第3章 野生のエドリック

前頁より



 エドリック卿は妖精の女王クリスティーヌの仲介で、隣国ウェールズ
の二人の王子、ブレディンとリワロンに会った。

 まだウェールズはノルマンに侵略されてはいなかったが、時間の問
題であった。
 エドリックは二人の王子に次のように提案した。

「ヘレフォード州はまだノルマンの支配が手薄である。今の内に挙兵
し、ノルマンの基地を先手を打って攻撃しようと考えている。その際に
は是非とも助勢を願いたい」
「分かった。出来る限り兵を出そう」
と、三者は合意した。

「イースト・アングリアに潜んでいるリンカーン州の名剣士ヘリワード卿
にも、蜂起を促す書状を出してはいかがでしょうか」
と、妖精の女王クリスティーヌが提案した。

「ヘリワード卿?」
「ご存知ありませんか、素晴らしい英傑ですよ」
クリスティーヌは、名剣士ヘリワード卿の人物やこれまでの経歴を3人
に説明した。(彼女の説明は読者には後日紹介しよう)
3人はクリスティーヌの情報に舌を巻き、畏怖すら感じた。

「ケント州でもそのうち火の手があがるでしょう」
「エッ、ケントで?どうしてあなたが遠くのことが分かるのですか」
「ホホホ、それは秘密ですよ」
 ケルトの妖精の女王クリスティーヌの配下は、全土に反乱蜂起の手を 回していた。

 1067年秋、森の騎士、豪胆な野生のエドリック卿は遂に挙兵した。
ウェールズとの連合軍はヘレフォード州内のノルマンの砦を激しく攻撃
した。



 ヘレフォード州の統治は、ウィリアム王の股肱の臣、フィッツ・オズバ
ーン隊長であったが、当時オズバーン卿は、反乱の兆しの高いイング
ランド東南部に軍団の主力を移動させていた。
 残っていた留守部隊は、果敢に防御した。

 ヘレフォード州だけではなかった。
とりわけサクソン系の郷士たちは、血の気が多かった。武装蜂起に消
極的な親ノルマン派の貴族の何人かが、家臣に殺害されるという事件
もあった。

 ケント州でも反乱が起こった。
 反乱を伝える早馬はロンドンへ、そしてノルマンディーのウィリアム王
の許へと乗り継がれた。



第4章 ケントの反乱

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