【2004年3月】

3月31日(水)  街はウタダにあふれていた
故あって、都内のHMVとTUTAYAを数店回る羽目になった。春爛漫、夜風も気持ちよい感じ。こういう季節に流れる曲はずっと心に残ることが多い(と思う。)
マイナーなのだが、松田聖子のロックンルージュが聞きたくなったりする。人生のサウンドトラックが生まれやすい、のか。
それはさて置き、ウタダさんのベストアルバムとマトリックスのDVDを特売が歳末大売出しと同然の状態で行われていた。1階の入り口付近に長テーブルにCDとテレビをならべ、ビデオを流しながら店のスタッフがマイクをもって「本日発売です」とやっていた。あれがどれくらいの効果になるのか興味があるが、見ていた範囲だとそれほどのことはなかったようだった。予約して買うだろうし、ネットでも買うだろうし、売り切れることもないのであわてないだろうし、なによりベストなのですでに持っている人はあわてない、のではないでしょうか。
そういう意味ではラルクのほうがインパクトあるのではないっすかね、プッシュはなかったみたいですが。むしろ黙っていても売れるからか。ウタダは力んででも売る必要があるからなのか。

ウタダさんってあまりまじめに聞いたことがなくて、今日、何気にというかいやでも耳にはいってきたので、改めて聞いてしまったので感想なのだが、デビューのころのほうがうまい。いやうまさなら変わらないのだが、伝わってくるものの純度が高くてそういう意味ですでに芳醇だった。歯ごたえが違う、みたいな感じか。

3月24日(水)  すげ
とりだめていた「砂の器」を一念発起してみた。
ちょっとなめていたな、と思うほど良いできであった。
映画以上に良いシーンもある。やっぱり泣けた。
過剰な演出、強引な設定はこの際、大目に見よう。原田良雄に免じて許す。
赤井英和がよかったね、素朴さが内面からにじみ出ていた。
中居君は結局可もなく不可もなく、芝居としてはああなるんでしょうね。加藤剛と比べるとかわいそうだが、加藤剛は生まれもってなにか暗い部分を持ち合わせている役者なんだよね、秀夫そのものの過去をもっていそうな男で。中居君はちょっとバラエティすぎちゃって、テレビの世界はすべて作り物でいいのだけど、本当の作り物で最後のシーンとかもうちょっとやりようもあったような気がする。あれの場面ってきっとスマスマとかでパロッちゃうような気がして、全然感情移入できなかった。
だから私泣いたのは、あの少年秀夫と千代吉のところだけ。後は全然泣けなかった。
ただ泣いたのは事実。
ライ病の人を30人の大量殺人放火犯に置き換えたところは、ライ病って恐ろしい病気だってことなんだろう。病気自体よりもその差別の激しさということで同等なのだ。原作と映画から設定を変えたものの、ドラマのもつ質量がいずれにも負けていないのは今回さらに村社会=現代日本=はびこるいじめの構造は同一線上にあり、綿々と時代のなかで繰り返していることを描いたことだろう。村八分が結果として千代吉を犯行に及ばせた。これは千代吉一人の罪なのか。そして親のことが子供および、そのことでいじめられた子供がさらに罪を重ねる、このスパイラル。恐ろしい社会に住んでいる。
秀夫は少年時に誰にも癒すことのできない傷を負ってしまった。誰にだってそういうものは少しくらいはあるはずだが、彼の傷は本当のことを一切隠してしまうほどのものであった。到底彼には及ばないが、彼が傷ついてゆく過程を見て私の傷もうずいた。いやもしかすると本能的に知っている人間であることの恐ろしさ、悲しみ、苦しみがを超えることの困難さに泣いたのかもしれない。三木巡査をなぜ殺したか、秀夫は人間が恐ろしくて恐ろしくて。人が恐ろしくなる自分のある部分をきれいさっぱり隠すことでようやく社会に生きてこれた。ようやく人間と接していられたのに。

父と子の和解、三木巡査の願いがかなったことに私は感動した。筋違いかもしれないが。この世に本当に三木さんみたい人がたくさんいたら、きっともっと良い世の中になるに違いない。千代吉を村八分にした連中と三木巡査、リアルなのは千代吉に殺されたやつらだ。そう思ってしまう私がゆがんでいるのか。とにかくとても悲しいことだよ。

しかし良雄は加藤嘉さんと全然違う役者として、原田千代吉をやりとげた。
大阪行きの汽車に乗り込むとき、それが永遠の別れかもしれないという場面で、秀夫にみせた笑顔。「おう、いってくるぞ」みたいな。あれ、すごい。演出がしじだしてもそういうあんなふうにはならないね。さすが良雄。

あと渡辺謙ね、うまい。でもこの役、下手でもいいんだよね。でも謙で正解。強いて言うと暗さが足りないので、佐藤こういちとかDCきいっちゃんでもよかったかな。小日向文世みたいなのでもいいかもしれない。

3月21日(日)  いかりや長介
いかりや長介が亡くなった。昨年発見されたがんに勝てなかったようだ。
これでまたひとつ、生ける思い出がなくなっちゃった。テレビなんて所詮、一方的にこっちが知っているだけの世界で、むこうはこっちのことを知らないのに、とても身近に人がいる。私の思い出の一画には必ずテレビがあって、そこに映し出された人は大切な思い出の一部となっている。だから物心ついてからずっと知り合いみたいに思って、テレビや映画でその姿を見てきた。
昨年、病気で休養されていたが、夏の「踊る」の舞台挨拶で復帰。秋には「あなたの隣に」出演したが、やはり喉の癌の影響か、声や表情に張りがなく、くたびれた、という感じがした。渥美清のトラさんも最後のほうは、やっぱり声が細くなりかすれていっていたのですごく心配していたのだが。

3月20日(土)  イエモン
伊衛門ってサントリーが発売したペットのお茶が大人気。
イエモンっていうから、ああヨシイロビンソンか、とか思った。
宮沢りえともっくんって、こうやってならべてみると案外、似合っているかも。
もっくんって、りえタイプ、ちょっと地味が入って女性とあう感じ。
地味っていうか、華がない、生気がないっていうか。

サントリーって「和茶」ってのもやっていたんだけど、あれのバージョンアップ版であると考えるのが自然だろう、間違いない。
SASUKEがカンフーになったようなもんだ。(わかる人いないよなあ)


つううか、サントリーってお茶とつくものを出しすぎ。
緑水
やら
しみじみ茶
やら
中国緑茶
やら
のほほん茶
やら

で、最近は
まんてん畑
だって。

目新しさのみが訴求ポイント。

アサヒ飲料は
十六茶

キリンは
生茶

なのに。




3月16日(火)  鬼畜
松本清張の没後10周年ということで、清張作品のドラマリメイクを各局ともに流している。なんでも清張作品のドラマは安定して数字がとれるというこで、それも春の改編時の企画としてはおしいいところなんだろう。
これはやっぱり映画のほうがよかったな。緒形拳と岩下志麻で、野村芳太郎監督という当時としてはヒットしないはずがない面子でやったやつ。
今回ビートたけし(北野ではない)と黒木瞳がそれにかわったわけだが、ちょっとかなわなかったかな。岩下志麻ってかわいいしこわいのね、黒木ってこわくないしはげしさもない。気の強さはあるのだけど、気が強いのはこわいことではないのね。
たけしもやっぱり役者としては盛りは超えたかな、10年前くらいにこれやっていたらけっこうはまったんだろけど。年をとりすぎたのか、この人が異端の役者にさせていたオーラがとんでしまっているような気がする。いや、きれかな。
映画のほうはもっと暗くて重くて、そのなかでどうしようもない男を緒形が好演していましたよ。
室井滋はけっこうはまっていた。そうか、北野さきさんをどっかでやっていたな。たけしのきれのなさはそういうことか。