守株

昔、あるところに畑を耕す男がいた。彼は、毎日一生懸命に働いていたので、貧しいながらもなんとか暮らしを立てていた。

そんなある日、男が畑仕事をしていると、一匹のウサギが勢いよく走ってきて、畑の真ん中あたりにある木の切り株にぶつかって、首の骨を折って死んでしまった。こうして、この日の男の夕食はウサギとなった。

夕食を終えて男は考えた。
『あの切り株にウサギがぶつかってくれれば、俺は毎日遊んでいても上等な食事にありつける……』

次の日から男は畑を耕すことをやめ、まだかまだかと、ただひたすらウサギが切り株にぶつかるのを待ち続けた。

三日目の昼ごろ、畑の向こうから再びウサギが勢いよく走ってきたのを目にした男は、しめたとばかりに切り株の反対側に回った。

今、まさに彼の目の前でウサギが切り株に……

そう思った瞬間、ウサギは勢いよく飛び上がった。

そして、見事に切り株を飛び越えたウサギは、勢いあまってそのまま男の足にぶつかり、その勢いがあまりにすごかったので、男はバランスを崩して前のめりに倒れ、木の切り株に思い切り頭を叩きつけた。

一陣の風が吹いた。

身を起こしたウサギはぶるっとひとつ身震いして、畑の向こうへ走り去っていった。首の骨を折って死んだ男を残したまま……。


(C) Tadashi_Takezaki 2003