QuadU型 6V6GTPP





 前章のチョロQアンプの結果が良かった

ので、出力アップをねらいOPTと出力管

を変更してチョロQならぬ「中Qアンプ」

を組んでみました。

 前回のセットに使用したシャーシや電源

トランスは、本来は今回のセット用に入手

したものですし、チョロQでは出力的に足

りないという方にも手頃なセットではない

かと思います。

 今回使用する6V6は、前章の6AQ5とは最大定格が違うだけで特性自体はほぼ同じなので、回路と

しても出力管とOPTの換装に伴ない電源や補正回路などを一部変更しただけで、基本的には前章の回路

を踏襲しました。

 また今回のOPTは春日無線製なので、ついでに電源トランスも春日無線のもので揃えたのですが、こ

ちらは本来6BM8(16A8)用の規格になっていて、6V6をカソードバイアスで使うのには電圧的

にギリギリでした。そこでSG電圧を目一杯上げ、またOPTの一次抵抗値を低く設定して目標の出力を

得ています。といことで以下のような回路になりました。



製作のポイントとしては

 OPTの推奨インピーダンスは5K:8Ωなのですが、二次巻線の6Ω端子に8Ωを接続して一次側

を6.7KΩとしています。また巻線の極性は図に示してありますが、これを間違えると確実に発振しま

す。最初の音出しの時に高価なスピーカーは繋がない方が良いでしょう。

 一方で、出力管のペアがメタルとGTなので奇異に見えますが、手持ちの球でペア組みをしたらこの

ようになってしまいました。肝心な特性は合っていますし、付属のボンネットを被せてしまえば分から

ないので、今回はご愛嬌というところです。


 諸 特 性

 既に述べているように電源 

電圧が不足気味なのですが、 

出力的には1kHzで何とか目標 

の10Wを得ています。ただ 

OPTの低域特性が良くない様 

で(定インダクタンス型?)

100Hzの波形は9W付近でク 

リップしてしまいます。



無歪出力10.4W THD 1.8%

NFB 約11.7dB + KNF

KNF 約4.7dB

DF=6.7 on-off法1kHz 1V

利得 22.4dB(13.2倍) 1kHz

残留ノイズ 0.42mV





 今回のトランスも高域の特性は比較的素直で、補正無しでも目立った盛り上がり等は無かったのですが

方形波応答ではやはりオーバーシュートが見られたので、軽く補正を掛けています。それでも -3dBでは

90kHz付近まで伸びています。



 また、初段や段間カップリングCの低域時定数は当初チョロQアンプと同じにしたのですが、20Hz付近

で盛り上がり(上の図の前回特性)が現われてしまいました。今回のOPTは定インダクタンス型なので

低域のカットオフが早めに来て段間のカットオフと重なってしまったようなのです。(下図参照)そこで

段間Cの値を増やして出力段のカットオフが一番上に来るようにしたら、上図の通りフラットな特性にな

りました。時定数配分の選び方として、これで正しいのかよく分からないのですが、今のところ安定した

動作をしているようです。


  春日無線によると、このOP

 Tのインダクタンスは約30Hで

 コア組みはスリット無しのバッ

 トジョイントだそうです。また

 設計時の特性でも30Hz付近から

 落ち始めるとの事でした。

  左の図は当セットに実装した

 時の出力別の低域特性で、これ

 を見てもカットオフとしては大

 体5Hz〜30Hzくらいの範囲にな

 るようです。




 雑  感


 初めから6V6で組むのなら、電源トランスは電圧に余裕のあるISOのPH−185辺りの方が良い

でしょう。それと今回使用した春日無線のOPTはすでに製造中止となっていて、現在では市販のKNF巻線

付小型トランスは皆無なので、今後は二次巻線をKNF巻線に流用する方法を検討する必要があるようです。

しかし、物によっては4Ω端子が正確に16Ω巻線の1/2にはならないトランスもあるようなので、まずは

KNFに適するトランスを探さなければなりません。チョロQトランスの入手を逃してしまった方にとっては

残念ながら道は遠いようです。




 OPTを 改5型 に変更

 今回ARITOさんお手製の改良版チョロQトランスVr5を分けて頂きましたので、本機に換装して

特性を採ってみました。このトランスの容量は本来は5Wなのですが、1次巻線にオリジナルより太い線

が使われ、また短期間の試用なら大丈夫だろうと思い、動作点の変更としてはSGへの配線を4.7kの後

からに繋ぎ換えただけです。さらにトランスが変ったのに低域のスタッガ比は以前のままですから、低域

の周波数特性は参考にならないかも知れません。

 まずは方形波応答で、補正無しではオーバーシュートが大きく、かなり不安定な感じです。そこで微分

補正としてNF抵抗に330Pを抱かせてみましたが、まだ大分尖っています。


 微分補正をさらに増やして680Pにすると、オーバーシュートもかなり低くなりましたが、念の為に

積分補正10Pも追加して見ました。これだと大分目立たなくなってきて、高域補償としては十分な波形

になったと思います。



 上記の各補正の状態での周波数特性も採って見ました。補正無しでは高域に大きなピークが出来ていて

やはり不安定な状態だと思われるので、最低でも微分補正の330PFくらいは掛けておいた方が良いの

ではと思います。特性的にはB補正の時が一番フラットになっていて、−3dBでは120kHzの高域

特性を見せています。一方、私はC補正の状態で試聴していますが、それでも−3dBで90kHzまで

は伸びていて、なかなか素直な音を聴かせてくれます。



 今回のOPTの試用では10Wクラスのアンプに載せ換えたのですが、試しにクリップレベルを観測し

たら8W/100〜20kHz、の出力が得られました。しかしその状態で(8W/1kHzの連続出力

を掛けたまま)5分ほど置いていたら、OPTがほんのり温かく感じたので、あわててボリュームを絞り

ました。という訳で連続出力は無理ですが、音楽出力なら8W程度まで使えると思います。なお低域でも

50Hzで7Wの出力が得られました。




 OPTを 特製15W型 に変更

 ARITOさんから6V6版QuadUに合わせて特別に巻いたOPTを分けて頂きましたので、本機

に換装して特性を採ってみました。

 トランスの仕様としては、出力容量15W、

1次インピーダンス8kΩ、KNF巻き線16

Ω、ラップジョイント・ハイライトコアという

6V6に適した仕様になっています。

 大きさは上記の春日製15W型と同じなので

シャーシ上にもぴったり収まりました。しかし

春日のOPTより低域が伸びているので低域の

スタッガ比を変更しました。


 さらに高域特性も変るので高域補正も改めて検討する事にしました。まずはいくつか容量を変えながら

方形波応答を観測して見ました。結果的には上記のチョロQ改5版の場合と同じになったのですが、補正

無しの波形もよく似ていたので、必然の結果なのかも知れません。例によって微分補正だけでも良いので

しょうが、念の為に積分補正も軽く掛けて最終特性としました。



 次に周波数特性を見ると、改5版よりも高域のピークが幾分低いので、こちらの方がOPT自体の高域

特性はよく伸びているようです。春日のようにさらに上まで伸ばせば、補正無しでもピークを生じないの

ですが、今度は低域がまるでダメとなるので難しい物です。低域でやや落ちているのは段間の低域カット

オフをOPTより上に持って来た為で、このCの値はAyumiさんのQUと同じ0.022μFです。



 さらに周波数別のクリップポイントをグラフにして見ました。歪率を測った訳ではなくオシロの画面を

目視した数値ですが、それぞれのトランスのおよその実力は分かると思います。チョロQ改5版も5W型

にもかかわらず健闘していると思ったのですが、15W型の6V6用OPTと比べると一目瞭然で、特に

低域端ではコアボリュームの差がはっきりと表れています。なお中域での出力の差は1次インピーダンス

の違いに因るものでしょう。




 最後に歪率特性を採って見ました。春日のOPT搭載時と比べると10kHzの特性はやや悪いものの

これはQuad型位相反転回路の特徴ともいうものでしょう。それよりも懸案だった100Hzの特性が

クリップ付近まで低歪を維持し、そのクリップレベルも1kHzとほぼ同じ10.1Wでした。


 諸 特 性

 どの曲線もクリップの手前で

歪率の上昇がやや穏やかになっ

て、このOPTが出力管の動作

と上手く合っている事を覗わせ

ます。さらに球を選別して測り

直せば、もう少し揃ったグラフ

になると思いますが、そこまで

する必要はないでしょう。



無歪出力10.6W THD 1.1%

NFB 約14dB + KNF

KNF 約3.8dB

DF=7.1 on-off法1kHz 1V

利得 23.1dB(14.3倍) 1kHz





 電源トランスを ISO PH−185 に変更


 6V6GTでさらに出力アップを目指す為には、電源電圧をもう少し上げたいですし、容量的にも本機

で使っていた春日のPTでは目一杯なので、一回り大型の電源トランスISOのPH−185に載せ替え

て、再度特性を採ってみました。


 もともとこのシャーシの大きさは、当初から

ある程度の電源トランスでも載せ替えが可能な

ように、余裕のある大きさのを選んでいますの

で、載せ替え後のシャーシ上の視覚バランスも

この方が好ましく思えますし、何より電源電圧

を350V程度まで上げられるので、課題だっ

た最大出力も、14W近い出力を得る事が出来

ました。


 回路の変更としては、PT周りの配線を変更した他に、電源電圧が上がったので、それに応じて出力段

のカソード抵抗を増やしただけで、最小限の回路変更しかしていません。





 気になる歪率特性ですが、クリップレベル13.5W/1kHzが得られました。しかしプレート損失を

考慮してアイドリング電流を絞っているので、より深いAB級になってしまった為か歪率曲線が上下して

やや見苦しい特性になってしまいました。このような特性だと音的にもあまり良い印象がないのですが、

この6V6GTに限っては低電圧大電流動作だと寝ぼけた音しか出ないという声が多く、同様に低電圧大

電流動作となる全段差動アンプとして使った場合でも、あまり良い評価は得られないようです。


 諸 特 性


 低域の特性が良くないのは、 

動作電圧があがった為に、DC 

バランスが崩れてしまったので 

はないかと思います。

 ただ他の曲線に較べればとい 

う事で、数値そのものが悪い訳 

ではないので、あまり気にする 

必要は無いでしょう。




無歪出力 13.5W/1kHz 

その地点での歪率 THD 0.96% 


 その他は変わらずなので省略