Tatuya Ishii & Asato Shizuki Special Project 2003

SUN
桜二号−海の桜−

−観劇録−(第四部・最終)

――吉田と飯島がモップがけをしているなか、プラットホーム上に東条が登場
東条:(プラットホームの中央=ハッチの真上に腰掛ける、独白)俺を呼んでいた幽霊…。「俺たちを 知っているのか ホトトギス」…あの幽霊、なんと言いたかったのか。
俺たちはバカにされてるのか、味方に。「ばかにされ ハリボテ爆弾 ホトトギス

吉田:なにを言ってるんだ。
東条:それにしても、俺たちは火気厳禁の札の上で、またもやこうしてたばこを吸ってる。ここは火薬庫の真上で、もし火がついたらこの船はたちまち海の藻屑だ。
吉田:そんなことわからないだろう。爆発するのは20発に1発なんだぜ。このうえたばこまで取りあげられたら、目もあてられねぇや(ハッチの扉でたばこをもみ消す)。
東条:そういえばもう何日航海してる? 実はずっとそのことを考えていたんだ。
吉田:こんないい天気に何を言い出すんだ。
東条:そうだ、ずっといい天気が続いている。…で、俺たちはいつからここにいる。
吉田:そ、そりゃ出航してからずーっとだろ。
東条:いつ、どの軍港から出港した?舞鶴か?横浜か?
吉田・飯島:(絶句)
東条:(独白)俺は、入隊してからずっとたばこが吸いたかった。しかし吸わなかった。海軍兵士として当然の義務だと思っていた。これは本物の人生なのか。…戦争は、いつ始まっていつ終わるのか。今も続いているのか。(中央へと歩きながらの独白)
――吉田・飯島、凍り付いたように動かない
東条:俺たちのたばこがもとの事故でこの戦艦は沈んじちまったんじゃないか。
吉田:それじゃあまるで……。
東条:俺たちはすでに死んでいるのではないかと……。
吉田:うそだ!
飯島:そんなはずはない!
東条:受け入れるしかあるまい。
飯島:(しばし間。思いついて)しかしあのハリボテ戦艦は威嚇射撃をしてきたぞ!
東条:あいつらもおそらく同じだ。いわば浮かばれない者同士の、無念の思いで撃ってきたんだろうさ。俺たちはすでに…。
吉田:ありえねぇ。
東条:吉田、こないだ艦長にたばこを見つかったとき、なんて言ってた?
吉田:もう隠すことなんかねぇ。思う存分吸え…って(絶句)。
東条:火薬庫の真上でたばこを吸っているのを見られたにもかかわらず、な。…俺たちは死んだんだ。20発に1発の確率で、それも自分たちのたばこの不始末でな。
飯島:爆発しない爆弾を積んで…まったく無意味な……。そんなんで、どうして戦争なんかしたんだ。
東条:そんなもんだ。それが戦争なんだよ。
吉田:後付で理由なんかつけるな。ちくしょう!
東条:俺たちは2度死んだ。1度目は爆死、2度目は自尊心をハリボテで吹き飛ばされた死…。
飯島:ちくしょう!
吉田:飯島、泣くな…泣くなぁ(最後は涙声)。
東条:(涙を堪えるかのようにわずかに上を向き)泣けるのは 生きてればこそ ホトトギス、か……。
――旭日輝く。吉田と飯島立ち上がり、中央の東条に並ぶ。3人は真上から落ちるスポットライトでその表情はうかがえない。直立不動の姿勢をとると、ゆっくりと『敬礼』
ゆっくりと−幕−

(ナレーション)
 海は青く輝き、どこまでも広がって、散った桜を遠くへ押し流す。今や国際化の波に洗われ、さくらんぼの生産は危機に瀕している。by 山形県。

 アンコールの幕はシタールの音と共に上がった。なんとなくバリを思わせるイントロにのってステージ上には黒のTシャツ(旭日模様)に裾のつぼまった黒のパンツ、赤いサッシュに赤い鉢巻きの3人が踊る。中央の姿月は軍帽のような帽子をかぶっている。
 曲は【berangkat-ブランカ-】、♪ブランカ(かけ声)、誰でもいつかは(チャチャチャ)、の繰り返しのフリがかわいくて踊りたくてたまらない。が、後ろの人にわるいので立てない。おしりのむずむずを押し殺しつつ、お手フリおばちゃんで我慢。
 続いて【Nero e Bianco】、フラメンコ調の1曲、アップテンポになってさらにおしりのむずむずは高まる。ダンサーも客席をあおってくるが、誰も立たない。観客の年齢層の高さが悲しい。(ちなみにこの2曲は姿月あさとのアルバム『Sonata』に収録されている)
 そして【SUNRISE】、これはSUNのテーマ曲に歌詞をつけてあるもの。でもコード感がメジャーでアップテンポになっているため、明るい感じに仕上がっている。♪Sunrise, ウォウオッオ、oh-oh-oh sunrise ゥオゥオゥオゥオ(表現できん!)の繰り返しのフリが楽しい。今こそ立って踊る!と何度も思ったが、誰も立たないので、またもやお手フリおばちゃん(なんで立たないのぉ、なんで踊らないのぉ、ほら、姿月さんアオってるよ-内心の声)。
(参加したのが2号初日、お客も慣れていなかったのだろう。とは思うが、とても残念だった。)

 3曲終わったところで一度幕がおりる。カーテンコールを期待して待っていると、幕の中央部分だけが持ち上がり、そこに姿月さんが立っている。白いドレッシーなスーツ姿、パンツスーツだが、パンツの後ろ側にフィンを思わせる三角の布がつけられているのがかわいらしい。
 出てくるなり客席から「ずんちゃぁ〜ん」の声、「はい」とお返事をする姿月さん、かわいいなぁ。
 いかがだったでしょうか? お芝居も急展開なんかもあったりして頭の回転がたいへんで、なかにはノーコントロールになった方もいらっしゃったかもしれません。最後の曲は石井さんがこのSUNのテーマ曲に詩をつけてくださった曲で、『SUNRISE』といいます。桜フリフリ振りながら見てくださってありがとうございました。またフリフリしにきてくださいねぇ。
 (略)今年の年末にコンサートをやろうかな、と思ってます(拍手)。また詳しいことが決まったらお知らせしますから、って家に電話はしませんよ(客:してぇ〜♪)。電話して? ハッハッハ(のけぞり笑い)。電話はしませんけど、ポスターとかね、ご覧になったらまた来てください。
 それでは、ここに来てくださっている皆さんのためにもう1曲お送りします。石井さんの【想い】という曲です。
 ピアノのみで歌い出す。さらっと歌っている感じがやさしくて、石井本人とは別の意味でじーんとする。間奏部で一部しかあいていなかった幕が全部開く。そして左右からはキャストと出てきて1列に並ぶ。
 最後のフレーズを歌う姿月さんを見守るキャスト・ミュージシャンの表情がやさしくて、うれしいやら感動するやらでわけのわからない状態になる(きっとわけわからない表情をしていたことでしょう)。
 歌いきって今度こそ本当のカーテンコール、客席に手を振る姿月さん、小野田さん、藤浦さん、ダンサーの2人、渡辺さんを始めミュージシャンの皆さん、盛大な拍手に包まれてほっとした表情でした。
 そうそう、姿月さんも「このいっしょに舞台を作ってくださったスタッフの方々にも拍手をお願いします」っておっしゃっていました。あの言葉、うれしかったなぁ。
 というわけで、最後は感想文になってしまいましたが(爆)、桜2号のレポを終わりにしたいと思います。


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