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婦人従軍歌
作詞:加藤義清 
作曲:奥  好義 
1.火筒(ほづつ)の響き遠ざかる 
  跡には虫も声たてず 
  吹きたつ風はなまぐさく 
  くれない染めし草の色 

2.わきて凄きは敵味方 
  帽子飛び去り袖ちぎれ 
  斃(たお)れし人の顔色は 
  野辺の草葉にさもにたり 

3.やがて十字の旗を立て 
  天幕(テント)をさして荷(にな)いゆく 
  天幕に待つは日の本(ひのもと)の
  仁と愛とに富む婦人 
4.真白に細き手をのべて 
  流るる血しお洗い去り 
  まくや繃帯白妙(ほうたいしろたえ)の 
  衣の袖はあけにそみ 

5.味方の兵の上のみか 
  言(こと)も通わぬあだ迄も 
  いとねんごろに看護する 
  心のいろは赤十字 

6.あないさましや文明の 
  母という名を負い持ちて 
  いとねんごろに看護する 
  こころの色は赤十字 
1894年(明治27年)


 作詞者が、戦地に赴く従軍看護婦の凛々しい姿を新宿駅駅頭で見て感動し、一夜で書き上げたと言われている作品。これに当時宮内省の楽師兼華族女学校の教官であった奥好義が曲をつけた。従軍看護婦を主題にした唯一の軍歌で、世界的にも珍しいという。