通りゃんせ


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通りゃんせ

    わらべうた
作・編曲 本居長世
通りゃんせ 通りゃんせ 
ここはどこの細道じゃ 
天神様の細道じゃ 
ちぃっと通して 下しゃんせ 
ご用のない者 通しゃせぬ 
この子の七つのお祝いに 
お札を納めに 参ります 
行きはよいよい 帰りはこわい 
こわいながらも 
通りゃんせ 通りゃんせ 
1921年(大正10年)
 (長世が発表した年)

 『通りゃんせ』のモデルとなった場所は、埼玉県の川越市だといわれる。
 川越市は「小江戸」とも形容されるように、江戸時代には都とずいぶんなじみの深い土地がら。江戸の北の守りとして、また、江戸の台所として代々幕府がおさめてきた天領である。
 さて、そんな川越には、かつて城があり、城の本丸の近くに三芳野神社が建立されていた。三芳野神社は菅原道真(天神様)を祭ったものだが、城の本丸の近くにあったことから、庶民の身ではふだんは参詣もかなわず、庶民の参詣が許されるのは、年に一回の大祭のときだけだったという。7つになると天神様の氏子になれる。昔は医療も発達していなかったから、7つになるということはその子が育つ目安となり、いまでいう成人式のようなお祝いをしたのだ。
 とはいえ、そんなときでも、場所がら、警備の者が多い。町人たちがめずらしさのあまり、キョロキョロしようものなら、「何をしている」「はやく歩け」と叱声が飛んできた。そんな庶民の落ち着かない気分が「行きはよいよい帰りはこわい」と表現されたという。
 三芳野神社は、現在も川越市の一角に健在である。なお、この歌の起源については次のサイトで詳細に論じられているので、興味のおありの方は参照されたい。
 【「川越の歌と文学(1)」http://www.alpha-net.ne.jp/users2/kwg1840/uta.html】