平安時代ノート03

2018年3月

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03/01/木
オーファン委員会。いつもは文藝家協会だが、会議室がふさがっているとのことで、本日は複製権センター。昔は複写権センターといっていて、そのころから何度か行ったことがある。表参道のスーパーが入った建物の3階。昔行った時は池尻大橋に住んでいたので電車で2駅目だった。表参道は便利なところで、千代田線も通っているから一本で行けるのだが、新御茶ノ水から8駅目だ。まあ、大学に行くよりははるかに近い。会議は委員長の挨拶をするだけなので、ぼうっとしていた。頭の中は紫式部と道長でいっぱいになっているので、著作権のことなど考えられない状態だ。来週はこのテーマでシンポジウムに出席する。それまでに紫式部問題が解決していればいいのだが。

03/02/金
大学。卒業判定の教授会。わがゼミは無事全員が卒業できた。院生4人も無事終了。うち2名はわたしが修士論文を担当した。留学生だ。外国語で論文を書くなんてすごいと思う。わたしの長男はスペインに住んでいて、スペイン語の世界に適応している。わたしは語学はまったく不得手だ。考えてみれば日本語もうまくしゃべれない。講演で講義はできるのだが、会話が苦手だ。空想癖があって、会話をしていても相手の言っていることをろくに聞いていないことがあるので会話が噛み合わない。まあ、それで70年近く生きてきたのだから、何とかなるということだ。研究室のプリンターでここまでのところをプリントする。93ページまで。あと7ページほど必要だ。

03/03/土
本日は入試待機の予定だったが、急に休みになった。それでもプリントを見る仕事をすべきかとも思ったが、自宅作業になったので、先に草稿を完成させることにした。8ページほど一気に書いて完成。プリントもした。101ページ。系図などをつけるのでこれくらいの文字数でOKだろう。夕方、神保町のベルギービールの店で岳真也さんと打ち合わせ。歴史時代作家クラブに今後について考える。まあ、いまのままでいいだろう、ということにする。それでいいのだ。いかにあるべきかといったことを、あまり深く考えない方がいい。ビール3杯ほどでけっこういい気分になる。自宅まで歩いて帰れるので、酔いが醒めないうちに自宅に着いてしまう。夜中にプリントを見たがけっこう赤字が入る。出だしの部分はすでに何回もプリントにして読み返しているはずなのに、簡単なタイプミスが見つかったりする。内容も修正もある。これではいつまでたっていも完成しない。このプリントチェックはもう最後という気持で集中したい。

03/04/日
週末が休みになるのはありがたい。月曜もいまのところ休み。プリントチェックをしたいところだが、妻との付き合いも必要なので大手町を散歩。二重橋前まで電車で行って、三菱一号館の美術館に入る。ルドンの花の絵が世界から集められている。三菱がもともと所蔵している花の絵が中心だが、その周囲の壁の絵として描かれたものがすべて集まっている。いまはオルセーにある壁絵だ。オルセーには2度ほど行ったことがあるが、オルセーには見るべきものがたくさんあるので、ルドンなどを見ているひまはない。こうして大手町で見るのもいいものだ。以前、文部省・文化庁が三菱ビルに入っていたことがあって、何度も通った。かつて三菱重工本社があって爆破されたところだ。そこに行く度に、いまここどもう一度爆発が起こって自分が死んだとしても文句は言えない、などと考えていた。近代社会は弱者を切り捨てながら一部の金持の幸福を追求する。弱者がテロリズムに走ることには必然性がある。なるべく金持とはお友だちにならないようにしなければならないし、大手町などは歩かない方がいい。そう思いながら、わたしはいま大手町が目の前に見える集合住宅に住んでいるし、大手町を散歩することも多い。本日も美術館を出たあと、中庭を挟んだビルの中華料理屋で昼食。胃がもたれている。さて、プリントチェックをしないといけない。

03/05/月
今日も休み。強風が吹いている。どこへの出かけずプリントをチェック。赤字がいっぱい入っていく。何度も読み返したはずなので、修正点がどんどん見つかっていく。自信がなくなっていく。

03/06/火
文藝家協会で出版社協議会。会の名称が「本の未来研究会」になったそうだ。わたしは会長なのだけれど、名ばかり会長なので、「本の未来ねえ……」と胸の内でつぶやいている。これは「紙の本」ということだろう。紙の本がなくなっては困る。そう思っているのは教養と見識のある人だろう。日本は世界的にも稀有な大衆社会で、2人に1人が大学に進学する。専門学校や短大を含めれば8割の若者が何らかの高等教育を受けている。しかし大学を出た人のすべてが「教養と見識のある人」ではないだろう。本屋さんで紙の本を買うことに喜びを感じる人は、もっと少ない。ヨーロッパの書店はそういう少数の人々を相手に途方もなく高価な本を売っている。日本の場合は、東京の大書店だけが、そういう人を相手にしている。地方の書店が撤退していくのは仕方がない。ただ大手出版社はオンデマンド出版に積極的に取り組もうとしている。本屋に注文すれば翌日には本屋さんにその本が届いている。サラリーマンや学生など、外出がちの人はアマゾンの宅配よりもそちらの方が求めるだろう。まだ本屋さんが生き残る道はあると思う。さて自分の仕事。系図を作り始めている。ものすごく手間がかかる。しかし歴史に関する本は系図が決め手だ。系図があればすべてがわかる。しっかりとした系図を作りたいと思う。

03/07/水
大学。学部長会議。けっこう時間がかかった。今日はこれだけ。系図。一つ一つが時間がかかる。

03/08/木
早朝に起きて大学。判定会議。今日はこれだけ。すぐに帰らずに研究室の掃除。不要のものを廃棄処分にする。学生のレポート等をシュレッダーにかける。4月からの大学院の授業のために資料を作る。勤勉な先生だ。明日はオーファン委員会のシンポジウムがあり、そのあと打ち上げがあって、それからさらに大学の飲み会がある。長い1日になる。体調を調えるために本日は休肝日とする。

03/09/金
本日はまだ代々木上原のJASRACの隣のけやきホールへ。オーファン委員会主催のシンポジウム。まず委員長としての挨拶。それからパネリストとしてディスカッションに参加。といっても意見の対立があるわけではないので、4人のパネリストが短いコメントを次々に発信する。楽しい語らいの会といった感じだが、裁定制度の現状が伝わったと思う。打ち上げの軽い飲み会、という設定だったが、飲み放題の雑談の会で、ジャックダニエルのハイボールはさすがにふだん寝酒に飲んでいるニッカよりは美味で、5杯ほど飲んでしまった。出来上がった状態で小田急に乗り新宿へ。京王プラザで武蔵野大学の先生方の懇親会。ここはビールとワインしか出ない会で、すでに出来上がっているわたしはビールを少し飲んだだけ。やれやれ。長い1日だと思っていたが、始まってみると、あっという間だった。明日は休み。本日はわずかな待ち時間にプリントを読み進めた。後半に入ったのでここからは楽に読めると思う。

03/10/土
東京大空襲の日。わたしの生まれる前のことだ。本日は休み。軽くドライブ。いつも入る代官町のランプが閉鎖されていた。なぜだろう。皇族がどこかにお出かけなのか。車をガレージに入れてから、住んでいる高層住宅の地下にあるスーパーでウィスキーなどを買う。酒が残り少なくなると不安になる。昨日は飲み過ぎたかもしれない。本日は軽い寝酒にしよう。明日はまた早朝出勤だ。

03/11/日
日曜出勤。有明キャンパスで大学院入試。これで10回以上ある入試の行事がすべて終わった。あとはもう1回だけ判定会議がある。割合早く終わったので東京テレポート駅まで歩く。ビーナスフォートの下にあるニトリで、水を蒸発させる紙細工を買う。犬と猫がある。犬を寝室、猫はわたしの仕事スペースに置くつもり。東京テレポート駅から「りんかい線」に乗る。しかも大崎行き。いつもは「ゆりかもめ」で豊洲に向かう。「りんかい線」に乗るとしても新木場に向かう。テレポート駅まで来ると、大井町で乗り換えた方がいいような気がする。ということで、東京テレポート駅から久し振りに大崎方面に向かう。何となく恥ずかしい駅が並んでいる。「天王洲アイランド」「品川シーサイド」こういうカタカナは止めてほしい。そういえば品川と田町の間に新駅ができる。「高輪シーサイド」とか、そういうのは止めてほしい。「高輪芝浜」というのも候補らしいが。品川の北にあるから「北品川」でいいと思うのだが、そういう駅が京浜急行にある。しかもなぜか品川の南にある。品川駅が品川区にないからそういうことが起こるのだ。さて、入試の待機の時間で、プリントチェックを終えた。あと3枚系図が必要。赤字入力はけっこう時間がかかりそうだが、入力の前に赤字が入ったままでプリントをもう1度、最初から読み返してみたい気がする。何かいくらでも赤字が増えそうだが、ゲラに赤字を入れたくないので、もう1度確認した方がいいだろう。明日は休みだ。じっくりと読み返してみたい。前半だけでもいい。重複のところや、論旨が一定でないところ。伏線を張ったのにあとで対応する箇所がないところとか、そういうのが見つかりそうだ。書きながら考えているので、思いがけない展開になっていたりする。前に張った伏線が活きていないとか、思わせぶりなだけで前振りの効果が出ていなかったのすると、読者を裏切ることになる。今晩はゆっくりと読み返せるだろう。毎日、Footballのビデオを見ていたのだが、そろそろ飽きてきた。いまはトレードの話題になっている。QBのニック・フォールズにパスを投げた控えタイトエンドのバートンはトレードに出されるようだ。勝利の立役者の一人だが、肝心のタイトエンドとしてはほとんど出番がなかった。トリックプレーのところだけ出てきて、誰だそいつは、という感じで黒子のように姿を消していて、突然パスを投げたのだ。MVPのフォールズの去就も気にかかる。大金を出されてもチームがトレードに出さないだろう。英雄となったQBを手放すわけはない。正QBのウェンツは膝を傷めているので、来シーズンのスタートから復帰できるかはわからない。フォールズでスタートして、ようすを見てウェンツを使うということでもいいはずだ。ラムズ、シーホークスに動きがあるが、ここは正QBが決まっているので問題は少ない。頼れるQBがいないところはどうするつもりなのか。新人のドラフトで毎年、4〜5人の新人QBが入る。昨シーズンの有力新人QBで、まだレギュラーになれていないのもいる。ウェンツも2年目で開花した。イーグルスはオフェンスとディフェンスの双方のラインが完璧だった。そのメンバーを維持できるのか。ウェンツもフォールズも若いQBなので年俸は安い。年齢の高い選手は切られるかもしれない。スティーラーズはQBロスリスバーガーが高齢なので、いつまでもつか心配だ。ジャイアンツはもっと心配。セインツも気にかかる。シーズンオフでもFootballはなかなか愉しめる。日本のジャイアンツは上原が復帰した。沢村も復活しそうだ。6回に上原、7回に沢村という布陣ができれば、先発ピッチャーはエースの菅野を除いては、5イニングまで投げればいいことになる。あとは若手野手が2人ほど出てくれば、今年は優勝争いに加われるのではないか。サッカーにはまったく興味がない。Wカップに出ても3連敗で終わりそうだ。今年もスペインを応援することになるだろう。

03/12/月
近所の医者で定期検診。何事もなし。本日は休み。プリントを最初から読み返す。まだ赤字が入る。昨日は3・11だった。東北とは縁がないので、思い起こすのは自分のことだけだ。文藝家協会へ行く用があって永田町の地下鉄のエスカレーターに乗っている途中で揺れを感じた。エスカレーターが壊れたと思ってあわてて駆け上がったら、高速道路の照明の柱が振り子のように揺れていた。武蔵野大学の客員から専任になる春休みで、前任者の古代の先生の送別会に招かれていた。電車があれほど完全にストップするとは思わなかった。総務省の人との打ち合わせがあって話している間にも何度か余震があった。終わってから協会の事務所でテレビを見て東北の惨状を知った。リアルタイムで津波が田畑を呑み込んでいた。それから世田谷区の自宅まで徒歩で帰った。自宅はまったく無事。本棚の本が全部落ちたという人もいるので、場所によって揺れ方が違ったのだろう。そのあと、妻と次男の嫁さんが孫を連れてスペインに避難した。ヨーロッパでは原発事故を大げさに報道していて、長男からすぐ来るようにと催促があった。震災の直後にも長男から、ドイツの気象局のホームページを見るようにと指示された。ヨーロッパの人はそこを見て、南東の風が吹いていて放射能が北西に広がることを知っていた。日本ではその情報を隠して、北西地域の人々を避難させなかった。そんなことが思い起こされる。森友問題で国会に提出されていた文書がインチキだったことがわかった。日本はとても恥ずかしい国だ。これで首相が代わらなかったら、中国や北朝鮮よりもひどい独裁国家だということになる。

03/13/火
文藝家協会評議員会、常務理事会、理事会。終わってから加賀乙彦さんたちと軽く飲む。会議の間に自分の仕事も少し進める。今回の本は系図がたくさんある。これをどの位置に入れるかも考えないといけない。

03/14/水
羽田プロジェクト編集会議。昨年10月、羽田闘争についての文集を発行し、第一の目的を達成したのだが、原稿がたくさん集まったため、資料を入れる余地がなくなった。それで第二弾として資料篇を出すことが最初から決まっていた。本日はその編集会議。第一篇を出していただいた出版社が今回は最初から関わっているので話はスムーズだ。新聞記事など必要な資料はすでに揃っている。スキャニングとデータ化の進行状況を見ながら、必要な文章をつけたしていけばいい。三田はプロジェクトの歴史を書くことになった。自分の日記帳があるので何か書いてあるだろう。このページにも何か書いたかもしれない。とにかくそういう記事を頼りに記憶を遡っていけて何か書けるだろう。昨日は大量の花粉を浴びたようで、夜中に起きてしまった。ふだんからアレルギーの薬を呑んでいるのだがそれでは効かない。実は見事に効く市販薬がある。ただし昏倒するくらいに眠くなる。夜中にその薬を呑んだので朝、起きるのがつらかったが、効果はあった。明日は休みだ。どこにも出ないようにしよう。

03/15/木
今日は休み。自宅で仕事。花粉が舞っている。どこにも出かけず。明日は卒業式。昨年までは有明コロシアムが使えたのだが、オリンピックに向けて改修工事に入るとかで、大学の体育館になる。午前と午後に分かれることになるが、学部長は両方出席で、雛壇の上に並んでいなければならない。さらに大学院の修了式もあり、場所を新宿に移して文学部のパーティーがある。親しくなったゼミの学生ともお別れとなる。長い1日になるので体調を調えたい。

03/16/金
卒業式。去年は有明コロシアムが使えたので1回だったが、今年は武蔵野キャンパスの体育館なので、午前と午後の2部制。学部長は両方とも舞台の上に並んでいなければならない。さらに夕方の大学院の修了式もある。文学研究科は女の子ばかり四人。無事に終了できてよかった。一人は博士課程に進む。留学生3人はこれでお別れ。夜、学部の卒業パーティー。長い1日だった。無事に自宅まで帰りついた。一日中小雨が降っていた。会場の新宿ヒルトンは西新宿の駅まで地下道で行ける。傘を出したくないので国会議事堂前で千代田線に乗り換えるつもりだったが、乗り込んでくる乗客の傘が濡れていないのでそのまま淡路町まで乗った。小雨だが傘を出すほどではなかった。これで今シーズンも終わった感じだが、月曜日には教授会がある。昨日の夜、『源氏物語』の成立について、パラグラフを一つ追加した。全体の枚数が少し増えたかもしれないが、削ったところもあるのでちょうどよいくらいだろう。

03/17/土
週末は休み。昨日は長い1日だった。気分的に疲れが残っている。それでも妻と散歩。神田明神、湯島天神を通るいつものコースで上野公園まで。入口のところの枝垂れ桜が満開。ソメイヨシノはまだだが、ところどころに寒桜が咲いている。まったく咲いていないソメイヨシノの下で宴会をやっている人々がいた。芸大の方までいくと「めぐりん」という小さなバスが来たので千駄木まで乗って千代田線で帰った。全体の3分の2くらいのところまでチェックが進んだので、始めの方から入力を始めた。入力は集中力を要する作業なので、少しずつ進めたい。

03/18/日
夕方、妻と室町コレドまで散歩。入力作業は進んでいるが、まだ先は長い。

03/19/月
大学。教授会と学科会。問題山積。すぐには解決できない。とりあえず学年末のスケジュールを確認する。入力作業はかなり前進した。前半に赤字が多い。後半になると、すでに説明したものが多いので文章の流れがよくなっている。ただし大幅に挿入したところがあるので、そこを乗り切ればゴールが見えてくる。

03/20/火
仕事の締切が迫っているのでひたすら自宅で作業。ゴールは見えている。夕方、マッサージにいる。背中が固まっていると言われる。仕方がない。帰ってからもキーボードを叩き続ける。

03/21/水
世の中は休日だが、ひたすら仕事。歴史時代作家クラブの打ち合わせで岳真也さんと編集者のKさんと、自宅の近くで軽く飲む。軽く飲むつもりだったがけっこう飲んだ。それでも帰ってパソコンを叩き続ける。これでほぼ完了か。

03/22/木
予定では判定会議だったのだが、あと数人ということで、データを見ただけで入試課にお任せすることにした。ということで休みになった。ありがたい。朝から作業をするうちに、昼過ぎには完了。ただちに原稿を担当編集者に送る。地図と系図7点も送付。これでとりあえず手が離れた。近くを散歩。住んでいる集合住宅の、以前ドーナツ屋があったところが閉店したまましばらく次の店が入らなかったのだが、本日通りかかると工事をしていた。並びに喫茶店とパン屋がある。何屋になるのか。集合住宅の前は公園になっている。桜が二分咲きくらいになっている。週末には満開になるか。仕事が片付いたので少しのんびりしたい。

03/23/金
文藝家協会でオーファン委員会。今シーズンの最終回。文化庁の実証事業に協力して裁定制度についての相談窓口を開いてきた。来シーズンも継続して成果を確認したいというところが話がまとまった。昨日、『平安時代の反体制文学』が手を離れたので、本日から本格的に『小説を深く読む』に取り組む。出だしはできているので、コラムを書くようなつもりで、短い文章を積み上げていきたい。これも100ページくらい書けばいいのだろう。半月ほどで叩き台ができればと思っている。住んでいる共同住宅の前の公園の桜がしっかりと咲いている。週末は休みなのでどこかで花見をやりたい。老人になると毎年、あと何回、といったことを考える。100歳まで生きたいとは思っていないが、あと10回くらいは花見をしたい。

03/24/土
週末は休み。桜が咲いたということで、どこへ行こうかと考えたのだが、昔住んでいた三宿の近くにある北沢川へ行くことにした。新御茶ノ水から千代田線に乗った。向ヶ丘遊園行きの準急が来たので下北沢まで乗って、各駅停車に乗り換え、一つ先の世田谷代田。昔は地上にある小さな駅だったのだが、地下から長いエスカレータで昇った先にりっぱな駅があった。昔はよくこのあたりまで散歩していた。慣れた道を下って北沢川へ。ここから烏山川との合流点まで、ぎっしりと桜が咲いている。ここは近所の人しか来ないので上野のような雑踏がない。ついでに昔、自宅があったところも見に行く。妻はご近所に遊びに来ることがあるので何度も見ているのだが、こちらは始めて。自分の家はきれいになくなっているのだが、前の道路の感じに懐かしさを覚えた。合流点の先にも目黒川の緑道があるのだが、桜は少なくなる。緑道は国道246までで、そこから先は暗渠だった川が地上に出てくる。そこから先は桜の名所でものすごい雑踏。中目黒まで歩いた。12000歩。疲れたので新御茶ノ水まで戻って駅前のコージーコーナーでパフェを食べた。

03/25/日
いい天気。いい風が吹いている。自宅のある集合住宅前の桜は満開。5000歩ほど散歩。『小説を深く読む』という本を書いている。志賀直哉のことを考えたりしている。このところ歴史小説を書いているので、文学について考えることはあまりない。大学では「小説の歴史」という授業をやっているので、文学について語っているのだが、毎年同じことを話しているので、思考が停止している。この本では、自分の中学、高校のころから語り始めて、自分なりに発見した文学の深さについて語っていきたい。

03/26/月
春の陽気。著作権情報センターで理事会。このセンターは昔は初台にあった。それから西新宿になり、いまは中野坂上だ。いずれも高層ビルの中にあって、図書室なども完備している。しかし何だか放浪しているような感じもする。ビデオデッキからの補償金が入らなくなったことも一因だろうし、いまは録音の専用機もほとんどなくなって、補助金が減っているのだ。それでも著作権について研究するプロジェクトを運営していて、貴重な組織だということは確かだ。中野坂上にふだん行くことはない。昔、三宿に住んでいて、車で山手通りを走ることはあった。山手通りは拡幅されて、中野坂上のあたりは高層ビルが林立している。このあたりはオフィス街になりつつある。帰りに、裏道を少し歩いてみた。40年ほど前、業界誌の記者をしていたころ、同僚がこのあたりに住んでいて、清水橋というところで飲んだことがあった。山手通りから一歩奥に入ると、蛇行する神田川の周辺に迷路のような細い道が毛細血管のように広がっている。池尻、三宿のあたりもこんな感じだった。妙な懐かしさを覚えた。

03/27/火
大学。3年、2年、4年の順にガイダンス。同じことを3回語る。その間に、退学する学生にも対応する。かなり疲れたところで、講師の先生方との懇親会。新任の先生も加わって顔合わせ。2人の特任の先生もすごい経歴の方なので、少し緊張したが、わたしの「明るく楽しい文学部」というスローガンに賛同していただいた。文学は愉しい。この一言で、わかりあえるものがある。当大学の明るい学生たちと愉しいゼミをやっていただければと思う。

03/28/水
日本点字図書館理事会。『小説を深く読む』も調子が出てきた。

03/29/木
仕事場へ移動。花粉が舞っている。風が吹き抜けていく。気分がいい。年末年始は寒かったが、いまはいい季節だ。

03/30/金
仕事場のある浜松も桜が満開。この仕事場を開設してから37年目になるが、桜の季節に来ることはめったにない。思いがけないところに桜が咲いている。仕事場からもあちこちに桜が見える。この家を建ててくれた大工さんが来たのて、ウナギを食べに行く。昨日は花粉症でよく眠れなかった。今晩は早めに寝たい。夕方、庭のミカンをとる。庭といっても、庭の先のものすごく急な斜面に4本ほど大工さんが植えてくれたもので、温州ではなく、夏ミカン系の柑橘類だ。斜面なので足場が悪い。手が届かないところは、野鳥の方々に開放したい。すでに野鳥についばまれた実もいくつかあった。大工さんはミカン農業もやっていて、2箱、温州をくれた。ありがたい。今回は3泊の予定なので、ゆっくりできるのはあと1日だ。

03/31/土
昨夜も花粉症で眠れなかった。明け方に寝て少しは寝た。本日はどこにも出ず。庭先で使い捨てのコンロは焼き肉を食べる。孫がいないのでのんびりできる。今回は短い滞在だ。明日には東京に戻らないといけない。学部長の仕事はあと一年続く。それで解放されるので、来年のいまごろはもっとのんびりできるだろう。



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