■美鈴編■
6日目【7月26日】


 
 
Marine Blue Serenade
6日目

【 朝 /  /  /  】


◆7月26日<朝>◆
『ディナークルーズへの招待』


 今日が、この街で行動できる最後の日だ。
 昨日の怪我が少し痛むが、思ったほど酷くない。
 姉貴達のおかげもあって精神的にも落ち着いた。

 さすがに海に行こうとは思わないが、お土産など見て回れる程の気力はある。
 俺は朝食を済ませると、ここに来ていつもそうしていたように、すぐに玄関を出た。
 さて、今日はどこに行こうか?

「お、おはよう…まこと」
「あ…、美鈴…」

 声をかけられ、見ると美鈴が小走りにこちらに近づいてきた。俺が出てくるのを待っていたのだろう。
 さすがに声に元気がない。昨日の事を考えると仕方ないだろう。
 きっと、今回の件だって、誰も彼女の事を本気で慰めてはくれなかったに違いない。今日は出来る限り優しくしてあげようと思った。

「昨日は…ごめんなさい。あ、あの…傷、痛くない? 平気?」

 上目使いに俺の顔を見る美鈴。

「気にするなって。美鈴のほうこそ、あの後、大丈夫だったか?」
「…うん。なんとか…ね。あの、…あのね、あたし…」

 言いづらそうに口ごもる。

「?」
「あの、…これ」

 美鈴はおずおずと封筒をポケットから取り出すと俺に渡した。
 なんだろう? また金?

「わ、あたしの最後のわがまま…夜7時、船着き場で待ってるから…」
「最後のって…美鈴、それはどういう…」

 美鈴は俺が疑問の言葉を言い切る前に、無言のまま背を向けると走り去っていった。
 怪訝に思いながらも、俺は渡された封筒を開けてる。

 中にはディナークルーズの乗船券。
 なんだ。夕食のお誘いかぁ。変なモノでも入っていたらどうしようかと思ったよ。

 まぁ、今夜くらいは美鈴につき合ってあげてもいいかな?
 最後のわがままって言葉も気になるし…。