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第15回  Mac OS X環境で「Google Docs(Writely)」〜アプリケーションの背景や概要等〜

2006年10月より「Google Docs & Spreadsheets」におけるサービスの一つとしてリニューアルされたオンラインワードプロセッサ「Google Docs」(旧Writely)は、今後のアプリケーションの在り方に一考を促しているWebアプリケーションを代表する存在の一つといえるでしょう。今回はGoogle Docs関連コラムの第1回として、同アプリケーションの背景や機能の概要等を中心に紹介してみたいと思います。


●オンラインワードプロセッサ「Google Docs」とは?

今回から数回に渡って紹介予定とさせて頂いているオンラインワードプロセッサ「Google Docs」は、シンプルなWSIWYGエディタを利用したドキュメント作成支援を主要な機能として提供されており、未公開企業「Upstartle, LLC.(Silicon Valley)」によって2005年8月29日(米国時間)より「Writely」との名称にてBeta版の提供を開始。Webブラウザベースにてワードプロセッサの機能を提供するWebアプリケーションとの位置付にて継続開発されており、ブラウザ上での動作を前提としているためローカルディスクへのソフトウエアインストール等、一般のデスクトップアプリケーションにて必要不可欠とされていたプロセスの幾つかを省略する事に成功しています(ユーザは対応システムにおける対応Webブラウザとインターネット接続環境があれば何時、何処からでも利用可能)。

また、昨年には「The Best Web 2.0 Software of 2005」における「Web-Based Word Processing」カテゴリにおいて「Best Offering」を獲得した後、2006年3月9日(米国時間)には、Writelyの名を一躍世に知らしめる事となったGoogleによる買収が発表。その後、暫くの間「Googlのソフトウエアアーキテクチャへの移行期間における新規登録の中断」との方針の下、その存在や開発状況が公に報じられる機会が少なくなっていましたが、米国時間8月17日、突如として希望者全員を対象とした新規利用受付が再開され、現時点では100万人以上の利用者にも対応可能なシステム基盤の構築が実現されているようです。

その後、同年9月下旬には予てからアナウンスされていたGoogle Accountサービスとの統合を果たし、従来までポータルとして利用されていた「writely.com」へのアクセス時には、Googleドメインサイトへと誘導される事に。翌10月には、同じくGoogleより提供されていた「Google Spreadsheets」とのプロダクト統合を果たし、この時点よりGoogle Docs & Spreadsheetsとの名称の下、インターフェイスも刷新し(Google Spreadsheetsに合わせる形にて統一)、オフィススイートの一部として新たな第一歩を記す事となります。
Writely時代のインターフェイス(Camino 1.0.3)
↑Writely時代のインターフェイス(Camino 1.0.3)(クリックで拡大します)

Google Docsのインターフェイス(Camino 1.0.3)
↑Google Docsのインターフェイス(Camino 1.0.3)(クリックで拡大します)

尚、非公式な形にて開発サイドから示されている方向性としては、

等が挙げられており、比較対象とされる機会の多い「Microsoft Office」を筆頭とする各種デスクトップオフィススイートと競合する位置付けではなく、あくまでもそれらを補完するためのツールであるといった認識も示されているようです。


●機能面における概要紹介

続いてGoogle Docsが有する機能面における全般的な概要等を紹介する事とします。

まず、現時点におけるGoogle Docsは、前述通りGoogle Accountにおける無料サービスの一つとして提供されており、主な仕様として以下のようなスペック等が挙げられています。

※2006年10月現在。尚、現時点ではBeta版としてのサービス提供となっているため、正式サービス開始時において変更される可能性もあります

そしてアプリケーション自体は「Google Maps」「Google Spreadsheets」「Google Suggest」「Ajax を使った郵便番号検索」等でも馴染み深い「Ajax」(注1)をベースとして構築されており、「Microsoft Word」を始めとする各種主要フォーマットにて構成されるドキュメントをWeb上の専用スペースに格納する事により、様々なシチュエーションにおけるアクセスや編集作業等を実現。Tagを中心とした横断的なドキュメント管理手法はWebアプリケーションならではの利便性を齎すに至り、同アプリケーションの醍醐味の一つして挙げられる「Collaborate」では、任意のドキュメントに対して特定権限を付与した複数ユーザ(最大50人)によるリアルタイムでの共同編集もサポートしています。そしてこの際には、作成中のドキュメントにCollaborators(協力者)のメールアドレスを指定する事による、文書へのLinkが埋め込まれた状態での招待メール送信をサポート。Collaboratorsに対して「Edit(編集)」「Collaborate(共有)」「Publish(公開)」「Post to Blog(ブログ投稿)」等の諸権限を付与する事により、特定ユーザのみを対象としたドキュメント共有等を可能としています。尚、Collaboratorsが有する権限の一つとして挙げられているPublishでは、GoogleサーバにおけるRead Only Documentの公開をサポートし(任意のドキュメントに対する閲覧専用アクセス権の提供)、この際の権限をフリーアクセス(Openly)、或いは任意のユーザ(by viewer)、グループに限定する等、パーミッションに関するより詳細な制御も可能としています(現時点で、SSLサポートやサーバ上におけるドキュメントの暗号化等は実現されていないようです)。

このようにGoogle Docsは、Writely時代のプロジェクト開始時における意向そのものに「既存デスクトップワードプロセッサのWebベースにおける再構築」といった主旨ものではなく「ドキュメント版Flickr」等といったニュアンスのコンセプトが反映され、メモやファイル等を共有するP2Pのデスクトップアプリケーション「NoteKeeper」のWeb化に端を発しているとされている事等からも、前述のグループウェア的なCollaborate機能に関する高い注力度が伺い知れ、Beta版である現状においても充実した完成度を誇るに至っています。

その他、主要な機能は文書編集に留まらず、ドキュメントを「HTML(*.html)」「PDF(*.pdf)」「RTF(*.rtf)」「Word(*.doc)」「OpenOffice.org(*.odt)」等の汎用的なファイル形式にもエクスポート可能とし、ローカルディスク等を対象としたダウンロードにも対応(HTMLはzip形式によるアーカイブにてダウンロード)。逆にローカルディスク上に管理されている各種ドキュメント(「StarOffice(*.sxw)」含む)等のインポートも可能とした他(インポート時に自動的にHTML形式に変換。尚、2006年10月現在、日本語テキストファイルインポート時に「UTF-8」は正常にインポート可能ですが、「Shift-JIS」及び「EUC」は文字化けしてしまいます)、2005年11月にはOpenDocument Format(ODF)(注2)にも正式対応し、シームレスなインターフェイスにおけるWebサイトへの公開や、標準的なブログ投稿プロトコル(XML-RPC)対応によるBlogエントリ等もサポートするに至っています(「Blogger」「metaWeblog」「MovableType」等のAPIをサポート)。

全般的なインターフェイスは、Ajaxのメリットを有効活用させた結果、デスクトップアプリケーションに匹敵する操作性を実現し、文字サイズやフォント(欧文フォントセット18種のみ。和文書体はブラウザにおける環境設定に依存)、或いは文字色、太字、アンダーライン、ハイライトカラー等といった装飾関連機能も一通り装備。インデントやリストといった書式に関する諸機能や、検索/置換、複数回のアンドゥ/リドゥ、ハイパーリンクや自動保存、テーブル(表組)作成や画像挿入等といった既存のワードプロセッサにて必須とされている各種機能等を網羅しており、メニューに示されているショートカットキーは「Ctrl」表記を「control」で代用する事により、Mac OS X環境でもそのまま利用可能となっています(Ctrl→control)。

また、コンテキストメニュー(右クリックメニュー)は、ブラウザ依存ではなくGoogle Docsオリジナルのメニューが機能する事となりますが、これによってデスクトップアプリケーションとの差異は一段と縮小。修正箇所を視覚的に認識可能なロールバック機能「Revisions」は圧巻の一言で、 Collaborate時における必須機能としてデスクトップアプリケーション、または類似の競合サービスに対する明確なアドバンテージを提示していくのではないかと思われます。
コンテキストメニュー(右クリックメニュー)は、ブラウザ依存ではなくGoogle Docsオリジナルのメニューが機能。メニューに示されているショートカットキーは、Mac OS X環境では「Ctrl」→「control」にて代用可能
↑コンテキストメニュー(右クリックメニュー)は、ブラウザ依存ではなくGoogle Docsオリジナルのメニューが機能。メニューに示されているショートカットキーは、Mac OS X環境では「Ctrl」→「control」にて代用可能

このように、ユーザサイドの視点からはWebブラウザをプラットフォームとしたアプリケーションの一つといった認識が可能となり、将来的には「Google Spreadsheets」を始めとしたGoogle提供各種サービス等との密接な連携が多いに期待されるところ。正式版における予定が伝えられる一部のプレミアムサポートや教育機関を対象としたサポート体勢は、8月下旬よりBeta公開されている「Google Apps for Your Domain」との連携が見据えられているのかもしれません。

次回は、Mac OS X環境における主要ブラウザとの互換性等を検証していきたいと思います。


●本文訳注

(注1)Ajax

「Asynchronous JavaScript + XML」の略称。従来のWeb環境の弱点とされていたクライアントとサーバ間における相互通知を、JavaScriptの非同期通信によって解決する事により、Web環境等でデスクトップアプリケーションに近いインターフェイスを実現できるといった特徴を有している。

(注2)OpenDocument Format(ODF)

XMLをベースとした各種オフィススイート共通のオープンなファイルフォーマット。「OpenOffice.org」にて使用されているファイル形式を拡張した後、「OASIS(Organization for the Advancement of Structured Information Standards)」「ISO(International Organization for Standardization)」「IEC(International Electrotechnical Commission)」によって標準規格に認定。欧米の公的機関等を中心として、組織内における標準フォーマットに指定する動きも出てきている。


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Created Date : 06/10/15
Modified Date :