君よ知るや南の国


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 歌劇「ミニヨン」の第一幕で、薄倖の少女ミニヨンが、自分の幼い時の淡い想い出の中に浮かぶ故郷の姿を物語る歌。この歌劇はゲーテの小説「ウイルヘルム・マイスター」のフランス訳に寄っており、この原詩もその中にある有名な詩だが、原詩では三章あるのを二章にしてある。堀内敬三の訳は大正4年。

君よ知るや南の国


訳詞   堀内敬三
作曲 C.L.A.Thomas
1.君よ知るや 南の国 

  木々は実り 花は咲ける

  風はのどけく 鳥はうたい

  時をわかず 胡蝶舞い舞う

	光満ちて 恩寵(めぐみ)溢れ

	春は尽きず 空は青き!

  ああ 恋しき国へ

  逃れ帰る よすがもなし!

	わが 懐かしの故郷(ふるさと)

	望み満てる国

	心憧るる

	わが故郷!


2.君よ知るや 遠きわが家

  光常に 輝き満てる

  夜(よ)は更(ふ)くとも 石の像(ひと)は

  共に舞わめと 腕(かいな)延べつつ

	清き湖(うみ)の 波の上に

	鳥の如く 白帆浮かぶ!

  ああ 恋しき国へ

  逃れ帰る よすがもなし!

	わが 懐かしの故郷(ふるさと)

	望み満てる国

	心憧るる

	わが故郷!
1915年(大正 4年)