2008年 11月 20日
長野県知事
村井 仁  殿

                                                 長野県自然保護連盟
                                                   会長 和田 蔵次

長野県の自然保護についての要請書

長野県は、日本の屋根として厳しくも美しい山岳を核として成立しています。県民はこの豊かで美しい県土に誇りを持ち、農林業を基盤として多様な産業を育み、独特な県民性と文化を形成してきました。現在、地球全体が温暖化に象徴される未曾有の環境危機の中にあります。私たちの長野県も、経済優先主義の「開発」による破壊の時代から心豊かなゆとりある社会と生活、つまり「自然との共生」を優先する新たな社会を創造せねばなりません。つきましては、以下の諸問題について適切な対応をされますよう要請いたします。

1、 自然環境の破壊となる各地の開発、過剰利用に対する規制策の強化について
@ 蓼科高原などに代表される企業による開発行為の規制策の強化をされたい。
A 上高地、乗鞍岳、美ヶ原、霧ケ峰、栂池等、著名な山岳地帯への入山者の過剰利用(オーバーユース及び冬季利用)の規制策の強化をされたい。
B 美ヶ原、カヤの平、鍋倉山等におけるスノーモービル、雪上車走行の規制策の強化をされたい。

2、 水環境保全、水質浄化、河川改修対策等について
@ ダム建設など河川管理政策をハード優先から環境保全優先へ見直しされたい。
A 島々谷、霞沢川、上高地等における自然景観・環境を無視した砂防・治山ダム建設の見直しを国に要求されたい。
B 千曲川など主要河川の浚渫と中小河川の災害防止対策の強化をされたい。
C 水源地帯における一切の開発行為の禁止、および一定の標高以上の地域と貴重な自然環境をもつ河川、湖沼、湿原周辺地域の開発と改変の原則禁止をされたい。
D 淺川ダム計画は公共事業評価監視委員会の意見を尊重し、白紙撤回されたい。

3、 農林業振興による自然環境保護策、および野生生物との共存政策について
@ 国土環境の保全上、農林業と山村社会の衰退は座視できない事態にあり、県と国あげて抜本的・総合的政策の確立と強化をされたい。
A 野生鳥獣の被害対策は、駆除と防止中心主義だけでなく、里山などの保全・管理の強化策の中で確立されたい。
B 外来種の定着や分布の実態究明と拡大防止策を確立し、実施されたい。
C 野生動植物の調査・保護・管理のための県民参加の新組織を設立されたい。
D 森林環境整備と保全のため、森林税の抜本的見直しと情報開示、国の責務の明確化をされたい。          

4、山岳・高山帯地域の生態系保護について
@ 温暖化に伴う高山帯の動植物生態系の破壊と変質が急速に進行しており、実態調査と対策の強化、特にライチョウや高山植物の保護対策を緊急に実施されたい。
A 自然エネルギーとしての大型風力発電の建設は、県民共有の公共財産としての景観や山岳自然環境の破壊をもたらすなど、長野県にはふさわしくなく、中止されたい。
B 山岳地域の環境保全のため、登山口にトイレを整備するなどの対策をされたい。
C これらの対策のため、山岳高山帯地域の保全のための特別な条例を制定されたい。

5、 地球温暖化防止
 日本は、京都議定書で6%の温室効果ガスの削減を公約しており、先の「長野モデル」では6%削減を計画していた。着実な数値目標をもった削減計画を早急に実施されたい。

6、 総合的視点からの要請課題
@ 県環境基本計画の見直しによる、県民参加組織の設置、科学的調査・研究に基づく数値目標の設定など具体的な自然環境保護策の策定、および県環境審議会委員への自然・環境保護団体の代表の参画などをされたい。
A 県民参加型の環境学習拠点=エコロジーセンター(仮称)を新設し、環境NPOの育成と支援、幼児時代からの環境教育の全県的普及を実施されたい。
B 長野冬季五輪後の自然と社会環境変化の総合調査と検証、特に国立・県立公園計画の見直しによるMAB(マン&バイオスフェア)地域の拡大、保安林指定の拡大をされたい。
C 飯綱高原など乱開発地帯の総合的な環境アセスを実施されたい。
D 公共事業の企画と評価機能の適正化を実施されたい。

なお、本要請内容については、別途文書で回答されますよう要請いたします。
  以上

長野県自然保護連盟・事務局
〒381-2233 長野市川中島町上氷鉋1332-1
電話 026-284-5545 FAX 284-6431


  

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