1997/02/21(FRI)

1997/02/21(FRI)



きょうから、名目を日記に改めた。身辺雑記の色彩が濃かったいままで通りの内容に、さらに事実に即した記述が多くなるとは思うけれど、基本的には、名目が変わってもそれほど中身に変化があるとは思えない。
わたしのように、サイテーの状態に陥った人間が、それでもこうして日記を綴り、何かを誰かに伝えようと努力するというのは考えてみれば不思議なことではないだろうか。わたしは正直言って、もう生きていたくないほど自分の生というものに絶望しているのだ。そんな人間が、たかが日記を書くことくらいで、そんなに簡単に救われるものだろうか。しかし、明らかに何かがわたしをキーボードに向かわせていることも確かなことに思われる。確かに、何かがわたしに書かせているのだ。書いても何にもならないかもしれない、しかし、そこを越えたところで、書くように唆しているものが確かにあるのだ。思えばこの日記を始めてから、きょうでちょうど一カ月だ。1月21日、土方巽の命日だったのでよく覚えている。
考えてみれば、この土方巽という固有名詞も、この10年でずいぶん変化した。これほどに激しく変化した言葉というのも珍しいのではないだろうか。ほんとうに色あせた! しかし、それにしても不思議な暗合めいたものがある。生前の土方は、わたしに対しあまり意見がましいことを言わなかったが、ある時、「夏際、詩にかじりつくようなことはするなよ。それよりお前は日記だな。日記を書けよ」といった意味のことを、突然言ったことがあった。まさに、きょう、命日から一カ月目に日記の名目に改めているのが、なんとも不思議に思えるのだが……。

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夏際敏生日記 [1997/01/21-1997/02/22] 目次| 前頁(1997/02/20(THU))| 次頁(1997/02/22(SAT))|