流 転


Return to the List

流 転
松竹映画「流転」主題歌

作詞 藤田まさと
作曲 阿部 武雄
唄  上原  敏
1.男命を 三筋の糸に
  かけて三七 二十一目(さいのめ)崩れ
  浮世かるたの 浮世かるたの
  浮き沈み

2.どうせ一度は あの世とやらへ
  落ちて流れて 行く身じゃないか
  鳴くな夜明けの 鳴くな夜明けの
  渡り鳥
3.意地は男よ 情けはおなご
  ままになるなら 男を捨てて
  俺も生きたや 俺も生きたや
  恋のため





1937年(昭和12年)
作詩は『傷だらけの人生』(1970.曲 吉田正 唄 鶴田浩二)『浪花節だよ人生は』(1984.曲 四方章人 唄 木村友衛・細川たかし等、競作)の藤田まさと。作曲は『国境の町』(1934.詩 大木惇夫 唄 東海林太郎)『むらさき小唄』(1935.詩 佐藤惣之助 唄 東海林太郎)の阿部武雄。唄うは上原敏。

昭和12(1937)年、サンデー毎日主催のすぐれた長編大衆小説に贈られる『千葉亀雄賞』に入選した、後の大作家 井上靖の時代小説『流転』が、松竹下加茂(京都)撮影所、二川文太郎監督、坂東好太郎主演で映画化され、映画もその主題歌であるこの歌もヒットしたが、戦時中は「時局に合わず無頼な内容である」と歌うことも聴くことも禁止されていたという。
「江戸末期。将来を嘱望され、上方にまでその名声が轟いていた若手の長唄三味線方(歌舞伎舞踏の伴奏・作曲者)杵屋新二郎は芸に対する純粋な心から、市川海老蔵の注文を受け入れた師匠六三郎の考えが納得できずに、袂を分かつ。フラフラしているときに、 何気なしに入った場末の小屋の踊り子、お秋の踊りに天性の華やかさを感じて、<この娘の踊りの伴奏をしてやりたい>と想い、お秋をスカウトする。やがてお秋も、新二郎の芸に対する執念に惹かれて行くが、お秋には、遊び人の父勘十がいて、遊ぶ金ほしさからお秋をせびることに飽きたらず、お秋を名士の妾にして大金を得ようと思っている。猛特訓の末に、寄席でお秋の踊りを発表する事になるが、発表当日、お秋誘拐を企てる勘十に寄席を放火され、お秋を助けるために勘十と格闘する新二郎は、勘十を殺してしまう。その場から逃れた新二郎は、放心状態のまま師匠の元を訪れ相談するが、その技を惜しんだ六三郎は<江戸から逃げろ>と言い、新二郎を逃がす。そして五年・・・。お秋は、新二郎を<親の仇としてではなく、あの日の踊りの続きをお師匠さん(新二郎)の三味線で舞いたい>という一心で、各地を探し歩いていたのだが・・・(井上靖全集 第八巻 新潮社 1995所収)」
という筋書きのこの物語は、芸道物、股旅物のスタイルで書かれているが、初めから10年間に渡る純愛小説で、昭和31(1956)年にも大曽根辰保(辰夫)監督、高田浩吉主演で再映画化されている。
http://web.ffn.ne.jp/~natumero/nichimero.html#ruten