静かな街の古い洋館巡り




 荻窪駅の南に広がる街並みは杉並の中でも緑の多い閑静な住宅地ですが、中には大正から昭

和初期の建物と思われる古い邸宅も見られます。そこで、荻窪付近に残る古い洋館を中心に巡

りながら、静かな住宅街を散策してみたいと思います。


 荻窪駅南口から東に向かい荻窪電話局の角を南に曲がり100mほど行くと、左手に古びた

荻窪歯科診療所があります。ドラマの舞台になりそうな鄙びた雰囲気の洋館で、大正末期に建

てられたものです。バス通り沿いに少し戻り、信号のある路地を右に曲がるとすぐにアメック

スビルの脇に立派な長屋門が見えてきます。今回はそのまま通り過ぎて(詳しくは城と古城址

巡りの章の旧中田家長屋門を参照)東に行くと、交差点の角に「グンヂッロ郊西」と書かれた

(右から読む)ドームのある建物が見えて来ます。この和洋折衷の外観の建物は割烹旅館西郊

で、当初は高級下宿屋さんだったそうです。

 前の道を南西に200m程行くと左手に大田黒公園があります。この公園は音楽評論家とし

て活躍した大田黒元雄氏の旧居跡が、氏の亡きあと区に寄贈されたもので、日本庭園のある美

しい公園となっています。その一画に昭和8年築の洋館造りの旧大田黒邸が記念館として保存

展示されています。中には入れませんがガラス張りのテラス越しに、ピアノ等のある仕事部屋

が見られます。

 表の道を南西にしばらく進むと、右手に落ち着いた雰囲気の教会が見えます。フリーメソヂ

スト杉並中部教会で、築年は不明ですが結構古い建物のようです。さらに行くとカーブの左手

荻外荘があります。終戦時の日本の運命を決定した歴史的な建物ですが、現在も家族の方が

お住まいなので見学は出来ません。(洋館ではないようですし)門を眺めるだけにして、その

まま道なりに西に向かいます。

 善福寺川を渡って南に100mの場所に荻窪公園があります。小公園ですが荻窪の地名の元

になった荻が植えられています。昔はどこにでも生えていましたが、今この植物がわかる人は

少ないと思うので一見の価値有りです。一休みしたら、さらに西に向かい環八通りを越えて南

荻窪に入ります。

 南荻窪にも住宅地の中に古そうな建物の荻窪栄光教会があります。さらに古い洋館も見られ

るのですが、多くは個人のお宅なのであまり覗いたりしないで、眺めるだけにします。その中

登録文化財のK邸もあります。普通は文化財に指定されると公開したりしなければならない

ので、個人の邸宅では不都合が生じますが、登録文化財は緩やかな制度なので個人宅でも選ば

れるようです。

 つぎに北に向かって線路をくぐり、上荻の住宅街も散策してみます。やはり古い洋館が見ら

れるのですが、中でも表通りから一歩入ったビストロOJIは古い外観を残す洋館で、静かな

住宅街の中にあるのがよく似合うレストランです。建物は大正末に建てられたもので、南の増

築部分が店舗となっているようです。

 さらに青梅街道を渡り、西に行くとかつての日産自動車荻窪工場の跡地があります。この地

は日産の前身で名戦闘機を造り出した中島飛行機の発祥の地ですが、新経営者カルロス・ゴー

ン氏の経営再建策により閉鎖が決まりました。工場内には管理棟と思われる古い建物が残って

いましたが跡形も無く取り壊されて、今は広い野原になっています。

 さて、ここまででも大分歩いたのですが、もし時間があったらタクシーでも拾って区内北端

下井草教会も見てみたいと思います。建物は古くはなさそうですが、灯台のように高い塔の

ある教会で、写真だけ見たら何処なのかと思うような風景を見せています。








 静かな街の「トトロの家」


 阿佐ヶ谷駅から少しはいった住宅街の中に、宮崎駿のアニメ「となりのトトロ」に出てくる

洋館風の古い住宅にそっくりの家があります。これらは個人の住宅なので写真や詳しい住所は

載せられませんが、私が見つけただけでも二軒あって、ともに落ち着いた佇まいを見せていま

す。その内ひとつは阿佐ヶ谷駅の北口方面で、バラの生垣に囲まれた前庭には色とりどりの草

花が植えられています。もうひとつは南阿佐ヶ谷にあり、近頃めっきり少なくなった下見板張

りの白い洋風木造家屋です。下記にも紹介しているように他にも東京の主な洋館を巡り歩いて

いるのですが、私としては豪華さや華麗さを競うような洋館ではなくて、トトロの家のように

質素で穏やかな暮らしが垣間見えるような洋館が好きです。





なお、これ以外にも杉並に残る古い洋館を紹介していますので、東京の文化財巡りの章の


東京 の 古い洋館  もあわせてご覧下さい。





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