晴耕庵の談話室

NO.56



POLITICAL CHAOS JOKE

2000/12/7

標題:英国人経綸問答(2)


ロンドン憶良様


出張やコンピューターの故障で返事が遅れましたが、京都旅行の話
を興味深く読ませていただきました。
小生も20代の頃勤務先の京都支店で2年間過ごした事があり第2の
故郷です。しかし、数年前久しぶりに訪れた時、新京都駅の醜悪さと、
バブルの後遺症で駐車場だらけになった街の惨状に言葉もありませ
んでした。またまた出羽の守になってしまいますが、古い町並みを頑
固に保存するヨーロッパとの余りの違いに情けなくなってしまいます。

ところで、英国人はかねてから、米国に対して優越感と劣等感がない
まぜになったambivalentな感情を抱いているようです。かつての植民
地が独立し、何時の間にか経済大国も、民主主義のお手本の地位も
取って代わられた事への複雑な思いがあるのでしょう。

そんな彼らにとって今回の大統領選は溜飲を下げる絶好の機会だっ
たようで、ロンドンのパブ辺りでは以下のような抱腹絶倒のジョークが
聞かれています。




『今回の大統領選の惨状に鑑み、米国は独立を放棄し、英連邦復帰を
決定、エリザベス女王を元首と仰ぐ事となった。

女王は直ちに選挙結果を裁定し、新大統領を任命した。以後米国国
歌はQueen save the President となり、常にGod save the 
Queen の後に奏されることとなる。

7月4日のindependence dayは廃止され、新たな建国記念日として
11月8日のindecision day が設けられた。』



                    英国出羽の守ことSYin ロンドン



THANKS

2000/12/8


英国出羽殿

京都でもお過ごしでしたか。
京都駅周辺はもう出鱈目ですね。もともとはあのローソクのようなタワー
の建築を京都人が認めたところに堕落のスタートがありそうです。
駅を建て替えるにしても、せめて外観は豪壮な瓦屋根と優雅な唐風の
正面玄関にしてほしかったですね。

大体日本の建築設計家がやたら珍奇なデザインにこだわり、景観とい
う大自然の背景にマッチしない箱を作るのには困ります。それに迎合す
る文化人や、鈍感な市民というか日本国民に落胆しています。
欧州の各地が戦火で瓦礫になっても、再び戦前の町並みに復元させ
た市民たちのレベルにはなかなか及びませんね。

(20世紀の日本人はGDPはともかく国民の美意識は三流かと慨嘆しま
す。江戸時代の城下町の士族屋敷や商家の町並みの方が立派です。
最近、ノーブレス・オブリージの問題や景観破壊を含め、日本人の品
格下落の根元は明治維新にあるかと感じています)

観光シーズンというのに閑静な枳殻邸に一同を案内して喜ばれました
が、茂みの向こうに、にょきにょきとマンションが建っており、がっくりし
ました。景観は国民のものなのに戦後はやたら私権(という蓄財主義)
を尊重しすぎますね。

というわけで新しい京都駅にはまだ足は踏み入れていません。
(八条口から構内に出入りしただけです)


ところで「抱腹絶倒のジョーク」拝見しました。

"indecision day"とはいかにも皮肉とユーモアの好きな英国人らしいで
すね。”indecision ”を手許のオックスフォード辞典で見ますと
”the state of being unable to decide"とあります。
"the state "を THE UNITED STATES まで懸けているのでしょう。
恐れ入りやの鬼子母神ですね。
それにしても、20世紀は帝政ロシヤが転覆し、さらにソ連がずっこけ、
ドイツも英国もドカンドカンと殺し合い、米国は調子に乗ってベトナム
まで押しかけ敗北、若者を麻薬に染めました。

人民民主主義を標榜する国々も、一皮剥けばトップの権勢欲。デモ
クラシーと叫べばなんとなく明るい印象を与えるけれども、
”でも昏(くら)し”といえましょう。
共和制は堕落すれば専制に劣りますね。
かくして20世紀にファッシズムが台頭してきたように「英雄待望論」が、
21世紀にどこかの国でも起こるやも知れません。

先日昔の仲間の勉強会(27名参加)で、”ホームページ制作過程で
学んだ、歴史に見る「イングランドの植民地主義とその清算」”と題し
て、私見を発表しました。
日本のジャーナリズムが見落としている、ブリティシュ・アイリッシュ協
議会や、英連邦の動きなど、やはり英国王室と政府は興味深い動き
をしますね。

クリントン大統領の「センチメンタル・ジャーニー」ではないであろう
北アイルランド訪問予定にもふれておきました。

ではまた、面白い話題を期待しています。

2000.12.8  開戦記念日         ロンドン憶良



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