晴耕庵の談話室

NO.29


HELP

99/4/2
標題:スコットランドに学ぶ北海道の経済再生と分権改革

現在、スコットランドの経済再生、分権改革をモデルに北海道の経済自立、
地方分権に関する番組を作っています。
日本でこのホームページを製作されていらっしゃるのだろうと思いますが、
ずいぶん、長い間、UKに滞在されていらっしゃったのだろうと推察いたして
おります。

私たちの番組づくりにご協力いただけますと助かります。
スコットランドに関する情報、特に現代史、地域経済政策に関する情報を
お持ちでしたら、お教えいただけますと、幸いです。

                                  K.S.


RESPONSE

K.S.様

メール拝見しました。過分のご褒詞ありがとうございました。

スコットランドの経済再生、分権改革をモデルに北海道の経済自立、
地方分権に関する番組を製作されているとのことですが、私はスコット
ランドに関する情報、特に現代史、地域経済政策に関する情報を特別
に持っているわけではありません。何かある度に、にわか勉強している
ものです。

UKは僅か4年半の滞在で、それも1970年代ですから相当古いものです。
銀行退職後の勤務先がUKの子会社を持っていましたのでその後何回か
訪れています。
3年前ビジネスの世界から足を洗いましたので、お役に立てそうな知識は
なく、ごめんなさい。

しかし、折角の機会ですから、もと銀行員としての私見を申しあげます。
ご参考になれば望外の幸せです。

所見

北海道拓殖銀行の破綻はほとんど人災でしょう。
スコットランド銀行がバンク・オブ・イングランドと同様に同価値のスコット
ランド銀行券を発行しつづけて、国内で独立性を維持して、スコットランド
金融経済の中心にいるのと対照的なレベルの低さです。
北海道は金融の核を失ってしまいました。
北拓は都銀志向でなく北海道のスコットランド銀行的役割と地域志向を
意識すべきだったのでしょうが、残念です。

フランクに申し上げて、現在の北海道銀行や北洋銀行では力不足でしょう。
しかし他に選択肢がない以上、北海道の皆さんが、中央の補助金に頼らず
両銀行を盛り上げ、核とするほかはないように思います。

スコットランドはイングランドに対する抵抗の歴史(独立の主張)です。
スコットランドの経済再生、分権改革をモデルにするということは、できる限り
のことは自主独立でやるということです。道民に果たしてそれだけの自主意
識があるのでしょうか。

北海道の郵貯の伸びはどうでしょうか。郵貯の残高はいかほどでしょうか。
もし北海道の郵貯が銀行預金以上にのびているようでしたら経済再生、
分権改革は絵に描いた餅でしょう。
郵貯は政府の心臓で道民の心臓ではありません。
金融は血流です。弱い心臓の身体で経済再生、分権改革は本当に大変です。
道民自らが北海道の心臓を強くする方法を考える必要がありそうです。

経済再生の一方策として道民全員に配当優先株(議決権なし)や普通株の
特別支援超大型増資を求め、道民がこれに応えるような燃え方でないと金融
の心臓は再生強化されないでしょう。
道民は郵貯を下ろしてでも増資に応じ、かつ株主総会に参画、株主として経
営を監視すれば、まず血流は回復し、道民の参加意識も高まるでしょう。
分権改革を求めるならばそれは道民の自己責任の範疇でもあります。

お金は政府の郵貯へ預け、地方の経済再生など論じても笑止千万ですね。
自分たちのお金で自分たちの地域を起こす意識改革こそ最優先でしょう。

スコットランド銀行はスコッツの中央銀行なのです。
北拓は政府が作ったものですが、この機会に道民による道民の金の道民
銀行を育ててはいかがでしょうか。

リタイアした古典的銀行員の戯言とお受け取りください。

                        ロンドン憶良


THANKS


ロンドン憶良様

示唆に富むご指摘ありがとうございました。

>銀行退職後の勤務先がUKの子会社を持っていましたので
>その後何回か訪れています。
>3年前ビジネスの世界から足を洗いましたので、お役に立てそうな知識
>はなく、ごめんなさい。

ということは、お若くはないのでしょうけれども、インターネットでホームペ
ージを開設できるほどのコンピュータの能力、驚かされます。

>しかし、折角の機会ですから、もと銀行員としての私見を
>申しあげます。ご参考になれば望外の幸せです。

「所見」と題されたメールの内容は、非常に参考になりました。
私たちは普段取材という形でしか、金融関係者とお付き合いすることが
できません。
時には内部にいらっしゃる方たちよりも内部の情報を得ることがありますが、
一方、何が行われているのか、本当のところはわかりません。
私も「たくぎん」の問題は明らかな人災だろうと思っています。
その犯人も5人ぐらいに絞られるだろうと思います。
(残念ながら日本の法律では既に時効が成立していますが…。)
ご指摘の通り、北洋銀行では役不足どころか、多分、「新規事業を育てるこ
とがバンカーの仕事」とは全く思っていらっしゃらないと思います。

>北拓は都銀志向でなく北海道のスコットランド銀行的役割
>と地域志向を意識すべきだったのでしょうが、残念です。

私もスコットランドに行って、そう思いました。
ロイヤル・バンク・オブ・スコットランドが大手スーパーマーケットテスコと提携し
てテスコ名で、テスコの店頭でリテール業務を行っているのを見ました。
ロンドンの顧客は誰もロイヤル・バンク・オブ・スコットランドがオペレーションを
しているとは思っていないようです。
田舎銀行の顔をテスコというブランドで隠しつつ、顧客窓口を広げ、したたか
に生き延びています。
「どうして拓銀にこれができなかったのか…」と思いました。

>スコットランドはイングランドに対する抵抗の歴史(独立の主張)です。
>スコットランドの経済再生、分権改革をモデルにするということは、できる限りの
ことは自主独立でやるということです。
>道民に果たしてそれだけの自主意識があるのでしょうか。

私は「ほとんどない」と認識しています。
ですから、今回の番組を企画しました。
世界には「同じ500万の人口でここまでやっているところがある。」ということを紹
介するとともに
「自主・自立」が知事選挙の公約となっていますが、「口で言うほど簡単ではな
い。」という事をスコットランドの実例で示そうという発想です。

>北海道の郵貯の伸びはどうでしょうか。・・・・・
・・・・・・・・・・・
>お金は政府の郵貯へ預け、地方の経済再生など論じても笑止
>千万ですね。自分たちのお金で自分たちの地域を起こす意識
>改革こそ最優先でしょう。

非常に示唆に富むご指摘です。ありがとうございます。新しい視点を持つ
ことができました。
郵貯に関しては、今は伸びていないはずですが、たくぎんが潰れる前には
伸びていました。
ご想像の通り、たくぎんに関しては、倒れる寸前に静かなとりつけが進行し
ていました。
道民の多くがたくぎんに預けていたお金を下ろして、郵貯に持っていった
のです。多くの道民が金融の機能を認識していません。
地元の銀行にお金を預けるということがどういうことなのか、その意味を理
解していません。

北海道に「ビジネスマンが欲しい。」と思います。

                                         K.S.

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