聖パトリックの生涯

聖職者への道


パトリック(ラテン名パトリキュウス)は西暦385年頃、ウェールズ
の西海岸で生まれた。
父カルポニウスはカトリックの助祭であった。

パトリックが16歳の少年の時、運命は激変した。
村を襲ったアイルランドの海賊にさらわれ、数千人のウェール
ズ人たちとアイルランドに連行されたのであった。
彼は酋長に奴隷として売られ、羊飼いの仕事を命じられた。



パトリックはこの運命を呪うことなく受け容れた。
なぜなら、自分たちは今まで神の戒律を守らなかったし、魂の
救済について警告して下さっていた聖職者たちの言に耳を傾
けてこなかったから、当然の報いであると考えたのである。

奴隷として羊飼いの重労働に従事していた6年の間に、宗教
心のなかった少年は、神を信ずる青年に変身していた。
羊と野山に歩く間も、眠りの中でも、常に神に祈りを捧げた。
信仰心は年毎に深くなっていった。

6年後のある夜、夢の中で神の声を聞いた。
「奴隷としての仕事はもうよい。ここを直ちに去り、200マイル
歩けば船が待っている。その船に乗りガリア(フランス)へ行け」
パトリックはこの啓示に従い、脱走した。



その後ガリアから帰国したパトリックに、家族たちは吃驚して喜
んだ。
「パトリック!生きていたのか!もうどこへも行かないでおくれ!」

しかしある夜パトリックは、不思議な夢を見た。
夢に現れたヴィクターと名乗る男は、沢山の手紙の束を抱えて
いた。彼がパトリックに手渡した手紙の書き出しは、「アイルラン
ド人の声」とあった。
その手紙を読み始めようとした時、パトリックは群集の叫び声を
聞いた。
「お願いです。どうかもう一度アイルランドへ来て、私たちと共に
歩いてください」



パトリックは吃驚して目が醒めた。
「神よ、私に異教徒の彼らの叫びを届けて頂き、今後私の進む
道を示してくださり、ありがとうございます」
と感謝の祈りを捧げた。

当時アイルランド人はまだキリスト教徒ではなく、自然崇拝的な
ドロイト教を信じていた。
奴隷として苦労したその異教徒の国へ、布教に行くというパトリ
ックを、家族は必死で押しとめたが、パトリックの決心は堅かっ
た。

パトリックは布教に従事するために、聖職者としての教育を受け
るべく、再びガリア(フランス)に渡った。
彼はレランの修道院で学んだ。
417年、32歳のパトリックは助祭に任じられた。

(続く)

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