UKを知ろう


歴史的和平近い北アイルランド

ブレア首相水面下の努力実る


昨1998年4月10日(金)は、キリストの復活を祝うイースター(復活祭)の
前日の、いわゆる「Good Friday」であった。
カトリックであれプロテスタントであれキリスト教徒がともに祝うこの日を
選んで、北アイルランドの和平の合意「Good Friday Agreement」
が調印された。

関係者多数の合意(The Agreement reached in the multi-party
negotiations)は、アメリカ民主党のジョージ・ミッチェル元上院議員(院内
総務)の仲介によるもので、英国政府およびアイルランド共和国政府も
参加している。

この合意による和平のプロセスで、6月に北アイルランド地方議会の選
挙が行われ議員は選任された。
投票の結果、IRAの政治組織であるシンフェイン党も議会の執行委員
会(地方内閣)の権利を得たが、IRAの武装解除が実施されていない
ことから、プロテスタント側が組閣に難色を示し、この一年半政治は暗
礁に乗り上げたままであった。

プロテスタント側のアルスター統一党のトリンブル党首は「IRAの武装
解除(decommissioning)が組閣・地方自治の前提」と主張するのに対し、
カトリック側は「武装解除してしまったら、後日どのような体制側の抑圧
にも対抗できないので組閣・地方自治が先」と、議論は平行線をたどっ
ていた。

ブレア首相は昨年6月地方議会組閣不成立の際に、「決して諦めては
いない。忍耐で実現を図る」(Never give up! Patience!)と発言し、水面下
の手配を着々進めていたようだ。

再びジョージ・ミッチェル元上院議員が調停役で動いた。
国際的な武装解除監視委員会の設置が提案され、アルスター統一党
のトリンブル党首も妥協し、シンフェイン党のアダムズ党首が合意、さら
にIRAも武装解除監視委員会に連絡役を指名し、武装解除に同意を
表明した。

トリンブル党首はアルスター統一党員に
「今、ミッチェル元上院議員の提案する国際的な武装解除監視委員会
の設置に”ノー”と言い、『Good Friday Agreement』を支持しなけれ
ば、北アイルランドには永久に武装解除も地方分権も行われないだろう。
"If we say no,there will be no decommissioning and no Stormont Govern-
ment(no devolution)"
勇気をもって”イェス”と言えば、北アイルランドの未来は、我々の掌中に
来るのだ」
と理解と協力を強く求めた。

英国のマンデルソン・北アイルランド担当相(Peter Mandelson)は
「今後も忍耐と理解を要するだろうが、この忍耐と理解こそ今日の結果を
もたらしたものである」
"It will take patience and understanding but those are the precise qualities
that have brought us where we are today"
と、和平プロセスの進展を歓迎した。



スコットランド、ウェールズの地方議会に続き、1999年内に北アイルランド
議会が成立すれば、ブレア首相は、中世イングランドがケルトを征服して
以来続けてきた中央集権政治の一部を地方に復権するという、文字通り
画期的(epoch-making)な政策を実現することになる。


北アイルランド和平合意は、20世紀の宗教戦争の終結だけではなく、中
世イングランドのアイルランド征服の清算への過程でもある。
21世紀には北アイルランドのアイルランド返還もありうるからである。
ブレア首相は表には出ていないが、アイルランド共和国アハーン首相と
難局の打開に、粘り強く努力していたことを見落としてはならない。
アメリカ、アイルランドを含めても、面子にとらわれず国内問題を解決する
ブレア首相の企画力・実行力を皆さんはどう評価しますか。

それにしても、日本は首相がころころ変わり、国家百年の大計を誰が考え
実行するのだろうか。
国民はきちんとした首相を選び、一つや二つ失敗しても、やや長期に国政
を委託すべきではなかろうか。
皆さんは、最近の日本の首相交代をどう思いますか。

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