晴耕庵の談話室

NO.69



標題:英連邦について

QUESTION

2002/2/19

ロンドン憶良様

すみませんが、英連邦の正確な定義を教えていただけませんでし
ょうか?
                          K.I.


ANSWER

2002/2/19

K.I.さん

メール拝見しました。

英連邦というとき、第2次大戦前と大戦後で性格が異なりますので
分けて説明した方がわかりやすいと思います。

1 第2次戦前の英連邦 (British Commonwealth of Nations)

 第1次世界大戦までは、英国と植民地の支配・被支配の関係で
大英帝国が形成されていました。しかしその後1931年のウェスト
ミンスター憲章によって、
『英国王に対する共通の忠誠によって結ばれた、それぞれが主権
をもつ対等な独立国家の自由な連合体』
として、英連邦の性格が規定されました。

しかし、ウェストミンスター憲章によって自治領として認められたのは
カナダやオーストラリア、ニュージランドなどの少数の白人国家であ
り、帝国的要素はなお残っていました。

2 第2次戦後の英連邦 (Commonwealth of Nations)

第2次大戦によって多くの植民地が独立しました。また英国王を宗主
とするカナダやオーストラリアなどの国も独立国家としての意識が高
まりました。

1949年開催された連邦首相会議で、
『英国王に対する忠誠の誓いは必ずしも必要ではなくなり、多人
種共同体』
として、正式名称は単に Commonwealth of Nations となりました。

連邦構成諸国は,きわめて緩やかに連合し、共通の外交政策を持
たないことになっています。
(しかしコモンウェルス外相会議で意見交換と決議や実行をしている
事実は、『UKを知ろう』「石の家ジンバブエウェの混迷」で紹介してい
ますので参照ください)

連邦内では英語が共通語とされ,法律・教育などの社会制度の面
でイギリス流の方式が広く行われています。
このため連邦首脳会議をはじめ経済、金融、軍事技術、科学、教育
など多くの分野で協力関係が維持されています。

経済面では、特恵関税制度で経済ブロックが形成されています。
連邦におけるUK、カナダ、オーストラリア等の大国が発展途上の
コモンウェルス諸国に対する資本投下や技術開発援助は、なお重要
性を失なっていません。また連邦諸国の国民は連邦市民権を有しま
す。

だからこそ戦後ごく少数の英連邦加盟諸国が、いまや53ヶ国にまで
増加しています。(英国ともで54ヶ国)
その地域別および政治形態別一覧表をご覧ください。かっての植民
地が独立した後、次々と参加していることがわかります。

英国としては、民主主義政治の推進、経済の発展、国際理解の推進
を基本方針に英連邦諸国の連帯と支援を深めています。

日本では「第2次大戦後,連邦諸国の間には連邦外の国々との結び
つきを求める傾向が強くなった。また73年にイギリスがヨーロッパ
共同体(EC)に加入して以来、連邦経済の中心としてのイギリスの性
格は、いっそう弱まってきている。」(平凡社世界大百科事典)という
見方が通説のようです。

しかし、私は現実の動きを見ると、「黄昏でない英連邦の絆」と反論し、
HPで英連邦における王室外交や、特にブレア首相の活動などを紹
介しています。

英国はEU、英連邦、NATOなどの関係を適切に使い分け、世界の
諸国と多方面外交を展開していると思います。

なお、英国の海外領土は14あります。これらの国が独立するかどう
かはそれぞれの自主判断にゆだねています。将来、これらの国々も、
自主独立した後は英連邦に加盟し、そのメリットを享受するのではな
いかと私は推測します。

ご判断は皆さんにお任せし、今後も事実の報道を心がけます。

                      ロンドン憶良
英連邦 54ヶ国 一覧表
                     2002年2月27日現在

地域   女王が国家元首の国  大統領制共和国  独自の君主国家

欧州    英国           マルタ         

アジア   オーストラリア     バングラデシュ  ブルネイ(サルタン)
大洋州   ニュージーランド   キプロス      マレーシア
       パプア・ニューギニア フィージー     トンガ
       ソロモン諸島      インド        西サモア
       ツバル          キリバス
                     モルディブ
                     ナウル
                     パキスタン
                     シンガポール
                     スリランカ
                     バヌアツ

アフリカ                ボツワナ      レソト
                     カメルーン     スワジランド
                     ガンビア
                     ガーナ
                     ケニア
                     マラウイ
                     モーリシャス
                     モザンビーク
                     ナミビア
                     ナイジェリア
                     セーシェル
                     シエラレオネ
                     南アフリカ
                     タンザニア
                     ウガンダ
                     ザンビア
                     ジンバブウェ

北米   カナダ
中米   アンティグア・バーブーダ
      バハマ
      バルバドス         ドミニカ
      ベリーズ          ガイアナ
      グレナダ          トリニダード・トバゴ
      ジャマイカ
      セントキッツ・ネビス
      セントルシア
      セントビンセント・グレナデーン

      16ヶ国            32ヶ国        6ヶ国  計54ヶ国

英国の海外領土 
アンギーラ、バミューダ、英領南極地域、英領インド洋地域、英領バージン諸島
ケイマン諸島、フォークランド諸島、ジブラルタル、モントセラット、ピトケアン諸島
南ジョージア・サンドイッチ諸島、セントヘレナ、セントヘレナ属領、タークス・カイ
コス諸島  計14



THANKS

2002/2/20


ロンドン憶良様

早速ありがとうございました。
私は仕事でマレーシアに駐在したときに、はじめて英連邦の存在
を知り、その影響力の大きさに驚きました。

今、東南アジアの事情を紹介する文章を書いているのですが、
英連邦について触れる箇所があるのですが、日本人には馴染みが
ないので注釈をつけようと思ったのです。

私は日本人は欧米ばかりに目が向いているように思っていました
が、欧米についても限られたことしか知らないのですね。

                         K.I.


黄昏でない英連邦の絆

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