■真澄編■
1日目【7月21日】


 
 
 う〜ん。
 ここは、思い切って確かめてみるか。

「……まったく…ブツブツ…自分だけ彼氏連れてきて…あたしだって…ブツブツ」

 その娘はパラソルやクーラーボックス、それにボディボード一式(しかも3人分)などを運ぼうとしていた。
 さすがに一回では無理だろう。だが、彼女は手に持てるだけ持っていくつもりみたいだ。

 ありゃりゃ。あれだけの荷物。女の子一人では可哀想だよ。

「あ〜ん、やっぱり重いよ〜。もう嫌ぁぁ!」
「よう、男手はいるかい?」

 おお! われながら絶妙なタイミング!

「え? …あなたはさっきの…結構です。一人で持って行けます!」

 不審そうに俺を見ると、そう言ってスタスタ歩いて行った。
 ありゃぁ、いきなり警戒されてしまった。
 それにしても、足元ふらついてるじゃないか。
 俺は半ば強引に彼女の抱え直そうとしているクーラーボックスを手に取った。

「あ! …ナ、ナンパならお断りですよ! 私、今、気が立っているんですから!」
「あのさ…河合…真澄ちゃん」
「え? …何で私の名前を?」

 彼女は自分の名前を突然呼ばれたので、驚いた顔で俺の顔を見た。
 どうやら当たったみたいだな。

「やっぱり。城野中学校だったでしょ?」
「ええっと…ちょっと待って下さい」

 彼女はごぞごぞとバックの中を探ると眼鏡をかけて俺の方を見た。眼鏡って事はやっぱり俺の知ってる真澄ちゃんだ。

「ああ! もしかして…宇佐美先輩!?」
「そ。宇佐美先輩」
「うわぁ! お久しぶりです! こんな所で会えるなんて、あたし、感激です」
「ははは! 俺もだよ」
「中学の卒業式以来ですよね、先輩」

 さっきとは一変してこぼれんばかりの笑顔をみせる真澄ちゃん。

 うわぁ…めちゃめちゃ可愛いじゃないか。
 俺は思わず照れてしまって顔を逸らした。

「それじゃぁ、あたし、さっき先輩にぶつかっちゃったのですよね。ごめんなさい」

 慌てて頭を下げる真澄ちゃん。

「気にすることないよ。そのおかげで真澄ちゃんと、こうして会えたんだしね。とにかく、先にこれを片付けてしまわないか?」

 俺はクーラーボックスを軽く叩いて言う。

「でも…先輩にそんなことさせられません。あたし一人で大丈夫ですから」
「いいって、いいって。こういう事は男にまかせておけばいいんだ。ほら、行こうぜ」

 手にしていたクーラーボックスを肩にからうと俺は歩き出す。少し遅れて真澄ちゃんが続いた。

「あ…ありがとうございます。宇佐見先輩…昔と全然変わってませんね」
「それって成長してないって意味かな?」
「いいえ!決して悪い意味じゃないですよ。本当に。…なんだか安心しちゃっいました」
「え?」
「な、なんでもないです。はい」

 それにしても、真澄ちゃん、変わったなぁ。
 昔は地味で大人しく、いつもおどおどしていたのに、垢抜けたって言うか、なんていうか…この娘ってこんなに可愛かったっけか?って思う位に。う〜ん。