UKを知ろう


インターネット投資で儲けたエリザベス女王


ノルマン・コンクェストの
「Domesday Book」(ドゥームズデイ・ブック)が機縁


「またまた憶良さん、何でもノルマンの征服に結び付け過ぎじゃ
ないの。
英国現王室の系図(Family Tree)では、始祖はウィリアム征服
王となっているけれど、女王が儲けたというインターネット関連
株とノルマン・コンクェストの関係を説明してよ」
というようなわけで、2000年4月7日のBBC NEWSの記事
を皆さんに紹介しよう。

見出しは「女王インターネット関連株で百万ポンド近い儲け」
(Queen nears dot.com million)
バッキンガム宮殿の極秘情報によると、女王はなかなか機敏
な投資家のようである。

今をときめくインターネット関連株は、証券市場に上場され暴
騰する銘柄がある反面、まっさかさまに暴落(nosedive)する銘
柄もある。
鼻の低い日本人は頭から落ちるが、英国人は自慢の鼻から
落ちるようだ。
Lastminute.com という銘柄は高い評価を受けていたところ、
nosediveしたという。Lastminute(土壇場)という名がいけなかっ
たのかもしれない。多くの大衆投資家が大損したという。

Joking apart 冗談はさておき、女王が投資をしたインターネット
株は「GETMAPPING.COM」。英国の航空写真を撮ってインタ
ーネットで誰にでも手軽に販売する商売という。
女王は昨年秋、この会社の株式を1.5%所有しており、投資し
た金額は100、000ポンド(約17百万円)であった。
ところが昨日市場に公開されると見る見るうちに暴騰して、あっ
という間に女王の持ち株の時価は970、000ポンドになった。
帳簿上では870、000ポンド(約1億5千万円)の儲けである。

「女王はどうしてGETMAPPING.COMを知ったのだろうか?」

実はこの会社は、女王のご先祖ウィリアム征服王がイングラン
ドを征服して統治20年にあたる1086年に作成した
「Domesday Book」の写真複製を申し出て許可を得ていた。

女王はこの会社に興味を示し、
「英国内の航空写真をインターネットで誰にでも売るというの
は面白いわね。私もちょっと株を持ってみようかしら」
と、10万ポンドを投資したらしい。
ご先祖の偉業が取り持つ縁で、女王はちゃっかり儲けられた。




Taking this good opportunity (このよい機会に)とばかりに、
英国中世史の研究では貴重な史料である「Domesday Book」
を概説しよう。

1066年、ノルマンディ公ウィリアムがハロルド王をヘイスティ
ングズの戦いで破り、イングランド王として戴冠したところまで
は、当HPのPart 1 「見よ,あの彗星を」でご承知と思う。

ウィリアム公の国内統一の戦いは、なお続き一段落するのに
20年を要した。(この続編は目下準備中である)
英邁なウィリアム公が行った大事業は検地であった。
配下のノルマン貴族や騎士に与えた荘園や、降伏したアング
ロサクソン貴族の所領の土地の広さや農地の状況、農民や農
奴の人数や犂(すき)の数、土地の所有・従属関係などを詳細
に、正確に調査したのである。
この調査に基づき課税の基準を定めたのである。

ウィリアム王は、この総合的な土地課税台帳を「Domesday
Book」と命名した。
もともと『Domesday』とは『最後の審判の日』という意味である。
つまり「この土地調査台帳は、それだけの権威があるものだ」
ということを、国民に知らしめたのである。

GETMAPPING社の4機の飛行機は、かってウィリアム王の配
下たちが測量した土地を、今上空からパチパチ写真にしてい
る。
GETMAPPING.COMの創業者である51歳の元海軍軍人は、
かくして株式公開で大富豪になったというわけである。

英国でもIT関連株は人気で、女王も結構ヴァイキングの末裔
らしく、財を増やされているようだ。


UKを知ろう(目次)へ戻る

ホームページへ戻る