UKを知ろう


聖パトリックの祝日と英国の気配り

3月17日はアイルランドの守護聖人パトリックの祝日(命日)である。
アイルランドの祭日のこの日は、アイルランド人はシャムロック(クローバー)
の葉を身につけて聖パトリックの祭日を祝う。
とりわけ米国のアイルランド人カトリック教徒が、グリーンの服を身にまとい、
行進する光景を,ニュースや映画で見た人は多いであろう。

紀元2000年ミレニアムの3月17日は、暗礁に乗り上げている北アイル
ランド和平問題解決のため、クリントン大統領が、関係当事者をワシントン
に呼び会談を持ったので注目したが、依然として具体的な進展は公表さ
れなかったようである。(あるいは進展中なのかもしれない)

しかし今年の聖パトリックの祝日に、英国王室と英国国教会がどういう行事
をしたか、3月19日のBBC NEWSの報道がちょっと面白いので紹介しよう。


1 英国皇太后アイルランド連隊にシャムロックの飾りを贈与

今夏100歳の誕生を迎えられる皇太后(女王の母君)は、アイルランド連隊
百周年記念の閲兵をはじめて市民に公開した。
アイルランド近衛兵は多くの市民や観光客の見守る中、バッキンガム宮殿
前のモールを行進し、皇太后の閲兵を受けた。
皇太后は一時健康を気遣われていたが、この日は春の日差しがさんさんと
注ぐ下で、スカイ・ブルーのお洋服に大きなシャムロック(アイルランド国花)
の花飾りを胸につけられ兵や市民に手を振られていた。

続いて式場はランカスター宮殿( LancasterHouse )の庭園に移り、皇太后
は戦没アイルランド兵の慰霊に花輪を供え、国内海外のアイルランド連隊
を代表した士官たちに、シャムロックの飾りを満載した籠を手渡した。
このシャムロックの飾りは、直ちに国内海外のアイルランド兵に配布され、
彼らは身に飾る。



この習慣は100年前から続いている。
ボーア戦争で勇敢に戦い多くの戦死者を出したのはアイルランド軍団であ
った。
この報道を受けたヴィクトリア女王は、勇敢なアイルランド連隊に感謝し、そ
の戦死者を傷み、以後3月17日の聖パトリックの祝日には、シャムロックの
飾りを帽子に飾るように指示された。
シャムロックの飾りを手渡される慣行を1901年に始めたのはエドワード七
世の后アレキサンドラ王妃である。その後二人の王女の後1965年から皇太
后が授与されている。

英国が参戦したいろいろな戦争には多くの植民地から徴兵され、前線に狩
り出されていた。
ボーア戦争にも当時の植民地アイルランドの兵が多数投入されていたので
ある。


2 カンタベリー大司教、北アイルランドを訪問

英国国教会(プロテスタント)の大本山であるカンタベリー大寺院のジョージ・
カレー大司教は、北アイルランドを訪問し、ベルファーストのセント.アン教
会で行われた聖パトリックを称える正餐式で、「北アイルランドの人々は、和
平が続くことを希求しつづけるであろう」と演説を行った。

大司教は「現在は政治的に不安定な状況であるけれども、これらは克服さ
れると確信している」
「過去30年余の間には、しばしば、暗黒の世界に陥り、もう誰も陽の差す日
は甦らないのではないかとさえ思われた。しかし、今は、たとえ空一面雲って
はいても、紛れもなく陽が差さんとしている」
「関係当事者全員の忍耐と勇気によって、全員に長期和平と公平がもたら
されることになろう」
"There have been times in the past 30 years when it seemed as though
darkness had fallen and no-one was sure whether daylight would return.
"Now, there is no doubt about the daylight, even if at the moment, it
has clouded over. "I am quite sure that the perseverance and courage
of all involved will see you through to a long-lasting peace and justice for all.

大司教は和平に楽観的な見方をしているものの、「政治的に分かれていて
も全キリスト教徒が神の教えに確信を持ってこそ、新しい希望がもたらされ、
新しい人生が約束されるであろう」と述べている。
. Dr George Carey: Optimistic about peace "But the confidence in God's
good purposes which have been shown by so many Christians on all sides of
the political divide, not least in the Church of Ireland,have helped to bring us
all to new hope and the promise of a new life,"

カンタベリーのカレー大司教のスピーチを読み、宗教界も水面下では和平
に動いているような気配を感じるのは、憶良氏だけではあるまい。


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