シューベルトのセレナーデ


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歌曲集『白鳥の歌』より
セレナーデ(Standchen)


作曲        Frantz Peter Schubert
作詞  Heinrich Friedrich Ludwig Rellstab
訳詞           堀 内  敬 三
秘めやかに 闇を縫うわが調べ
静けさは果てもなし 来(こ)よや君
ささやく木(こ)の間を 洩る月影
	洩る月影
	人目もとどかじ たゆたいそ
	たゆたいそ



君聞くや 音(ね)にむせぶ夜の鳥
わが胸の秘事(ひめごと)を そは歌いつ
鳴く音にこめつや 愛の悩み
	愛の悩み
	わりなき思いの かの一ふし
	かの一ふし



深き思いをば 君や知る
わが心 騒げり・・・・
	待てるわれに 出で来よ君
	出で来よ



 Leise flehen meine Lieder
 Durch die Nacht zu dir;
 In den stillen Hain hernieder,
 Liebchen, komm zu mir!
 Flusternd schlanke Wipfel rauschen
 In des Mondes Licht,
 In des Mondes Licht,
 Des Verraters feindlich Lauschen
 Furchte, Holde, nicht,
 Furchte, Holde, nicht.
 Horst die Nachtigallen schlagen?
 Ach! sie flehen dich,
 Mit der Tone susen Klagen
 Flehen sie fur mich.
 Sie verstehn des Busens Sehnen,
 Kennen Liebesschmerz,
 Kennen Liebesschmerz,
 Ruhren mit den Silbertonen
 Jedes weiche Herz,
 Jedes weiche Herz.
 Las auch dir die Brust bewegen,
 Liebchen, hore mich!
 Bebend harr' ich dir entgegen,
 Komm, beglucke mich,
 Komm, beglucke mich,
 Beglucke mich!
1828年

 歌曲集《白鳥の歌》の第4曲。シューベルトのリート(ドイツ語による鍵盤楽器伴奏付き独唱歌唱曲)の中で最も有名なもののひとつである。 《白鳥の歌》は、シューベルトの死後半年経った1829年5月に、兄フェルディナント・シューベルトの計らいでハスリンガー社から出版された。シューベルトがこの世を去った年の8月に精力的に作曲されたレルシュタープ詩の7曲、ハイネ詩の6曲のリートと、10月に入って作曲され彼の最後の曲ではないかと想像されるザイドル詩の《鳩の使い》の計14曲がまとめられている。
 あまりにも有名なその旋律は、哀愁を帯び、優美で静けさを秘めている。同じ旋律による2節の後に別の節がもうひとつつけられた有節歌曲であり、またこの曲はギターもしくはマンドリンの響きをピアノで模している。
 実は、作詞者のレルシュタープはこれらの詩を他のものと一緒にベートーヴェンに作曲を依頼していた。ところがベートーヴェンは目を通す間もなく亡くなってしまった。ベートーヴェンがシューベルトにどういった形で依頼したのか真意は不明だが、シューベルトがこの7つの歌曲を連作歌曲に組み込もうとしていた事は確かなようだ。
(http://classic-midi.com/midi_player/classic/cla_Schubert_serenade.htmによる。)