スリー・スコア・アンド・テン
(前頁より)


これに比べれば、日本の社会は70歳以上の老人が、矍鑠(かくしゃく)
として、あるいは半惚けで、よく働いている。老人が元気で活躍される
様子を喜ばしく思うが、公共的客観的に見ると、問題が多い。我々日本
人が物事をどれだけ客観的に処理できるか、価値判断のバランスの問
題かもしれない。

日本では、何か事件が起こるとすぐ「老害」という言葉が、ジャーナリズ
ムの世界で、花火のようにパッと打ち上げられことがある。一般論で論
じられても、ご本人たちは、少しも痛痒を感じていない。馬耳東風である。

「オレは惚けてはいない。戦後の連中はシャンとしとらん」
「会長を、まだまだ続けてくれと強く要請されてるんだ、ワッハッハ」
「青春とは、君、心の若さとは、サミュエル・ウルマンはたいした詩人だよ」
といったような会話で、ご本人の意志によるご引退は、なかなか進まない
のが実情であろう。




標準的な人生の長さ(normal length of human life)が70年という意識が
社会通念としてある国と、そうでない国の差であろう。

父親の年齢の人たちが、戦争で死線をくぐり抜け、戦後は営々と苦労し、
再建に取組んできた姿を目のあたりにしていた。明治大正生まれには、
戦後の復興を自らの手で成し遂げたという自負心が、相当に強いことを
っている。
だから若年の者から、したり顔に「老害、老害」と簡単に片付けられては、
ご老人たちは反発するであろう。

しかし、日本は政治、経済、文化などいろいろな面で転換期に来ている。
何らかの形で、世代交代が必要である。


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