尼将軍07

2021年2月

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02/01/月
月が替わってこのノートも新しいページになった。『尼将軍』の7ページ目になったが、この作品はすでに草稿が完了している。いまプリントに赤字を入れている段階だが今月半ばまでには完了しそうだ。これでデッドストックが3作たまることになるが、そろそろ営業活動もやらないといけない。といってもこちらは高齢者で、過去につきあった編集者は皆リタイアしてしまっているので、コネのない新人みたいなものだし、小説が売れない時代なので、簡単に話が進むとは思っていない。まあ、道楽で書いているような作品なので、デッドストックとして保存しておくだけでもいいと思っている。で、次の作品に取りかかりたいというのが当面の課題だが、『明日香の恋唄』というタイトルがあるだけで、具体的な構想は何もない。『人麻呂しのびうた』のスピンオフのような作品になると思っている。同じ登場人物が出てくるのですぐに書けるというのがメリットだ。まったく違う作品のプランもいくつかあるので、少し時間をかけて資料にあたってもいいと思っている。

02/02/火
妻と深川ギャザリアに行く。昼食のあとセリアに行ってプラグの変換アダプターを買う。最近、電源をUSBに求める器械が増えてきた。いざという時のために常備しておく。100円ではない。最近は100円ショップにある100円でないものにいいものがある。SUPERBOWLまであと6日。ドキドキする。と思っていたらビッグニュース。ライオンズのスタッフォードとラムズのゴフの、まさかのQB交換のニュース。ゴフの方にドラフト指名権が3つもオマケでついている。ゴフはSUPERBOWLにも出場した(負けたけど)QBだが、ラムズはスタッフォードに魅力を感じたようだ。確かにQBは重要で、今シーズンの新人QBはどれもパッとしなかった。ラムズは守備の強いチームで、この守備陣がある間にSUPERBOWL制覇を目指すために働き盛りのスタッフォードを取ったのだろうが、オフェンスラインをしっかりしないとパス中心の攻撃は難しくなる。というどうでもいいことをここで書いても仕方がないのだが、気分はもうドラフトに向いている。今年のドラフトでは魅力的なQBが3人いるようで、ビリから3番までのチームはうずうずしているだろう。ただ3年前のドラ1ダーノルドのいるジェッツの動向が気にかかる。

02/03/水
マッサージ。去年の11月に傷めた右肩がまだ完治していない。もうほとんど痛みはないのだが、まっすぐに腕を上げようとすると抵抗があるし、何かの拍子にふっと痛みを感じることがあって、後遺症が残っている感じだ。マッサージは月に1度くらいの感じで行くので、肩を痛めてから3度目になる。最初の時は傷めた直後までまだ内出血が残っていたが、かなりの荒療治の感じで腕を上げ下げして、まあ打撲だろうということになったのだが、痛いので庇って動かさないようにしていると老人なので肩が固まる感じになってしまう。とにかく回復はしているので自分でもリハビリしながら完治に近づいていきたい。プリントのチェックは最終の4章に入っている。3章の終わりがなかなかいい。2章までの赤字入力は終わっていて、3章に入ったところで少し迷ったのだが、そこを過ぎるとプロットが次々に進んでいく。この作品で一番苦労したのは2章の源平合戦を描くところで、ヒロインは合戦に参加しないので、説明だけが長く続くことになる。これをプリントして何度も読み返し削れるところはすべて削った。ということで2章まではかなりチェックを重ねたので大丈夫だと思う。3章をプリントするのは初めてなのでタイプミスもあるが、登場人物の語調の不統一もある。北条義時は首尾一貫してタメ口で話す。ヒロインは古典的な言い回しでしゃべる。頼朝は「ですます調」でしゃべる。この時代に「ですます調」はないのだが、小説だから許されるだろう。ただ「ですます調」でしゃべらせると、『紫式部』の道長と同じ感じになってしまうのだが、同じタイプの人物像なので仕方がない。4章の最大の山場は実朝の暗殺で、その前にヒロインが上洛して卿二位と対面する小さな山があるが、ここは卿二位の方が一枚上手の感じになる。しかし最終的には戦さでヒロインが勝利を遂げるので、あとで挽回することになる。暗殺のあとの展開がどうなっているのか、もう何を書いたか忘れてしまった。これは老人ボケのせいではなく、長い作品を書いていると脳のキャパに限界があるので細部までは憶えていられない。頭の中に残っているのは大まかな手順だけで、細部は書いたそばから消えていく。だからプリントして読み返すと新鮮な驚きがある。このプリントのチェックは遅くとも今週中には終わるだろう。ただちに入力に取りかかって、晴れ晴れとした気持でSUPERBOWLを見たいと思っている。そのあとどうするのか。そういうことをまだ何も考えていない。柿本人麻呂を書いていた時、次は紫式部と考えていたし、紫式部の終わりのころには次は北条政子だと考えていた。ところがいまは次の作品について何も考えていない。小説のタネが尽きたのか。ずっと昔に、明智光秀が天海になったという伝説を聞いて、おもしろいと思ったことがある。いまちょうどテレビで明智光秀をやっているので、そのストーリーの中に天海を入れられないかと考えていたのだが、正親町帝の弟が天台座主だというところあたりで、この天台座主の側近に天海がいたら、というようなことは考えた。この天台座主は小朝という落語家が演じていて、とても悪い奴だった。玉三郎の弟にはとても見えないが、台詞でも兄が美しく自分は醜いと言っていたのでそういう設定なのだろう。この悪い天台座主は商売で儲けていて拠点は坂本だ。すると比叡山焼き討ちのあとで坂本を本拠とする明智光秀とも接点が出来るだろうと思う。実は思いついたのはそこまでで、とても小説にはならないと諦めていたのだが、自分は『空海』を書いた時、空海が遣唐船に乗り込むまでの経緯はすべてフィクションで書いたことを思いだした。四国の山奥で水銀を精錬している行者と出会い、初恋と恋人の死があり、奈良の都に上って大学に入り、それから突然山岳修行に打ち込んで陸奥に赴き、坂上田村麻呂や阿弖流為と出逢う、というようなところを全部フィクションで描いた。作品の半分くらいのところまではすべてフィクションだ。そこへ行くと『親鸞』はかなり確立された伝承が残っていて、玉日との恋の場面くらいしかフィクションを折り込めなかったし、玉日の存在は梅原猛さんの本で知ったので、自分のオリジナルではない。ドストエフスキーの書き換えとか、原典のある作業を続けてきたせいか、オリジナルのフィクションを構築する感覚が鈍っているのかもしれない。ということで、『天海』……やってみるかな、という気分になりかけているのだが、まずは徳川家康の勉強から始めないといけない。この時代は先行するフィクションも多く、研究も進んでいるので、かなり資料を読み込まないと嘘っぽいものになってしまうだろう。まあ、その方が小説としてはおもしろいので、嘘をつき続けてもいいのだが。

02/04/木
プリントのチェックを続けている。実朝暗殺についてはヒロインが殺害を指示し三浦義村が請け負うというプロットになっているのだが、わが子の死を命じたあと、実際に暗殺事件が起こるまでの間に、タイムラグが生じる。そこに何かが必要だと感じた。殺害を命じてすぐに実行されるということでは、バネがたわむような緊張感がない。こういう場合、何でもいいから時間稼ぎのカットを入れればいい。映画だとどうでもいい風景を挿入してもいいのだが、小説の場合はヒロインに何かをさせないといけない。資料を調べる大倉御所の中に寺があることがわかった。落慶法要に栄西が招かれている。ということは座禅のための寺だ。ここまで宗教については東大寺や熊野に出向いたシーンがあるばかりで、宗教の効用について深めてこなかった。宗教に踏み込むとキリがない。日蓮はまだいないが、同時代に親鸞は東国にいるはずだ。が、鎌倉幕府の中枢にいるヒロインは禅宗と親しんでいるはずで、堂の中で瞑想に耽るということでいいだろう。瞑想の内容は書くまでもない。

02/05/金
赤字チェック完了。ただちに入力に移る。2章の終わりまではすでに入力してある。3章と4章は初めての赤字チェックなのでタイプミスがかなりある。意味不明の文章の断片がまぎれこんでいたりする。しかし2章までをチェックした時は新たに挿入する部分がノート1冊くらいになったのだが、3章と4章はすでに流れが確立されているので大幅な直しはなかった。単純なタイプミスなどがあるだけだ。

02/06/土
入力完了。これでいちおうの完成だ。202ページになった。400字にすると600枚ほど。少し長すぎるのだが仕方がない。これ以上は削れない。北条政子というのはすごい人だ。この名前は本人が嫌っていたと思われるので作品では用いなかった。幼名はよくわからないのだが、長男が万寿と呼ばれていた時期があり、これを母の幼名とした。母親もまったくわからないので三島の白拍子ということにした。それ以外は吾妻鏡などの資料を折り込んで史実から大きく逸脱しないようにした。頼家、および実朝の死の前後で少しフィクションを入れた。それにしても史実としての事件が多すぎて、小説が負けそうになっている。難しいテーマに手こずったといっていい。次回作はもっと楽に書けるものにしたい。楽しみで書いているのだから苦労をする必要はない。

02/07/日
SUPERBOWLの前日になった。今回の対戦はAカンファは順調に去年の覇者のチーフスが勝ち上がった。順調にという感じではあるが、QBのマホームズが準決勝の第3クォーターで脳震盪で退場するなど危うい場面があった。チャド・ヘニーという控えQBの意外な奮闘があって接戦を制したのだが、ブラウンズは強かった。スティーラーズに圧勝して勝ち上がってきただけのことはあって、チーム力がシーズンよりもアップしていた。逆に決勝の相手のビルズはQBアレンが実力を発揮できなかった。チーフスの守備陣が調子を上げてきたという感じがした。それでもチーフスはランに弱いところがあり、バッカニアーズのランニングバックのフォーネットの個人技を抑えられるかが1つのポイントになる。QBマホームズは脳震盪の影響はないが足の指を傷めていてほとんど走れなかった。ただとっさに身をかわすとか、踏み込んでパスを投げるということに支障はないようだが、ロングパスは1つも投げなかった。ビルズ戦を見る限り本来のマホームズの姿ではなかった。カンファ決勝からSUPERBOWLまで2週間あるので足が回復していればいいのだが。対戦相手のバッカニアーズは何と言っても43歳のQBブレイディーの7勝目がかかっている。ホームスタジアムでもあるし応援はバッカニアーズに傾くだろう。昨シーズンまでの弱小チームにブレイディーが入っただけでこれほど変わるのかと誰もが驚いたはずだが、ディフェンスもオフェンスもこのQBならSUPERBOWLに行けるかもしれないというモチベーションを与えられると見違えるように変身する。ランニングバックのフォーネットもそうだし、ワイドレシーバーもボールへの執着心が加わった。マホームズの足の怪我とブレイディーの年齢。差し引きゼロでどちらが勝つかまったくわからない。ぼくはまだアレックス・スミスがいたころからのチーフスのファンなのでチーフスを応援したいのだが、ブレイディーが勝つならばそれも素晴らしいドラマだと思っている。ただフットボールというものは勝ち負けよりも、1つ1つの局面を楽しむゲームなので、名場面がいくつも展開されることを期待したい。チーフスで好きな選手はレシーバーのタイリーク・ヒルとランニングバックのカリーム・ハントだった。ハントがブラウンズに移籍したのでいまはブラウンズも応援している。来シーズンはブラウンズが優勝候補だと思っている。QBマホームズの足の怪我が治っていればチーフスの圧勝になるかもしれないが、チーフスはオフェンスラインが弱いので、マホームズの怪我が心配。シーズン中はやや力を抜いている感のあるチーフスのディフェンスがどのようにブレイディーを封じるかも注目。

02/08/月
SUPERBOWL。もはやリタイアした作家となっている自分は、年に一度のこの日のために生きているといってもいい。若手スーパースターのマホームズと43歳のブレイディーの対戦。マホームズの圧勝も予想された対戦だったが、ブレイディーの圧勝だった。マホームズの足の負傷が完治していなかったということもあるし、QBを守るオフェンスラインに怪我人が出たこともあるが、バッカニアーズのディフェンスのチームワークが完璧だった。去年は負け越しのチームにブレイディーが入っただけでこんなに変わってしまうのかという驚きがある。オフェンスにはグロンコウスキー、アントニオ・ブラウン、フォーネットと、スター選手が追加されていて、3人とも大活躍ではあったのだが、ディフェンスはほぼ去年のままなので、そのディフェンスがマホームズを完封するというのは、まさにミラクルだった。ブレイディーがいればSUPERBOWLに行けるかもしれないというモチベーションだけでなく、ブレイディーがディフェンスにいろいろとアドバイスを出していたようで、一人のスタープレーヤーがチーム全体を鼓舞して奇蹟を成し遂げたといっていい。ぼくはチーフスのファンではあるが、今日の奇蹟には胸を打たれた。ああ、これで今年も終わった。という感じではあるが、また次のシーズンが始まる。すでにライオンズとラムズのQB交換という大きな移籍が発表されたし、テキサンズのワトソンも移籍が決定的になっている。今年はパンデミックのために無観客の試合が多く、サラリーキャップの縮小が予想される。プレーオフまで行ったチームは高額のプレイヤーを放出せざるをえないだろう。ドラフトでは優秀なQBが3人ほど待機している。すごいワイドレシーバーもいるらしい。ドラフトは下位チームから選択できるので、来シーズンの各チームの戦力は大幅に変わるだろう。しかしQBの力量は変わらない。マホームズもブレイディーも新しいチームメイトとともに次回のSUPERBOWLを目指すだろう。ブレイディーは引退しないと思う。これはわからない。この勝利で選手生活に幕を下ろすということも充分に考えられるが、奇蹟を起こしたチームメートのために来年もプレーを続ける可能性が高い。明日からは、来年のSUPERBOWLを楽しみにして、老人となった自分の人生の励みとしたいと思う。

02/09/火
浜松の仕事場に移動。快晴。自宅にいる時から富士山は見えていて、首都高5号線を用賀の方に向かうと前方に富士山。東名で進んでいくとどんどん富士山が大きくなっていく。月に一度くらいは仕事場に行くのだが、このところ曇天の日が多く、久し振りに富士の眺めを堪能した。外気は8度くらいで、浜松に近づくと風が強くなってきた。仕事場は丘の上にあるので風が強い。何とか荷物を運び込んで、パソコンもつなぎ、ようやく仕事ができる状態にした。といっても『尼将軍』は完成しているので、パソコンを開いてもなすべきことは何もない。メールで公用関係のやりとり。SARTRASのワーキンググループというのが始まって週に1度会議がある。去年からZOOMなどのNET会議が盛んになって、会議のほとんどは浜松にいても参加できる。今回は居住している集合住宅のガレージの工事が始まって別の区画に移動せよとの指示があったので、めんどうなので工事が終わるまでは仕事場に退避した。それと庭のミカンを収穫しようと思っていたのだが、正月に来た時にネットを被せたにもかかわらず下の方は鳥に食べられていた。残念。もう少しの期間、樹についたままで熟成させたいので来週くらいに収穫したい。

02/10/水
浜松の仕事場で目覚める。今日も快晴。陽射しがあるので日当たりのいいところにいれば寒くはない。風も収まっている。都田テクノというところにあるカインズホームに行く。妻は何やらいろいろ買っていたが、こちらはウィスキーとビールを買っただけ。それとエキスパンダーというか、それの短いもの。握力の強化に日頃愛用しているものだが、予備としてもう1つ買った。これを仕事場に常備しておけば移動の時に運ぶ必要がない。こちらでは寒いので夕方に風呂に入る。夜は暇なので録画しておいたミステリーなどを見る。いまは「バーナビ―警部」にはまっている。イギリスの田舎の風景が楽しい。イギリスの田舎には怪しい人物が多い。設定としては60年代くらいだろうか。当時はまだホモとかレズに偏見のあった時代で、そのせいかどちらかが絡んでくるケースが多い。田舎なので余計に偏見が強いのだろう。現代でも偏見がまったくなくなったわけではない。しようがないので認めるというくらいのニュアンスだろう。日本だと美容師やスタイリストに特化していて、ごくふつうの田舎の暮らしの中にその種の人が現れるということは現代でも稀少なのではないかと思われる。仕事が何もない状態なので、とりあえず「徳川家康」という本を読んでいる。家康を視点となる主人公にして、天海を描く、ということにすればわりと楽で、天海の謎の前半生を書く必要はなくなるのだが、家康の方が先に死ぬので視点を変えないといけない。明智光秀をどんなふうに登場させるかも問題で、NHKの大河ドラマが始まるころに出たムックの類を2刷ほど資料として購入してあったのを手元においている。なぜこれを購入したのか記憶がない。単にテレビを見る時のおともに買ったわけではない。いずれ自分の仕事にも役立つと考えていたのだろう。実は亡くなったある担当編集者が、「いずれ天海を書いてほしい」と酒の席で語ったことがあって、記憶の片隅に残っていた。その編集者とは合計10冊くらい本を出したように思う。しかし天海は難しい。明智光秀が天海になった話にしてしまえばある意味で簡単なのだが、そういうわけにもいかないだろう。

02/11/木
のんびりした浜名湖の休日。妻は裏庭で柚子の収穫。こちらはひまなので、用意しておいた『尼将軍』の最終プリントを読み始めた。これで最後のチェックになるはずだ。何度も読み返した冒頭部分だがそれでも赤字が入る。「武者」と「武士」が混在しているので、「武士」に統一するとか、言葉遣いの問題が多い。それでも描写が数行入れるなどして補強していく。寒さにも慣れてきた。

02/12/金
本日は豊川稲荷の先の赤塚山公園というところに行った。梅園があってまだ蕾だが、ちらほらと咲いていた。河津桜もあってこれもちらほら。風がなく三月の陽気とのことで、公園もよかったが、田舎道をドライブするのも楽しかった。NETを見ているとSUPERBOWLで優勝したバッカニアーズが本拠のタンパベイで水上パレードをやった時の動画がアップされていた。何とQBのブレイディーがボールの形をしたロンバルディトロフィーを別の船に乗ったタイトエンドにパスした映像。酔った勢いとはいえ、よほど嬉しかったのだろう。負けたチーフスのマホームズは負傷した左足つま先の手術を受けた。半年くらいはリハビリが必要だが、来シーズンには間に合うだろう。

02/13/土
庭のミカンを収穫する。正月に網をかけておいたのだが、安物の弱い網だったので鳥が入り込んでいたようだ。無残なまでに荒らされていたけれども、去年は何もせずに放置していたら全滅だった。今年は半分くらいは収穫できたように思う。

02/14/日
11月に信州で方を傷めてこの浜松の仕事場に来た時はものすごく寒かった。それから正月に来た時ももちろん寒くて、今回も初めは寒かったのだが、昨日くらいから春の陽気ということで、寒いという感じがしなくなった。東京御茶ノ水にいる時は密閉された集合住宅なので寒いという感じはしない。リビングルームは日当たりが良すぎていつも暑いと感じている。そういうところからこの丘の上の築40年の木造住宅に来ると、高齢者にとっては寒さが応えることになる。が、突然、寒くなくなった。ありがたいことだ。いよいよのんびりとした気分になっている。それでもいちおう仕事はしていて、『尼将軍』のプリントを読み返している。けっこう直しが入っているのだが大幅な直しはない。第1章が終わった。これは頼朝の旗挙げのところまで。源平合戦はまだ始まっていない。この作品では源平合戦はほとんど描かれない。最初の草稿では合戦の話もあったのだが、ヒロインのいないところの話を書いても散漫になるのですべてカットした。自分の書いた原稿をガバッと削除するのはなかなかの快感だった。そんなふうに前半部分は何度も書き直しているのでもはや直すところはない。ただもう次の作品の構想に入っているので気持がこの作品から離れつつある。何とか最後まで読み切って入力も終え、今月中に完成としたい。

02/15/月
台風並みの低気圧が通過。夜中から風雨が強く、地下の寝室に下りる階段の窓で雨漏り。以前から時々漏っていたようで、豆腐のパックみたいなものを置いていたのだが、すぐに満杯になってしまう。築40年の木造家屋なのであちこちにガタが来ている。大工事で補修してもこちらの寿命が尽きそうなので、雨漏りくらいは豆腐のパックでしのいでおこうと考えている。午後には雨は止んだが風は収まらず。うるさくて集中力がそがれる。明日東京に帰りたいのだが、風が強いようだと妻の運転が心配。しかし明後日には寒波が来るとのことで、できれば明日移動したい。

02/16/火
昨日は一日中、風が強かった。一昨日の地震は揺れている時間が長かったが震源から遠く離れた遠州なので、ああ、地震だ、と思っただけだった。10年前の大地震の時は、南北線永田町駅の地上へ上がるエスカレーターの上にいて、エスカレーターの異音で異変を感じた。エスカレーターの故障、暴走と思いあわてて駆け上がって地上に出て初めて地震と気づいた。目の前の高速道路の街路灯が車のワイパーのように左右に揺れ動いていたが、建物の中ではないので揺れは感じなかった。この浜松の仕事場にいると地震よりも風の方が怖い。音がすごいだけでなく、一瞬、ふわっと浮かぶような感じがすることがある。とにかく音がうるさくて仕事にならない。で、本日は東京に移動。妻の運転なのでこちらは隣に座っているだけだが風が強いとそれなりに緊張する。三ヶ日インターに9時半に入って、御茶ノ水に着いたのは午後2時。渋滞はなかったが、妻の疲労を考慮して3回休んだ。帰ってきて荷物を降ろす。それだけで30分かかる。地下の駐車場のエントランスで荷物を降ろし、妻はガレージに車を入れる。こちらは20階のロビーまで上がってコンシェルジェのお姉さんに台車を借りる。この台車は通常のエレベーターに載せられないので、秘密の荷物用エレベーターで地下の駐車場に下りる。それから自宅のある階に上がり、荷物を降ろすとロビーまで台車を返しに行く。これで30分かかる。それから自分の荷物を解いて、必要なものを必要な位置に配置し、パソコンをNETにつなぎ、メールに対応しているうちに4時になる。本日はそこまで。プリントのチェックは2章までが終わっているが、夜になって気力があれば3章に入りたい。高速では掛川、沼津、海老名の順で車を駐めたのだが、掛川は寒かった。東進するにつれて気温が上がっていった。自宅は日当たりがいいのでむしろ暑い。高齢者なので寒さで全身が硬直していたのが、バターが融けるように体がほぐれていく感じがする。

02/17/水
御茶ノ水での日常が始まった。集合住宅での生活は動きが少ない。密閉された空間でわずかな移動をするだけだ。花粉の季節なので散歩も控え目にしたい。昨日の浜松からの移動で目に反応が出た。これは市販の薬で対応する。市販の薬は必要最小限度にとどめたい。本日は症状は出ていない。同じ敷地内のスーパーで買い物。帰ってくると空気清浄機が反応した。表示がオレンジ色になって花粉があることを示している。衣服についた花粉が飛び散ったのだろう。わずかな時間で表示ランプは消えた。この空気清浄機は今年買ったもので、花粉検知のランプがあるので役に立っていることがわかる。仕事場から戻ってみると代島監督からの郵便物が届いていた。映画の出演者のコメント集を出版したいとのことで、原稿に赤字チェックが必要だ。まだ締切までに時間があるので『尼将軍』のチェックを先に済ませてしまいたい。SARTRASのWGの会議。これで1日が終わる。今週から来週の月曜日まで、ほぼ毎日会議だ。NET会議が多いのだが、土曜日は武蔵野大学に行かねばならぬ。花粉が心配。

02/18/木
SARTRASの総会及び理事会。散歩。今日は寒くて花粉は少なそうだ。『尼将軍』のプリントチェック。ヒロインが頼家を殺すシーンは何度読み返しても感動する。頼家は気の毒だと思う。

02/19/金
本日は公用なし。今週は水曜日から来週の月曜日まで、週末の土日も含めて何やかやと公用がある。NETの会議でも時間が決められているのでこちらの自由が束縛される。何もない日はさすがにほっとする。花粉が待ってそうなので散歩も控え目にしたいと思っている。さて本日は代島監督から頼まれた仕事を片づけて郵送の準備をして散歩に出かけた。ポストまで行くことが目的の散歩だ。一番近いポストは御茶ノ水駅前の手前のソラシティー前のポストだが、本日は秋葉原の方に行きたかったので神田郵便局前のポストに投函する。

02/20/土
かつて勤めていた武蔵野大学でオンライン講座。LINEを使っているので自宅でもできそうだが、設定が面倒なので学校に行ってやることにした。司会の先生や出版社の編集者も加わって、講義のあと質疑応答もあって楽しかった。たまにはこういう講座も必要で、こちらの脳の活性化にもなった。実に久し振りに武蔵境の駅で降りた。ここにほぼ毎日通っていたのかと思うと、大変だったなとも思うが、御茶ノ水に引っ越したのも通勤のことを考えてからで、御茶ノ水から電車に乗って老人席に座れば武蔵境に到着する。駅前からのバスも慣れているので問題はない。この1年、学生たちはすべてオンライン授業だったそうで、それは気の毒だなと思う。武蔵野大学のキャンパスは樹木も残っていていいところだ。とくに文学部の学生はクラブ活動も盛んで、キャンパスでの日々を楽しんでいたはずで、大学に行けないのは残念だったと思う。

02/21/日
日曜日だが、編集者と打ち合わせのNET会議。本日の仕事はこれだけ。NETの会議だと用が終わればすぐに解散ということになる。リアルな会議だとその後もしばらく雑談とか、軽く一杯とか、そんな段取りになるのだろうが、その意味では味気ないけれども合理的で、仕事というものはこういう感じで進むべきものだという気がする。急に暑くなったがこれがピークでまた寒くなるらしい。こちらは昨日の外出が久し振りの遠出で、ふだんは忙しいようだが全部NET会議で、自宅のパソコンの前の席から動かない。会議があると散歩の時間が限られるので運動量が減ってしまう。けっこう忙しくなっていて、プリントチェックのスピードが遅くなっている。今月中に入力まで済ませるというのが難しくなってきた。2月は28日しかないのだ。

02/22/月
12時と3時にNET会議。NETの会議だから2つあっても移動の手間はないのだが、iPadのバッテリーが心配になる。妻のお下がりのiPadなので電池のパワーが落ちているのではないか。プリントのチェックは最終の4章に入った。この冒頭に公暁を登場させる。草稿では実朝暗殺の直前に公暁の生い立ちなどを説明で入れたのだがそれでは唐突にすぎる。4章の冒頭に入れれば実朝暗殺への導入部になるだろう。公暁という名をいまの若い人が知っているかは疑問。八幡宮の階段下にある銀杏の陰に公暁が潜んでいる絵が小学校の教科書に出ていた。

02/23/火
本日は休日らしい。前の天皇の誕生日は年末の慌ただしい時期だった。こちらはリタイアした身なので休日はどうでもいいのだが、メールがパタッと来なくなるので今日は休日かと実感する。迷惑メールも休日は休みらしい。

02/24/水
近所の医者に行く。花粉が舞ってそうなので本日の外出はそれだけ。プリントのチェック完了。ただちに赤字の入力作業にとりかかる。

02/25/木
眼科検診。半年に1度くらい緑内障や黄斑変性のチェックで眼科に行くのだが、1年くらい間があいてしまった。徒歩5分の須田町にあった眼科医院がコロナのためか閉鎖されてしまって、担当医が飯田橋のクリニックに移動したという案内は受け取っていたのだが、めんどうなのでそのまま放っておいた。1年たつとやや心配になってきたので案内を捜しだして電話をして予約をとった。飯田橋といっても水道橋寄りなのでいつもの散歩のコースのすぐ先なので歩いて行った。前の医院は小さなビルの1フロアに眼科だけが入っていたのだが、ここは巨大なビルの2階にさまざまなクリニックが並んでいる総合病院のような造りになっていた。眼科はやたらと混んでいたが予約をしてあるので必要な検査を終え、須田町のクリニックの院長がそのままこのクリニックに横すべりしていて、全然大丈夫と診断してくれた。ついでに花粉の季節なので眼がかゆいと訴えるとステロイド入りの目薬を処方してくれた。散歩のコースなのでいい場所にある。次は花粉の季節にくればよいと言ってもらえた。ただ花粉の季節は混んでいそうだ。ぼくは自分の体の心配はまったくしないのだが眼だけは心配している。今回も無事でよかった。夕方はSARTRASのワーキンググループ。この会議はけっこう発言しないといけない。疲れた。赤字入力は2章までが終わった。今月末完了をいちおうの目標としているが達成されそうだ。

02/26/金
久し振りに小石川後楽園まで散歩。後楽園そのものは閉鎖されている。遊園地の方から周囲をぐるっと回って場外馬券売場の入った黄色いビルの方に戻ってくる。昨日行った眼科クリニックの入った高層ビルが目の前にある。そのあたりもほぼ散歩のコースだ。赤字入力は4章に入り、もうゴール直前。明日には完了するだろう。実に長くかかった仕事だがようやく終わりに到達する。デッドストックが1つ増えるだけのことだが、次の作品に挑むことができるので気分は晴れやかだ。とはいえ、すぐに何かを始めるというわけではないで、明日やるべき作業がないという、不安な状態になることも確かだ。とにかく明日はまだやるべき作業がある。

02/27/土
穏やかな晴れの日が続いているが、散歩のために集合住宅の外に出ると、冷たいビル風が吹きつけてくる。厚着をすべきだったかと後悔するのだが陽射しの中を歩いていると暑くなってくる。そういうことが毎日続いている。本日は湯島天神へ。梅が満開かと思ったのだが、まだ蕾のものが多く、散ってしまったのかと思う樹木もあって、期待した満開感が得られなかった。マツサカヤまで回って崎陽軒の松花堂弁当を買って帰る。混雑したデパートの中を歩き回るのは危険なので、真っ直ぐに崎陽軒に向かった。赤字入力が完了し、これですべての作業が終わった。このノートが「7」なので、7ヵ月かかったことになる。以前に『頼朝』を書いたことがあるので、すらすらと書けるかと思ったが、前半を圧縮するのに時間がかかった。源平合戦みたいなものを書き始めるとキリがないし、ヒロインが登場しないページが続くのもよくないので大幅にカットしたのだが、この作品では小四郎義時も重要人物なので、西国に攻めていく部分は少しだけ残すことにした。頼朝が死んでからの3章、4章は、ほとんど直すところがなかった。公暁の登場シーンを少し増やしただけだ。『人麻呂』は忍者、『紫式部』は陰陽師という設定にしたので、スペクタクルなシーンが次々と展開されたのだが、今回の北条政子はリアリズムで書いたので山場が少なかった。それでも頼家を殺すところと、公暁を殺すところは、それなりに動きをつけて盛り上げることにした。これは一種の政治ドラマなので、テーマとしてはやや難しかったかなといまは感じている。とにかく完成したのでこれで終わりだ。

02/28/日
2月も今日で終わり。日曜日だが精神科医池田健さんとの対談の企画があって、日曜ごとにLINEで対談することになった。相手が精神科医なので診療を受けているような感じだが、とにかく質問には答えた。だんだん深い領域に掘り下げていけばいいと思っている。『尼将軍』の作業は昨日すべて終わったので、明日からは仕事がない。資料を読む作業はすでに始めているのだが、しばらくプリントチェックや赤字入力の作業を続けていたので、そういう手作業がないと寂しい感じがする。とりあえずオープニングの部分だけでもパソコンに向かって文字を入力した方がいいのかもしれない。とにかくこのノートはここで終わる。次の作品の構想は新たなノートに記すことにする。


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