■美鈴編■
7日目【7月27日】


 
 

◆ハッピーエンドエピローグ◆
『3ヶ月後』


 

「なにボーとしてるの? 次の授業は教室移動でしょ? 早く行くわよ!」
「あたた! 引っ張るなよ美鈴」

 新学期が始まって、美鈴と俺の関係は学校中の話題となった。美鈴自身も今までとは別人のように素直な娘になり、近頃ではずいぶんクラスメイトとも馴染んできたようだ。夏休み、彼女の身に何が起こったのか?それを知ってる者は彼女と俺だけだ。

「まこと。勉強のほうは進んでる?」
「う〜ん。ぼちぼちかな?」

 廊下を肩を並べて歩きながら二人で話す。朝の日差しが窓から差し込み、廊下を澄んだ空気が満たしている。俺はこんな状況が不思議と自然な感じがする。俺も昔から美鈴とこうやって一緒にいるのを望んでいたのかもしれない。

「真面目にやりなさいよ。私と一緒の大学、受けるのでしょ?」
「はぁ、俺が外の大学を受けることになるなんて…」
「なによ! 私は別に強制してないわ」

 不純な動機かもしれないが、俺は彼女と同じ、他の大学を受けることにした。彼女と一緒にいたいというところが大きいが、俺自身、ただ目的もなく大学に進学する事に抵抗を感じていたのは確かだ。これを機会に俺は決心したのだった。
 それに、美鈴の父親や大野宮のような連中と対抗するためには、それなりの肩書きが必要だ。自分を美鈴の彼氏…ゆくゆくは婚約者として認めさせる為にも必要な努力だと思っている。

「いや、なんだかさ、美鈴との海での出会いで人生が変わったような気がして」
「なによそれ。どういう意味? 私だってまことと出会って人生、変わったわ」
「その事…後悔してる?」
「…馬鹿。してるわけないじゃない」

 少し顔を赤らめて、頬を膨らませて言う美鈴。

「俺だって、悪い方に変わったとは思ってないぜ」
「うん」

 俺と美鈴はまだ相変わらず喧嘩もするけど、それが逆にお互いの気持ちを素直に表せて、良い結果となってる。どんなに喧嘩をしてもお互いの心の絆が途切れることはない。
 俺が美鈴の心をわかってあげれるし美鈴も俺の気持ちをよく理解してくれていた。たとえ、これからどんなに苦しいことがあろうとも二人なら大丈夫だろう。

 あの夏の日、二人が出会えなかったら、俺たちは何処で何をしていただろう。
 俺は美鈴の気持ちも知らないまま別れていただろうか?美鈴も辛い思い出だけ持って日本を離れていたのだろうか?

 わがままで意地っ張りだった美鈴。その彼女の心の底の寂しさを本当にわかってあげられたのはあの夏の日だった。そして美鈴が俺に心を開いたのも…。

 俺は今、あの青い青い海の色を思い出す度、夏の日の思い出が次々と心に浮かびあがる。
 いま、心にあの夏の日々が奏でられる。いつまでも忘れる事のないあの夏の物語。
 そして、これからも多くの物語が奏でられてゆく事だろう。

 二人だけの様々な物語が…。