瞼のマレークラブ
(前頁より)



かくしてショー・タイムが済むと、踊り子たちは指名を受けて客のテー
ブルに座り、次のショーまで贔屓客の相手をするホステスに早変わり
する。
多分錚々たる地位と見える紳士や金満家と思われる風貌の男たちが、
彼女たちを独占している。とてもとても憶良氏などの出る幕ではない。

プロヒューモ大臣もこのようにキーラー嬢と談笑しつつグラスを傾け、
ショーがはねた後、どこかで褥を共にしたのかと空想しながら飲むス
コッチも粋なものだ。
ひょっとして、隣席の紳士たちも、したたかな某国スパイかもしれない。

この美貌の踊り子嬢に近づいたのは、ソ連大使館の某駐在武官であ
った。駐在武官という方々は、大体がダンディであり、語学に達者で情
報収集のヴェテランである。
キーラー嬢は英ソお二人の馴染み客と仲良しになった。





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