出力管の選定
この回路では出力段のプレート巻線とカソード巻線が同じ巻数なので、出力管には出力電圧の半分もの
カソード帰還電圧が発生し、これにより入力電圧が打ち消されるので、出力段の利得が非常に低くなって
しまいます。必然的に三段アンプとなるので、省スペースとなる複合管で、サンエイで10本2500円
という破格値で購入出来るPCL86/14GW8を使う事にしました。
一方で、この方式に使われているOPTは、1次巻線と3次巻線を密着させて巻くという大変手間の掛
かる巻線構造になっています。過去、このようなOPTが一般に市販された事は一度もなく、私にとって
非常に貴重なOPTなので、色々試してみたいところですが、まずは上記の球を使って、なるべく簡単な
マッキントッシュタイプCSPPアンプとして組んでみました。
回路としては
従来のCSPPアンプは、上記の市販アンプを筆頭にWEB上に発表されているセットにしても、高性
能を目指すあまり複雑な回路のセットばかりでした。そこで今回のアンプは、性能よりもなるべく簡単な
CSPPアンプとして組む為に、ポプュラーな三極五極の複合管による二段アンプ(実質的三段)という
構成の回路になりました。
初めてマッキントッシュタイプCSPPを見た方は出力段の接続が何やら面妖なと思われるかも知れま
せんが、これを説明していると長くなるので、接続についてはあまり深く考えずに、こんな物だと思って
下さい。ただマッキントッシュタイプの特徴としては、前段の電源を逆相の出力段から取る事でブートス
トラップ式の打ち消しを掛けていて、カソード帰還により著しく感度の低下した出力段を効率よくドライ
ブしているのです。
当初は真空管だけの純粋な二段アンプとしたのですが、それでは最大出力時に約2Vもの入力電圧が必
要になり、これに組み合わせる機器を選ぶなど使い難い面がありました。そこで入力感度不足解消の為に
初段にFETを追加しました。
ただ、なるべく簡単にという思いから追加部品点数の少ないカスコード接続としました。通常カスコー
ド増幅はそれで1段という解釈のようですが、実質的には2段増幅と同等の利得が得られるので、当初の
ような欠点はほぼ解消出来ました。
なお14GW8は動作例でも最大出力14Wとされているので、10Wオーバーを目指す事にしました。
まずはカソードバイアスとして耐圧目一杯の電圧を掛けようと思ったのですが、このPTの電圧としては
300Vまでしか上げられないのでB電圧は300Vとなりました。この程度なら14GW8のSG電圧
も300Vまで許されているので、従来通りの固定バイアスで問題ないですし、あとはバイアスを少し深
くするだけで済みそうです。
気になるのは出力管の最大定格ですが、一見すると固定バイアスであっても、KNF巻線のDC抵抗約
50Ωがカソード抵抗として入っている事になりますし、SG電流が含まれるカソード電流を30mAと
して、プレート損失を9W以下に抑えているので問題ないでしょう。
という事で以下のような回路になりました。
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