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爪色の雨
作詞 サトウハチロー
作曲 伊 藤 翁 介
爪色の雨が降ります
しずかに しずかに−−−
あじさいの花がけむります
しずかに しずかに−−−
  誰にも知れないように
  お風呂場の壁がぬれて行きます
  しずかに しずかに−−−
鉛筆色の 角だして
まいまいつぶろが 見ています
しずかに しずかに−−−

爪色の雨の降るたびに
  あなたと旅した あの頃を−−−
  あなたのお下髪(さげ)を ほほえみを−−
  耳のうぶ毛を はじらいを−−−
  あの山脈(やまなみ)を あの指を−−−
爪色の雨の降るたびに
爪色の雨が降ります
しずかに しずかに−−−
あじさいの花がけむります
しずかに しずかに−−−
  誰にも知れないように
  お風呂場の壁がぬれて行きます
  しずかに しずかに−−−
鉛筆色の 角だして
まいまいつぶろが 見ています
しずかに しずかに−−−







1947年(昭和22年)

 大正15年5月15日、サトウハチローの処女詩集「爪色の雨」が出版されたが、伊藤翁介がこれに曲を付けたのは昭和22年であった。この詩は三部からなるものであったが、作曲では頭の部分が省かれている。
 なお、詩集の出版記念会の席上、北原白秋は「爪色の雨という表現は、新しい色の発見」と褒めたという。サトウが言う「爪色の雨」とは、梅雨時の雨の表現である。(伊藤翁介 ギター演奏家兼作曲家)