■優紀編■
5日目【7月25日】


 
 
Marine Blue Serenade
5日目

【 朝 / 昼 /  /  】


◆7月25日<朝>◆
『優紀さんとの海』


 

 天乃白浜ビジターセンターから水着に着替えて出てきた優紀さん。俺はその姿に思わず息をのむ。
 黒っぽいトロッピカルプリントのビキニに少し長めのパレオ。それは優紀さんの雰囲気に見事にはまっていた。

「やだ、あんまりジロジロ見ないでよ」

 思わず見とれていた俺に、優紀さんは少し顔を赤らめながら、それでも嬉しそうに言う。俺のほうもなんだか恥ずかしくなって目をそらす。

 俺達は昨日の約束通り海にやってきた。天気は相変わらず見事な快晴。気温は太陽が昇るにつれてぐんぐん上昇。今日も海水浴には絶好の日かもしれない。
 突然、姉貴の家の玄関まで迎えに来た優紀さんに俺も、そして姉貴も驚いた。

「弟さん借りていくわよ。博子」

 一緒に玄関まで出迎えた姉貴にそう言うと、俺の腕に自分の腕をからめて連れ出す優紀さん。
 何か言いたげに俺を見送る姉貴。
 それはそうだろう。姉貴は俺と優紀さんの関係なんて全然知らなかっただろうから。

「でも、まさか堂々と玄関まで迎えにくるとは思わなかったですよ」

 水着姿の優紀さんと並んで砂浜を歩きながら話す。

「いいじゃない別に。やましいことなんてないんだから」
「そりゃぁ、そうですけど…」
「なに?まこと君。もしかしてやましい事を期待していたとか?」
「な、なにを言うんです!俺はですね…」

 焦る俺を見て楽しそうに笑う優紀さん。くそぅ。またからかわれてしまった。

 俺達はビジターセンターから少し離れた所を陣取った。荷物を置いてパラソルを立て、シートを広げの四隅をプラスチック製の杭で砂地に固定する。
 優紀さんはパラソルの下に折り畳み式のチェアを置いて座った。

「あれ、肌焼かないのですか?」
「ええ。ほら、日焼けってなにかと後が大変じゃない? それにあんまり肌を痛めたくないから……。一応日焼け止めは塗ってきたんだけどね」

 真っ黒に日焼けした優紀さんも格好いいんじゃないかって思うんだけど……まあいいや。俺はせっかくだから肌を焼こう。

「それにしても、優紀さん。その水着、凄く似合ってますよ」
「え? …ありがと。君の期待に応えられたかな?」

「同年代の娘と比べると、センスもいいし、色っぽいし、水着姿が見れただけで優紀さんと海に来てよかったなぁって思いましたよ」
「ほんと、君って口が上手ね。他の女の子たちにも同じような事言ってるんでしょ?」
「そんな〜。女性と二人きりで海に来たのなんて今日が初めてですよ」
「ふ〜ん。そうなんだ。実は私もそうなの」
「え?」
「この水着も去年、康太郎と海に行くつもりで買ったんだけど、着る機会がなくなっちゃって…」
「……」

 少し寂しげに言う優紀さんに俺は複雑な気持ちになる。

「あ、ごめんなさい。この話はタブーだったわね」
「いえ、いいんです。よかったじゃないですか。着る機会が出来て。こんな事くらいならいつでも協力しますよ」
「まこと君…」

「せっかくこんなに綺麗なのに、着ないままにしてたなんて、もったいなさすぎますよ。康太郎義兄さんも馬鹿だな。こんな綺麗な女性を放っておくなんて」
「やだなぁ、君、言い過ぎよ」

 けっこう本気に照れてる様子の優紀さん。
 俺達はしばらく海の景色を楽しみながらしばらく話し込んだ。