6L6GC 三結PPアンプ






 このアンプを製作しようと思ったのは、かねて

から6R−A8や6G−A4の代用管を探して規

格表を見ていたのですが、6L6GCの三結動作

が大きな最大定格を持っているのにもかかわらず

その実力を生かしたアンプの製作例がほとんどな

かったので、一度は製作してみたいと思っていま

した。しかし一から設計するのは大変なので、有

名なウイリアムソンアンプをリメイクして製作す

ることにしました。

 6L6GCはよく知られているように歴史のある球で、その間に何度も改良され、また業務用の機器

にも採用されるなど長い実績のある球で、その最大定格は信頼に足る数字だと思うので、定格目一杯の

動作をさせようと考えました。寿命への悪影響を心配する方もいるでしょうが、丈夫な球なら一時的に

最大定格を超えてもさほど問題にならないことは、真空管アンプを数多く製作された方ならば実感され

ていると思います。ところでウイリアムソンアンプは KT-66を使っていますが、その動作は 6L6GCの

最大定格以内ですし、定格以内での電気的特性は6L6と同じなので、そのまま置き換えられます。せっ

かくですから古典回路をなるべく忠実に再現しようと思ったのですが、手持部品の関係などで一部回路

を変更しています。





 製作のポイントとしては

1.今ならば、OPTはソフトンのRX-30-8、電源トランスはノグチ PMC-150M、チョークは

  PMC-1520Hを使うのが良いと思います。本回路では手持ちの電源トランスが表示より高い電圧の

  出る物だったので、直流抵抗の高いチョークで 20V程電圧を下げたわけで、本来なら10Hもあれ

  ば十分です。原回路も整流法方は違いますが、10Hのチョークです。また 30H20mAのチョークは

  タムラにはあるようです。

2.出力管のカソード電位が44Vになるように、100オームのボリュウムを調節する。

3.前段の 6SN7は6FQ7を代用してもいいでしょう。

4.6L6GCは WESTAN NATHONALの CV586/6L6GCという印字で、見るからにひ弱そうな42に似た

  外形の球でしたが、案の定というか、定格内の動作なのに購入した6本の内半分のプレートがほん

  のり赤くなってしまいました。試しに6本あった手持ちの東芝の球に差し替えたら、全てが何とも

  ありませんでした。国産球の信頼性を再確認した思いですが、類似管を使う場合はもう少し電圧を

  下げて余裕のある動作にした方がいいでしょう。


 原回路との変更点

1.電源をシリコンダイオード整流とした。出力トランス1次への給電電圧が 480Vで原回路より10Vほ

  ど高くなってしまった。

2.そのあおりで、出力管のカソード抵抗を150オームから200オームに増やした。

3.段間コンデンサーの値を変更した。以前、上杉佳郎先生がMJ誌上でウイリアムソンアンプについ

  て詳しく解説されていました。この記事によると、低域の時定数が3段の回路では、原回路のまま

  の時定数配分では動作が不安定になるとのことでした。そして本回路は出力トランスが上杉先生の

  回路とも違うので、トランスのインダクタンスに合わせてコンデンサーの値を推定しました。たぶ

  ん、RX-30-8を使用する場合でもこの値のままで良いと思います。

4.負帰還量を 15db位に下げた。手持ちの出力トランスで安定度に不安があったので、心持ち下げまし

  た。

5.手持ちOPTの都合で出力トランスの1次インピーダンスを 6Kにした。平均プレート特性図に定規

  を引いての計算では、最大出力は約17.1Wになりますが、概算ですので実際にはこれの1割減になる

  でしょう。なお原回路の出力は( RL 10K、電源電圧 470V Eb430V )約 14.5Wだったようです。


 固定バイアスにすれば出力を減らさずに電源負担を軽くできますが、それでは原回路とかなり性格

  の違うアンプになってしまいます。出力管の 40Vを超えるカソードに共通抵抗を用いて、さらにバ

  イパスのケミコンを入れない事が、実は大きな意味があって、ウイリアムソンアンプは近頃注目の

  全段作動アンプに通じる、言うなれば「準差動動作」をしているのです。





  諸 特 性


 このアンプを製作してからしばらくは、ロクな測定器もなく電圧チェックの他には最大出力を確認し

ただけでしたが、その後に最低限の測定器を揃える事が出来ましたので、遅ればせながら本機の諸特性

をご覧頂きたいと思います。

 まずは方形波応答ですが、高帰還アンプなのにほとんど乱れがなく、僅かにオーバーシュートが見ら

れますが、負荷解放でも尖るような事はなく安定しています。



 これは周波数特性にも表れていて、手持ちの古いOPTを使ったのにもかかわらず高域がなだらかに

減衰していて、これといった山谷は見られませんでした。






 歪率特性としては特性曲線が

よく揃っていて、たまたま使っ

た手持ちのOPTが、幸運にも

高帰還アンプに適した特性だっ

たようです。

 また、この歪率カーブは高帰

還アンプと差動アンプの特徴を

合わせたようなカーブになって

いて、ウイリアムソンアンプが

狙い通り準差動動作をしている

事を伺わせます。


無歪出力 13.5W/1kHz

その地点の歪率 THD 1.6%

NFB 約15.3dB

DF=10 on-off法1kHz 1V

利得 21.9dB(12.5倍) 1kHz

残留ノイズ 0.82mV

 本機の出力が元回路より少ないのは負荷が6kと低い所為で、通常のAB級動作ならば負荷が低めの

方が出力増となるのですが、差動動作の場合はカットオフ側が突っかえてしまい、出力はむしろ制限さ

れてしまいます。既に述べたように、元回路の負荷は10kと高めになっているのですが、これも差動

動作を見越しての値だった訳で、代替OPTとしたRX-30-8は1次側8kですが、2次側に8Ω

を繋げば負荷10.7kとなり、元回路の値にも近くなり本機よりも出力増が期待出来ると思います。



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