18自保第82号
                         平成18年(2006年)5月30日
長野県自然保護連盟 会長  町 田 和 信 様
上高地調査委員会  委員長 中 島 嘉 尚 様

                         長野県知事 田 中 康 夫

上高地・冬季の自然保護と利用に関する要請書(提言)について (回答)

 2006年4月25日付けで要請のありましたこのことについて、下記のとおり回答します。

               記

1 日本の山岳を代表する優れた自然と景観を有する上高地は、自然公園法などにより「自然の風景地と動植物の多様性の保護及び適正な利用」が規定されています。
 その観点から上高地の通年観光を行わないでください。

【回答】
上高地は、中部山岳国立公園の中心的存在として我が国が誇るべき有数の美しい自然を有する地域であります。
  冬期間も含めた通年観光については、地元の要望としては聞いておりません。
   また、冬期間も含めた通年利用が自然にどのような負荷を与えるのかを裏付ける科学的データは有しておりませんが、冬季は、冬山と同じ気象条件であることから、自然保護の観点はもとより、利用者の安全、除雪など様々な観点から考えていく必要があるものと考えます。
   県としては上高地を所管する環境省とも連携しながら豊かで美しい自然環境を優れた形で次世代に引き継ぐよう、自然保護と適正な利用に努めてまいります。

2 冬季の通行止めやマイカー規制、観光バス規制はこれまでどおり継続してください。また通年での上高地の適正利用者数を自然環境や生態系、景観などに与える影響を輸送手段や宿泊施設などの社会基盤などとともに総合的、科学的に評価検討して、必要ならば冬季も含めた「利用調整地区」として指定も検討してください。
  
【回答】
   上高地におきましては、地元関係者、事業者、国・県の関係機関等で構成している「上高地自動車利用適正化連絡協議会」が設置され、その中での協議に基づきマイカー規制や観光バス規制を実施しております。
県としては、今後も協議会の検討を通じて自然保護と適正な利用の面から必要な提言をしていきたいと考えております。
また、冬季における団体客の利用実態についても調査を行ってまいりたいと考えております。
「利用調整地区」の指定については、所管する環境省において検討すべきものと考えますが、県としても必要な提言をしていきたいと考えております。

 3 冬季も含めた上高地の自然や景観の保全については、広く国民的合意を得るためにも、観光客や登山者への自然保護学習と啓発活動を徹底してください。
  
【回答】
   上高地では、環境省が委嘱している「上高地パークレンジャー」や県が委嘱している「自然保護レンジャー」、「自然観察インストラクター」が監視活動や自然保護学習、美化清掃等で活動しています。上高地という広いエリアでこうしたきめ細かく行うためには、ボランティアを含めた広範な方々との協働が必要となってくるものと考えられることから、今後もこうした皆様と連携しながら、支援していきたいと考えています。

 4 上高地への冬季入山は、気候の変化や積雪などでいつ遭難が起こってもおかしくない状況にあります。中高年の登山ブームや新釜トンネルができたことによる安易なツアーやハイキングは、遭難の恐れもありますので、登山届の提出徹底や指導などをするべきであります。
  
【回答】
   ご意見のとおり、冬の上高地は冬山への入山であるということを基本的に忘れてはならないものと考えます。
   登山届の提出や指導は、松本警察署並びに北アルプス南部地区遭難対策協議会が行っており、年末の入り込みが予想される時には中ノ湯ゲートに登山相談所を設置し、登山客に対して指導をしているとのことです。
   上高地へのトレッキングツアー、ハイキング等での入山は、今後も、中高年を中心に増加することが予想されることから、ご意見の趣旨は、長野県警察本部、松本警察署、遭難対策協議会にも伝えていきたいと考えております。

 5 砂防工事の必要性について、将来的な上高地の自然環境や利用をかんがみて、工事そのものの是非について検討してください。なお冬季に上高地で当面行われる砂防工事は、工事そのものや騒音が動植物に与える影響を最小限にするよう配慮してください。
  
【回答】
   砂防工事については、所管する関係機関が管理上や防災上などの観点から必要に応じて行っているものと考えております。

 6 砂防工事の目的の一つとされている諸施設の防災については、上高地の自然を保護する総合的な見地から、再配置について長期計画の下で検討してください。必要な各施設も必ず改築・新設を迎えます。そうした時期に再配置と見直しを順次実行するのは不可能な計画ではありません。
  
【回答】
   上高地を含む中部山岳国立公園の公園計画については、環境省が所管しております。計画の見直し等に当たっては、県としても必要な意見を述べてまいります。
 
 7 登山鉄道は経費の問題、工事による環境への影響、国立公園としての上高地の本来利用などを考えて、建設するべきではありません。
 
 【回答】
 上高地の登山鉄道建設については、過去にそうした構想があったことは承知しております。
現在、登山鉄道建設は民間企業が研究しているとのことを聞いておりますが、具体的には承知しておりません。


(長野県生活環境部自然保護チーム チームリーダー 山口和茂 担当 大屋 誠)

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