勘太郎月夜唄


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勘太郎月夜唄
東宝映画「伊那の勘太郎」主題歌

作詞 佐伯孝夫
作曲 清水保雄
唄  小畑 実
   藤原亮子
1 影か柳か 勘太郎さんか
  伊那は七谷 糸ひく煙り
  棄てて別れた 故郷の月に
  偲ぶ今宵の ほととぎす


2 形はやくざに やつれていても
  月よ見てくれ 心の錦
  生まれ変わって 天龍の水に
  うつす男の 晴れ姿


3 菊は栄える 葵は枯れる
  桑を摘む頃 逢おうじゃないか
  霧に消え行く 一本刀
  泣いて見送る 紅つつじ
1943年(昭和18年)



藤原亮子(1917〜74)
 ビクターのベテラン歌手で、「湯島の白梅」「勘太郎月夜歌」「月よりの使者」「朝だ元気で」「誰か夢なき」など多くのヒット曲を 歌っているが、その経歴などについては詳しいことはわからなかった。
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【伊那の勘太郎とは何者か?】
 一言で言えば「戦時中に大ヒットした映画の中のヒーロー」である。当然、実在の人物ではない。
 第2次世界大戦中の昭和18年に東宝で封切られた映画「伊那節仁義(サブタイトル“伊那の勘太郎”)」は、 軍国もの一色の日本映画の中で大ヒットを記録した。
 軍部の締め付けが厳しい社会事情の中、この映画は幕末に実際に伊那谷を通行した水戸藩の勤王党「天狗党」を勘太郎が手助けをする という筋立てで辛うじて検閲を通過した。しかしその内容は、ふるさと伊那に帰った勘太郎が義理と人情の狭間で揺れる日本人好みの 痛快時代劇。
 主演は元祖「流し目」で日本中の女性をとりこにしていた、ご存知、長谷川一夫。その相手役・ヒロインには今や大女優である 山田五十鈴。この当時東宝の看板スターの競演映画が当たらない訳がない。小畑 実と藤原亮子の歌う主題歌「勘太郎月夜唄」も その軽快なリズムに乗って空前の大ヒットとなった。

【 なぜ伊那の勘太郎なのか?】
 この映画の監督である滝沢英輔と脚本家の一人、三村伸太郎は1930年代に山中貞夫、稲垣 浩らとともに「鳴滝組」という グループを結成し共同で映画作りを行っていた。  当時、市丸姐さんの美声で大ヒットしていた「伊那節」に目をつけた鳴滝組は伊那を舞台にした娯楽時代劇映画の製作を思いついた。  タイトルは前述の「伊那節仁義」、三村伸太郎が原作を執筆、同グループの八住利雄の協力を受け脚本が起こされた。  そして主人公の名前が、稲垣 浩のあだ名「イナカン」から発想して「伊那の勘太郎」となったわけである。
 戦後、昭和27年に大映が上伊那郡伊那町、高遠町、長谷村で大ロケーションを敢行。主演・長谷川一夫、ヒロイン・音羽信子の 第2作「勘太郎月夜唄」も、これまた空前の大ヒットを記録した。  おかげで信州の片田舎「伊那」の知名度は一躍全国区に踊り出た。伊那市(昭和29年4月1日市制施行)と伊那商工会議所は、 春日公園に今に残る巨大な「伊那の勘太郎碑」を建立した。その石碑の揮毫は当時の大映社長、永田氏によるものである。  昭和33年9月14日、伊那市はその永田氏を迎えて盛大に、そして厳粛に勘太郎碑の除幕式を行った。  そしてその日、現在の伊那市最大の祭り「伊那まつり」の前身である「勘太郎まつり」の第1回が実施されたのである。
『【伊那の勘太郎について】(http://www.city.ina.nagano.jp/ina-matsuri/profile/kantarou.htm)による。』

伊那の勘太郎(改題...伊那節仁義
製作=東宝映画 1943.01.03 10巻 2,500m 91分 白黒 
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製作 ................  押山保明 清川峰輔  
演出 ................  滝沢英輔  
演出助手 ............  谷口千吉  
脚本 ................  三村伸太郎 八住利雄  
撮影 ................  安本淳  
音楽 ................  伊藤昇  
演奏 ................  東宝映画管弦楽団  
主題歌「天龍二十五里」  
作詞 ................  佐伯孝夫  
作曲 ................  伊藤昇  
編曲 ................  平茂夫  
唄 ..................  市丸  
    「勘太郎夜唄」  
作詞 ................  佐伯孝夫  
作曲 ................  清水保雄  
唄 ..................  小畑実 藤原亮子  
  
配役     
伊那の勘太郎  ......  長谷川一夫  
おしん  ............  山田五十鈴  
鳶屋おせい  ........  竹久千恵子  
庄吉  ..............  黒川弥太郎  
鳶屋おふさ  ........  市丸  
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