UKを知ろう


テロの悲劇を越えて


ブレア首相の提案で、北アイルランド問題はプロテスタント、カトリック双方が
和平に合意して、住民投票・地方議会発足へと進んできた。
プロテスタントのアルスター統一党のトリンブル党首を首席大臣に、地方自治へ
一歩を踏み出したばかりであった。

しかしながら、8月15日午後3時すぎ、小さな町オマーの中心部で、大爆発が
起き、28人死亡、約220人負傷と報道された。
30年の紛争の歴史で、最大の被害である。
爆発物を仕掛けたのは、予告した裁判所ではなく、市民が避難誘導されていた、
数百メートル離れた商店街であった。
買物で賑わう市民の中には妊婦も少年少女もいた。プロテスタントもカトリック
もいた。



何故テロリストは、今まで紛争もなくプロテスタントもカトリックも仲良く暮ら
していたこの小さな町を狙ったのか?
何故予告した場所でなく、誘導されている場所へ仕掛けたのか?
何故このような強力な爆薬を使ったのか?
何故彼らは和平を嫌うのか?

今回のテロはIRA(アイルランド共和軍と名乗るカトリック過激派)から分離した
「真のIRA」という一派のようであるが、いくらアイルランド共和国への統一を標
榜しても、大勢が和平へ向かう今、その暴挙には内外世論の支持は得られまい。
アイルランド共和国も迷惑に思うのではなかろうか。

彼らが現段階でテロにより獲得できるのは、和平でも、統一でもなく、被害者の
悲しみとテロへの反感だけである。
ブレア首相は「信じがたい残忍な行為。この恐るべき行為を正義の下に裁くため
全力を尽くす」と決意を表明した。

「真のIRA」は、事件後市民に多数の犠牲者を出したことを謝罪し、停戦を表明し
たとのこである。
しかし亡くなった方々の尊い命は帰ってこない。

23日の朝日新聞は、現地22日、もう一つの過激なカトリック組織「アイルラン
ド国民解放軍(INLA)も完全停戦を声明したと報じている。

また9月3日北アイルランドを訪れたクリントン米大統領は、ベルファストの市民
の前で、

「あなたがたの平和を求める意志こそが、この希望の時をもたらした。これを逃し
てはならない。・・・現代社会で人々はなお、人種や種族、宗教の違いを理由に憎
みあっている。今後唯一問題となる分断線は、平和を擁護する者と、それを破壊す
る者の間にしかないのだ」

と強調したと、新聞は報道している。

聖職者は自派の拡大のためにはテロも容認していたのであろうか?
カトリックの聖職者は「真のIRA」なる過激派にテロを止めさせる力はなかったの
だろうか?

地元ではクリントン大統領の訪問を機に、和平の協議が前進するとみられている。
オマーの悲劇を転じて、和平となせるか。正念場であろう。

それにしてもプロテスタントもカトリックも、和平に宗教関係者の影響力が薄いよ
うに見える。
今こそ、聖職者に一歩も二歩も前に踏み出して貰いたいと感じるのは、私だけであ
ろうか。


UKを知ろう(目次)へ戻る

ホームページへ戻る