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 流行歌が世相を反映するものだとしたら、昭和9年の「小さな喫茶店」と昭和30年の「喫茶店の片隅で」に出てくる恋人たちの情景はあまり変わっていないような気がする。しかしそれから半世紀を経て、今の恋人たちを見ると、まるで異国の人間みたいに思える。どこでどう変わってしまったのか。それとも中身はさほど変わっていないのだろうか。


喫茶店の片隅で

作詞 矢野 亮
作曲 中野忠晴
唄  松島詩子
1.アカシヤ並木の たそがれは
  淡(あわ)い灯(ひ)がつく 喫茶店
  いつもあなたと 逢(あ)った日の
  小さな赤い 椅子ふたつ
  モカの香りが にじんでた

2.二人だまって 向きあって
  聞いたショパンの ノクターン
  もれるピアノの 音(ね)につれて
  積んでは崩し また積んだ
  夢はいずこに 消えたやら
3.遠いあの日が 忘られず
  一人来てみた 喫茶店
  散った窓辺の 紅バラが
  はるかにすぎた 想い出を
  胸にしみじみ 呼ぶ今宵







1955年(昭和30年)