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氷晶で見られる現象の総称 〜ハロ or ハロとアーク?〜 "Halos" or "Halos and Arcs"?

「氷晶での屈折・反射による光学現象」をひっくるめてなんと呼ぶか? という話です。 結論から言うと、一般的な総称は、暈あるいはハロ (halo) です。 環天頂アークなど、「〇〇アーク」(**** arc) と呼ばれる現象も含めて、暈・ハロ (halo) です (日本語で書く場合は個人的には「ハロ」よりも「暈」のほうがしっくりときます)。

Halo Classification
狭義のハロ (暈、halo) は太陽や月を中心とした円形あるいはそれに近いものを指し、 それ以外はアーク (arc) と呼ぶ(*1)、という用法もあるので、 総称としても「ハロとアーク (halos and arcs)」のように言う(べき)、 と思っている人たちもいらっしゃるようですが、文献などを調べても (明示的な記述こそ見つけていませんが) それは一般的ではありません。 以下、詳しく述べます。

まず、2021年9月13日、東京・調布で見られた大気光象 のように、珍しいものを含め複数の現象が同時に見えている状況を "halo display" とは言っても "halo and arc display" のような言いかたをすることはまずありません。 "South Pole Halos - Anthelic View" のように、太陽と反対側の空の円形の暈が含まれない話でも、普通に "Halos" というタイトルになっています。 この分野での有名な書籍、 "Atmospheric Halos" (Walter Tape) も "〜 Halos and Arcs" ではありません。

その "Atmospheric Halos" の本文でも、たとえば "Of the four halos in the table, the circumzenith arc is simplest." (表の 4つのハロのうち、環天頂アークが最も単純である) (p.124) と書かれており、明確に環天頂アーク(など)を "halo" の範疇に含めています。 さらに古い Robert Greenler の "Rainbows, Halos, and Glories" (Robert Greenler) でも、 (パリーアークの名の元の Parry に関して) "He made sketch and gave detailed descriptions of sun halo displays." (彼は太陽の周りの複合的なハロをスケッチし、詳細に記述した) (p.38) という書き方をしており、パリーアークを含む複数の現象の様子に対し "halo displays" と表記しています。

各現象のよりフォーマルな命名規則の一部として「ランダムな姿勢の氷晶で見られるものが halo、それ以外は arc」と呼ぶ(*2)というのは Walter Tape & Jarmo Moilanen の "Atmospheric Halos and Search for Angle X" にも 書かれていますが、この命名規則による呼び方の例が書いてある同書の Figure 12.1 の表のキャプションにはしっかりと "Halo classification matrix" (ハロ分類表) と書かれており、 "halo" を総称としても使っているのは明らかです。


(*1) さらに幻日や映幻日など、点状に近いものを spot と呼び分ける場合もあります。
(*2) ちなみにこの命名規則に則ると、「外接ハロ (circumscribed halo)」も「タンジェントアーク (tangent arc)」も「22° カラムアーク (22° column arc)」です :-)。


References

● Walter Tape “Atmospheric Halos”, American Geophysical Union

● Robert Greenler “Rainbows, Halos, and Glories”, Cambridge University Press, 1980.

● Walter Tape, Jarmo Moilanen “Atmospheric Halos and the Search for Angle X”, American Geophysical Union

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