晴耕庵の談話室

NO.54



POLITICAL CHAOS

2000/11/25

標題:英国人経綸問答


ロンドン憶良様


英国出羽の守ことSYです。
ロンドンに着任して3年近く経つと、様々な出来事を英国人の目
でみている自分に気がついて唖然とすることがあります。
夏のオリンピックで英国チームは金メダル11個、メダル総数28個
という数十年振りの成果を挙げました。
日本では殆ど話題にならない、ボートや射撃、ヨットといった競技
が中心でしたが、いつしかテレビにかじりついて英国チームを応
援していたのには我ながら苦笑したものです。
そんな目で日本の政局をみていると何とも救いようのない気分に
おちいる今日この頃です。という訳でいつもながらの駄文をお届
けします。


             英国人経綸問答

日本で自民党の内紛が話題になっていた頃の話である。この
季節の倫敦特有の暗い雨模様の昼下がり、ある会員制倶楽部
のロビーでお茶を飲んでいたら、背中合わせに座っている英国
紳士然とした2人の男性の会話が耳に入ってきた。

例によって当り障りのない天候への不満から始まったが、そのう
ちに1人が手にしている新聞の記事を肴に外国の悪口を言い出
したので思わず聞き耳を立ててしまう。

「全く、あの国の政治の混乱もいい加減にして欲しいですな。」
「仰せの通り、議会制民主主義といっても歴史が浅いから何とも
危なっかしくて見ていられない。」
「もともと我々と戦争したお陰で民主主義に目覚めた訳ですから。
大体、憲法で人民主権を謳っていながら元首の息子が元首にな
るというのもおかしなものだ。」
「わが国の場合、人民主権などという美しい言葉のまやかしをクロ
ムウエルの時代に思い知らされているから、今でも国名は連合王
国、王もしくは女王が国民を統治し給うという美しい伝統を保持し
ている。」
「勿論それは建前で、君主は象徴に過ぎず民主主義と立派に両
立する。こういう大人の知恵は彼らには望むべくもないでしょう。」
「お陰でわが大英帝国はフランス革命の馬鹿騒ぎから逃れること
もできた。エドモンド・バークのような先達はバスティーユの頃から
ロベスピエールの暴虐も、ナポレオンの変節も全てお見通しだっ
た訳だ。」

「そもそもナポレオンを倒したのはわが帝国軍隊ですから。フラン
ス人は未だに恨みを持っていてユーロスターの英国側の駅名が
ウオータールーというのに文句をつけたりしている。ただ、ナポレ
オンの呪縛から自由であることがヨーロッパの一部という実感が薄
い一つの理由かも知れません。」

「ユーロに対する国民感情にその辺が影響しているかも知れんな。
その代わりわが国の場合は未だにヘンリー8世の呪縛から逃れて
いない。エドモンド・バークを生んだアイルランドとも別の国になっ
てしまった。」

「それはさておきあの国の話に戻ると、最高権力者を巡る争いは
滑稽としか言いようがない。それこそ機会均等を標榜しながら、争
っているのは皆2世政治家ではないですか。」

「その点もわが国は利口だ。できの悪い2世には世襲の名誉職的
な議席を上院に与えて祭り上げている。テレビの国会中継でキング
ス・イングリッシュの見本みたいな口調で演説して自己満足している
分には害がないからね。」
「2世でも優秀な場合はチャーチルのように親と別の選挙区で勝負
していますからね。残念ながら労働党の青二才首相はその辺の機
微が分からずにこの賢明な制度を廃止してしまうらしいですが・・・」

「それにしてもあの国はよほどわが英国を手本にしたがっているよう
だ。レディー・サッチャーにあやかって初の女性指導者誕生という
声が高まっているらしい。」
「かつての最高権力者の身内の女性が国会議員になって国民的
な人気を集めているという話ですか。その最高権力者というのは毀
誉褒貶のあった人物でしたね」

「確かに政治家としては有能だがスキャンダルも多かったようだ。
しかし、誰が指導者になってもあの国の経済運営は大変だろう。」
「一時は世界経済の牽引車、No.1などと自負していたけど、今や
バブルが崩壊して厳しい状況ですインターネット長者などと持ち
上げられていた若手経営者も今や見る影もないようです。」

「何といってもあの経常収支の不均衡は世界経済の最大の撹乱
要因だ。その裏には理解不能な個人貯蓄率の問題がある。高齢
化する先進国としては信じられない数字だ。」

―――筆者は特に愛国心が強い訳でもないが、さすがにここまで
言われると我慢ならなくなってきた。敢然と立ち上がり、嫌味の一つ
も返すべく振り向いたら、彼等の読んでいる新聞記事の見出しが目
に入った。

米国大統領選挙の記事であった。



REFRESHMENT

2000/11/26

英国出羽の守殿

大変ウィットに富んだご寄稿拝見。ありがとうございました。早速
掲載致します。日本にもアメリカにもがっくりしますね。デモクラシ
ーって一体何なのといいたくなります。

24.25日と京都に遊んできました。

九州の臼杵という小さな城下町の高校の同期会を5年ごとに開催
していますが、全員が65の老人?になったので全国集会を関東
九州の中間京都で開催したものです。男女56名(内2/3は女性)が
集まりました。両手に花ですが、確実に女性優位が進んでいます。

京都で学んだ私が世話人に指名されましたが、なにしろ希望時期
が紅葉と結婚のハイシーズンなので春先から動きました。
しかしインターネット時代ですね。各地世話人とはメールとファック
スとでやりとり、自宅印刷でパンフレット作成、ホテルとの交渉や
交通手段価格の検索、予約などSOHOのテクニックは遊びにも活
用しました。

大多数が高いお金をかけて遠距離から集まり宴会宿泊するので、
せめて安くて心に残る観光をと企画しました。

銀行時代の旧知が社長をしている駅近くのホテルを格安でリザー
ブ。料理ほかもろもろのサービス享受。
宴会に先立ち午後の散策から始め、全員をホテル近くの枳殻邸
渉成園庭園鑑賞に案内。(帰途東本願寺)

また翌日は団体割引普通電車でのどかに黄檗山万福寺へ。これ
また観光シーズンというのに静寂な禅寺の雰囲気を堪能してもら
いました。

鮎宗で名物の季節弁当(安くて旨い)を賞味。今は鮎はありませ
んが、うなぎのおこわがおいしいですね。
平等院はさすがに行列でした。

平安貴族好みの池庭回遊式ののびやかな名園渉成園。(詩仙堂
とは趣を変えた、石川丈山の作庭)
全山中国工人が建築した隠元ゆかりの凛とした風格の自力本願
の万福寺。(回廊まで建築物はすべて中国風の重要文化財)
来迎思想の仏像壁画に溢れている他力本願の鳳凰堂。
(宇治川の清流ともども世界遺産)
というエコノミカルかつ意義ある組み合わせにしました。
あとは集合時間までお抹茶や買い物などご随意にと、世話人も一
息のフリータイム。

欠席者の返信に、本人や家族の病気、老老介護などさまざまな
現代社会の実態も垣間見ました。5年先でなくもっと早くあつまろ
うよという気持ちもわかります。

かって1年住んだ宇治の広大な茶畑が、ものの見事に新興住宅
街に大変身しているのに驚きました。
(宇治のお茶の葉は何処で栽培しているのでしょうか?)

以上がのどかな洛南散策お喋り同期会でした。

2000.11.26        ロンドン憶良



世襲貴族議員を廃止した英国上院

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