青空へ
−− 亡き妻に −−
君のところへ
もう行くことができる
青空に巻き上がる風に胸をのせて 見上げれば
今それに吸い込まれ 全速力で泳ぎ昇ろうとする〈この力〉として
反復する「自己同一性」を恥じ、「自己主張」する輪郭を嫌悪して
何者でもないものとして出会い抱きしめたいのだと 口にした言葉は
未だに履行されず だから空中でその言葉が身を保つためには
同じ抽象の反復が雲雀のように羽ばたき続けなければならなかった
歴史上のすべての君が放つ光が無数の差異を分離させる時
初出 東鉄詩話会「詩生活」155号1998年9月
「国鉄詩人」211号1998年12月 転載
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