ロンドン憶良の世界管見


ロンドン憶良のホリエモン資本論考(5)


――呉越同舟、IT通信と報道の業務提携なるか―




7 呉越同舟

(1)和解は妥当な選択か?
    ――両者程度の差はあれ、まずまず安堵ではないか――

 ホリエモン氏には想定外のソフトバンク・インベストメント(SBI)の北尾社長
が登場し、前回憶良氏は、岡目八目、水面下の交渉で、両者は合意の方向
へ行くのではないかと推定しました。
4月19日の各紙は、一斉に「フジテレビとライブドアの和解」を報道しました。



和解の内容は次の三点でした。
@ ライブドア側は、保有した約50%のニッポン放送株式全株をフジテレビ
  に、1株1630円(取得価格)で売却する。
A フジテレビは、ライブドアの第三者割り当て増資440億円を引き受けて
  ライブドアに資本参加する。
B 放送とネットの相乗効果を模索するため「業務提携推進委員会」を設置
  する。

まずライブドアの立場からは、意図したニッポン放送の取得によるフジ・サン
ケイグループ支配はできなかったが、保有株式を売却損なしに資金化でき、
収束できたメリットは、大きい。
さらにフレッシュ・マネーとして返済不要の440億円を入手し、合計1,473
億円の資金を入手しました。

放送とネットの相乗効果を模索するため「業務提携推進委員会」を設置して
も、フジ側は非協力で、実質稼動しないと否定的な見方をする識者がいます。
彼らは最初からライブドアに嫌悪感を表明していた人が多いようです。

ホリエモン氏ほどの人物が「業務提携推進委員会」で何も得ないことはない
と思います。あまりにもフジ側が非協力であれば、ホリエモン氏は1,473億
円を使って、再びフジ側に新たな仕掛けができるでしょう。
しかし、彼はそのような愚策をとらず、じわじわと何か実現するでしょう。

フジテレビも、必ずしも負けではありません。なぜなら日本テレビ株約50%
を入手して、完全に子会社化できたからです。

一部の評論家は、TOB価格よりも高い1630円で買い取らされたのはフジ
テレビの負けだといいますが、北尾社長の言うように1630円でも買い取れ
たのは成功であり、高くない買い物だったというのが正解でしょう。
もともと市場価格より低いTOB価格を設定したフジテレビ経営陣の政策の失
敗が、どたばた劇の一因でしたから、フジテレビおよびニッポン放送も安堵
したでしょう。

フジテレビは440億円の新規出資を行い、ライブドアの第2位の大株主に
なりました。取締役も派遣するそうですから、ライブドアはフジ・サンケイグ
ループの関係企業となりました。IT企業立ち上げるコストを考えれば、安い
買い物といえましょう。

(2)運用できる金額は?
――1,200億円は運用可能ではないか――

@保有する株式売却により1,033億円
A新株発行           440億円
この巨額の資金をどう運用するか、ライブドアの今後が注目されます。

ただし@の株式売却には、買収資金調達のコストがかかっていますから、
1,033億円の全額が使える資金ではありません。

当初リーマン・ブラザースから800億円の転換社債発行により資金調達
をして買収工作に入ったと伝えられています。
転換社債は、その保有者(投資家)がライブドアの株式に転換していなけ
れば社債ですから、ある一定期間後、すなわち満期にはライブドアは償還
しなければなりません。それまでは使える資金です。

リーマン・ブラザースが、800億円相当額の転換社債を、すでに株式に
転換し、市場で売却し相当額の利益を得たと伝えられています。
この場合には資本金になっていますので、ライブドアとしてはフジテレビへ
の増資と同様に、自由に使える資金です。
(ただし、ライブドアには配当負担が増え、また株式数の増加により、株価
は下がるというマイナス面があります)

リーマン・ブラザースからの調達以外に、200億円程度の外部調達をして
いると推測されます。これを一旦返済するとしても、ホリエモン氏は1200
億円程度を運用できると思います。

(3)若者に何を学ぶべきか?
――男社会の嫉妬や羨望は醜い。若者の覇気をつぶすな――

世間では、彼がこの資金を手にしたことにある種の嫉妬や羨望をもって、
棘のある批判をする人を見かけます。

しかし、戦時中あれだけ国民にうそを報道した新聞ラジオが、虚業でなく
実業だったのでしょうか。新聞ラジオも虚業の時期があったように思います。

ホリエモン氏を虚業家扱いするのは、桶狭間の奇襲をした信長を非武士
扱いするようなものではないでしょうか。

ホリエモン氏は経済戦争で合法的に奇襲をし、無防備のまあまあなあなあ
社会に警鐘を鳴らしました。
信長は闇雲に奇襲をしたのではありません。両名とも若く柔軟な頭と、外向
き思考がありました。

ホリエモン氏がプロ球団の設立に手を上げなければ、はたして古田選手ら
はあれだけ強気になれなかったでしょう。後出しじゃんけんの楽天に比す
れば、規模も小さい企業ですが、ホリエモン氏のライブドアは、日本の古い
体質に二つ風穴を開けたような気がします。

「事業の発展に害をなすものは、青年の失敗ではなく、老人の跋扈である」
(元住友総理事伊庭貞剛翁)

事業を現代の日本社会と置き換えてみると、至言ではないでしょうか。




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