸大夫が活躍するのだが、猿丸大夫には伝説がある。宇都宮や日光の二荒神社の神の仲間の猿の化身で弓の名人ということだ。「小倉百人一首」の色紙を藤原定家に依頼したのが宇都宮蓮生なので、猿丸大夫をぜひ入れてほしいとリクエストがあったのかもしれない。ただ猿丸大夫は歌人としてはほとんど作品を残していない。百人一首の歌も人麻呂が代作したのではないかとぼくは勝手に考えている。人麻呂の妻という存在も、猿丸の妻だったのかもしれない。まあ、そんなことをいろいろ考えているので、忘れないうちに『人麻呂』に取りかかりたい。水道橋まで散歩。4000歩。涼しい感じだが湿度が高いので歩いていると汗が流れる。暑くないだけましか。集合住宅の中でも今日はエアコンを動かしていない。陽射しがないと楽だ。

06/24/月
朝から雨。夕方、日が出てきたので散歩に出たら、また雨が降ってきたので、近くのコンビニでスイーツを買って帰ってきた。たまには甘いものを食べたい。今週は金曜のオーファン委員会まではとくに会議もないので、自分の仕事に集中できる。『遠き日』。順調に進んでいる。この作品は100枚ずつ3回に分けて雑誌に掲載するのだが、それぞれを独立した短篇にしたいと思っている。100枚の切れ目で作品として完結させなければならない。そのため時間軸に沿って語るのではなく、テーマを絞って、そのテーマに関しては完結するという感じにしたいと思っている。終わり方をまとめないといけないので、とりあえず100枚書いてから、どのようにまとめるか検討したい。

06/25/火
妻が日帰りで松本のリンゴ園に行ったので、朝から一人でパソコンに向かう。一人きりでいると集中力がアップする。高校時代の思い出を書いているので、妻がいると気が散るのかもしれない。妻も登場人物として出てくるのでどうもまずい。本日は文学の話になってきたので、調子が出てきた。この方向で進んでいけば30ページに到達するのは意外に早いかもしれない。夕方、マッサージ。2週間前に首が痛かったのだがそれは体操で直した。しかしパソコンに向かっていると首や肩が固まってくる感じだ。月に一度、マッサージでもみほぐしてもらうのだが、すぐに固まってしまう。大学で授業をやっていたころは、立ったまま90分講義をする。ジェスチャーなども交えるので、体操をするような感じなのだろう。歩くだけでも全身がほぐれる。あまりパソコンの前で集中しすぎるのもよくないのだろう。新書を書いているとどんどん書けるので首や肩が固まりやすい。小説の場合はすぐに行き詰まる。その時に体操をやらないといけないのだが、どうしてはパソコンでソリティアなどをやってしまうのがよくないのだろう。

06/26/水
仕事は順調に進んでいる。夕方、知人の招待で五反田の鳥料理屋で食事。妻は美容院からの帰りで、五反田駅前で待ち合わせた。なかなかいい店だった。ただ五反田というのは行きにくいところだ。行きはJRで神田乗り換えで山手線だったが、駅での時間調整が多くけっこう時間がかかった。帰りは妻といっしょだったので都営地下鉄で帰った。妻は高齢者パスがあるので都営の電車やバスに無料で乗れる。これだと三田と神保町で乗り換えになるのだが、直線的なルートなので意外に早かった。

06/27/木
作業は順調に進み、高校を休学するところまで来た。休学中の話は次回に回して、今回は妻との出会いに絞って話を構成する。ここから先はやや緊張するところだが、たぶん勢いで書けるだろうと思う。夕方は四〇年来のつきあいの友人夫婦と御徒町で宴会。この友人のご子息が操縦する船で三月に花見にでかけた。花は満開だったがとても寒い日だった。寒かった、とぼくが語ると、親二人は息子さんの船に乗ったことがないという。確かに高齢者が乗るような船ではなかった。昨日も宴会だったので、少し酒を飲みすぎたか。宴会があっても夜中に寝酒を飲んでしまうので、体調を戻さないといけない。

06/28/金
今週の公用はこれだけ。文藝家協会でオーファン委員会。いろいろと問題はあるものの今年も文化庁の実証事業としてスタートできそうだが、今年が最終年となるようだ。ということは来年は補助金なしでやることになる。それまでに体制を調えないといげない。『遠き春の日々』はいよいよ今回のエンディングに突入する。妻が出てくるので緊張する。もうこの種の私小説を書くのは最後にしたい。死ぬ前に書いておきたいという思いで書いている。本当は妻が死んでから回想をすべきなのだが、自分の方が先に死ぬかもわからず、とにかく元気なうちに書き残しておきたい。出版社とはまだ話を詰めていないのだが、『文芸思潮』の編集部から声がかかったので、100枚ずつ3回連載することとした。半年に1回くらいの雑誌なので、1回ずつ独立した短篇連作にしたい。ということで、この100枚の最後のところは山場を作る必要がある。まあ、たぶん盛り上がると思っている。

06/29/土
朝から雨。夕方、妻と散歩。千代田線で日比谷まで行って、八重洲の大丸まで歩き、弁当を買って帰る。『遠き春』はいよいよゴールが見えてきた。

06/30/日
日曜日。朝から雨。止んだようなので散歩に出た。順天堂大学病院の裏手を歩いていると水道局の博物館のようなものがあった。入場無料。なかなかの施設であった。江戸時代の水道のようすがよくわかった。とくに玉川上水の難工事のようすがわかった。M大学の前には千川上水というのがあって、すぐ先で玉川上水と分かれているのだが、こういう分岐がいくつもあって、明治時代まで使われていたようだ。そのもっと以前に小石川の方から引いた水道があって、その下に神田川のバイパスを掘ったので、水道は水道橋となり、それが駅名にもなったようだが、実際の水道橋はこの博物館のあたりにあったようだ。三田用水という分岐もあって、恵比寿の先に橋があったこともわかった。いろいろと学ぶところが多かった。もう少し歩きたかったのだが、博物館を出ると雨が降ってきたので自宅に戻った。さて、6月も終わった。5月の一ヵ月で『夏目漱石の青春小説』の草稿を書き終え、今月読み返してすでに完了している。それから「文芸思潮」に掲載する『遠き春の日々』を書き始めて、現在、草稿のエンディングの直前まで来ている。締切は7月末なので余裕はあるのだが、連載の3回分を一気に書くことも考えていたので、その点ではうまくいかなかった。出だしでずいぶん試行錯誤したので時間がかかってしまった。とりあえず草稿ができればプリントして読み返し仕上げたいと思っている。来月はまた『人麻呂しのびうた』に戻るつもりだ。これは半分のところまで来ているので一気にゴールに到達したい。


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