二つの教科書
(前頁より)



閑話休題。憶良氏宅に戻ろう。
「アルファーとベーターはどう違うの?」
「ベーター・ブックは少し易しいの。マースが苦手な子が使うの。アニタ
と私はアルファー・ブックで一番進んでいるのよ」
「どうしてそれが分かるの?」
「だって8ページまで解いているのは2人だけだもの」

「二つの教科書を使っていて、クラスの友達が二つに別れたり馬鹿に
したりしない?」
「そんなことはないわ。かけっこだって早い子も遅い子もいるでしょ。マ
ースだって一緒でしょ。みんな仲良しよ」
憶良氏の質問は愚問だったようだ。

綾ちゃんの説明を要約すると、同じクラス・メイトの中には、絵は抜群に
上手いが算数はとても苦手という子や、工作は不器用だが算数が何よ
り好きという子もいる。
だからそれぞれがどちらかの教科書を使い、自分でどんどん問題を解
いて、先生の所に持って行き、答え合わせをして、次のページに進むよ
うだ。だからアルファー・ブックやベーター・ブックを使っていても、進度
は様々なようだ。

子供たちも特別気にかけている様子はなさそうだ。




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