くだらな日記(2003年8月)


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8月31日(日)
 29日に自宅で飲み会をひらいて以来、いままで朦朧としておりました。たしか飲み会で酔っぱらって「岡山はいいところなんです!」と力説していたような気がするが定かではありません。そのあとキカイダーのビデオを無理矢理見せていたような気がします。西崎さんは本当に全裸で寝る人なんだということを発見しました。こんど徳田kasumi両氏の結婚式にこっそり連れていきますね。翌日の昼ごろ、お客様を見送ってからまた朦朧と寝ていました。夜、阪神の快勝を朦朧と見ました。翌日もずっと朦朧としてました。もちろん、随時酒を投入していたからこそこんなに朦朧としていられたのです。兵力の逐次投入は役に立たないとうのは日本陸軍以外の常識ですが、酒力の逐次投入はあとになって甚大な効果があるというのをいま思い知っています。酒と軍隊の違いの本質はここらへんにあるのではないかと思います。お客様に星野ラーメン八木ラーメンを食わせそびれたため、きょうあすでラーメン5食を消費しなければならないことに気づいたのはそんな朦朧とした日曜の夜でした。


8月28日(木)
 他人日記第2弾。これにも特定のモデルはいません。

【9:12】なんだか知らない女の声で起床。なぜか廊下にパンツいっちょで寝ていた。何があったのか憶えていない。まだ眠い。頭が痛い。顔を洗う。顔に木目がついている。歯はみがかない。吐きそうになるから。
【9:22】朝食のかわりにバーボンをロックで。頭が痛い。イヤになる。
 「お仕事に行っておいで」知らない女の言葉だ。うるさいんだよ。だいたいなんでお前がそこにいるんだ。わけわかんねえよ。
 「気を付けて!」つぅかなんでてめえが家にひとり残るんだよこのアマが。
【9:55】とりあえず会社に電話して、持病の癪でいま病院にいるので遅れると嘘をつく。電話ではうるせぇ上司がわめいている殺すぞ。ダルい仕事に出発。
【10:20】会社につくやいなやトイレに駆け込む。
【10:50】取引先と打ち合わせに行くと称して喫茶店へ。コーヒーをおもっくそ濃くしてもらう。モーニングサービスが食えない。
【11:20】「助けて〜!」しゃあからのメールが来る。俺にどうしろっていうんだよ。
【11:35】しゃあ救出。人間関係で行き詰まっていたらしい。うだつの上がらない奴だ。
【12:00】体調は最悪だ。メシが食えない。気分が盛り上がらない。早く酒場へ帰りたい。
【12:45】同僚がニヤニヤしている。「また飲み過ぎましたね」などと言うので恫喝しておく。
【13:00】今度は本当に取引先へ。和食の店で打ち合わせ。ここの部長はいい人だ。ちょっとだけ、と日本酒をすすめられる。
【16:00】なぜか店の押し入れで全裸になって目覚める。どうしてこうなったか記憶がない。頭が痛い。勘定は部長が払ったらしい。
【17:00】会社に一瞬だけ寄って帰宅。うるせぇ上司が後ろでわめいている殺すぞ。
【18:15】バンド仲間とライブハウスへ。きょうは俺たちのライブの日だ。
【18:40】ライブハウスの女が俺の体格を見て「ドラムの方ですか?」と訊ねる。
 いやがらせか?殺すか?
【19:30】俺たちのステージ開始。
【19:35】「よ〜く来たな、皆の衆よ!」 相変わらず元気なリーダーの喋りだ。ロックバンドというより演歌かヘビメタ向きのような気もするが。
【20:05】「いくぞ〜!ビートルズナンバー!!」ただのゲットバックだ。
 「いまじんふぉーざっとぴーぽー…!」この歌詞には飽き飽きしている。
【20:15】最後の曲はルパン音頭。臭い選曲だ。酒が切れて力が出ない。
【20:30】ライブ終了。「ノリノリだぜ!」格好だけ言ってみる。しかしいまごろ、こんなこと言うミュージシャンはいるのだろうか。
【21:15】打ち上げ。居酒屋で談笑。タカシの笑い声にみんながいらつく。
【26:30】なぜか家のベランダで全裸で目覚める。どうしてこうなったか記憶にない。頭が痛い。見知らぬ女が横でニヤニヤしてこっちを見ている。しかし、なんで徳田さんの片袖を俺が握りしめているのだ?
【26:55】喉がかわいたので、女を返却するついでにいきつけのスナックへ。
【32:15】目覚める。なぜか知らない人の家のトイレで全裸になっている。どうしてこうなったか憶えていない。頭が痛い。喉がかわいた。しかし、なんで全裸の徳田さんがここにいるんだ?


8月27日(水)
 自分の日記ばかり書いているのは飽きるので、勝手に他人の日記を書いてみました。特定のモデルはいません。

【7:12】徳田の笑い声で起床。まだ眠い。顔を洗う。ほっぺがぷにぷにして力が出ない。ファウンデーションはつけない。俺は化粧しない。
【7:22】朝食のかわりに糠漬けを食う。腹が痛い。イヤになる。たまには肉が食いたい。
 「会社に行っておいで」徳田の言葉だ。うるさいんだよ。俺はOLじゃない銀河の帝王なんだよ。てめぇも行け。ズル休みしたらカチくらわすぞ。
 「気を付けて!」うるせぇんだよこの粗衣野郎が。
【7:35】ダルい出勤に出発。バスではうるせぇ客がわめいている殺すぞ。
【7:43】「助けて〜!」徳田が叫んでいる。俺にどうしろっていうんだよ。
【7:50】徳田救出。また西崎に襲われたらしい。うだつの上がらない奴だ。
【8:03】今日は曇りだ。気分が盛り上がらない。早くヘルブレやりたい。
【8:46】徳田がニヤニヤメールを送ってくる。殺すぞ。
【9:30】業務終了。
【9:40】帰宅。
【9:45】お腹がすいた。腹に糠漬けを詰める。またおなかがぽにぽになる。
【10:11】結婚式場で談笑。徳田の自虐ギャグにみんながいらつく。
【11:20】父上登場。
【11:22】「新婚旅行はバイエルンかプロイセンか、わしも一緒に行くぞ!」 相変わらず元気な奴だ。
「やめろ〜!新婚旅行はふたりでするものれす!」本当はどうでもいい。ソーセージ食いたい。ドイツに糠漬けはないだろう。
【11:40】弟の嫁に襲われる。働かない。体育座りでパンツが出てる。
【11:42】「kasumiた〜ん、大丈夫〜!」徳田だ。タイミングが良すぎる。どこから見ていたんだ?
【11:43】「新しい旅行パンフよ〜!」さようならベルヒテスガーデン、こんにちはノイシュヴァンシュタイン城。徳田がニヤニヤしている。
【11:45】「いくぞ〜!うーるごんあた〜っく!!」ただの右ストレートだ。
 「雨窓の庵は今日も雨」このセリフには飽き飽きしている。
【11:49】ヘルブレ終了。73人殺した。「ククク」格好だけ笑ってみる。
【11:53】うどんが来た。「kasumiた〜ん!糠うどんだよ〜!」不味すぎる。帰れ。うだつの上がらない奴だ。
【12:30】ヘルブレ日記だけ更新。自宅前で西崎が徳田を食べていた。徳田は襲われながらニヤニヤしてアニメを見ている。
 いやがらせか?殺すか?


8月26日(火)
 岡山小ネタ集。
・近所の山に熊が出て登山客が襲われ重症。その夕方、熊警報が有線で流れた。「朝夕はとくにお気をつけ下さい。山にはいるときはラジオや鈴など、音の出るものを……」たぶん、うちは北海道を除けば日本一の田舎だ。
・従兄弟に、こないだまで半年間インドに行っていたときの写真を見せてもらう。私のように数日のツアーで偉そうに旅行記を書くエセ旅人とは違い、なにしろゲストハウスと民宿に泊まりながらさすらい続ける正真正銘の旅人だ。なにしろ子供たちは普段着で民族衣装を着ているし、空に向かい両手を広げ鳥や雲や夢までも掴もうとしているし、野良象とか野良猿とかがいるし、じつにうさんくさい爺さんとかいるし、変な食い物はあるし、ああインドっていいなあ。私も行ってみたいが、たぶんひとりで行ったら数日で行方不明になるだろうなあ。それにしても彼の写真には多数の人物が写っているが、私は旅先でまったく人物の写真を撮らないなあ、こういうところに人当たりの差が出るんだよな、と我が不甲斐なさに泣く。
・宮本武蔵が生まれたという大原はえらいことになっていた。もともとは武蔵の生家と墓と二天一流道場くらいしかなかったのだが、「宮本武蔵資料館」「宮本武蔵美術館」「宮本武蔵NHK大河ドラマ記念館」「宮本武蔵称徳武道館」などが新設され、観光バス十数台がにぎわう。イベント会社の社員と村役場職員が武蔵小次郎のコントを上演している。「武蔵の酒」「武蔵せんべい」「武蔵黒豆まんじゅう」「二刀流そば(そばとうどんが半々というだけのもの)」「巌流島キティちゃん」などの武蔵グッズに混じって、なぜか千葉の商標ゴロが作った「阪神優勝」Tシャツが叩き売られていた。
・さすが西日本、阪神グッズが大量に売っていた。タイガースVドリンク、タイガースみっくちゅじゅーちゅ、タイガースのど飴、タイガースたこ焼きスナック、タイガースポップコーン、星野監督似顔絵入り日本酒「仙人力」などなど。なぜか「勝ちたいんやっ」はなかった。
・そんな中で岡山限定発売なのがこの二品。倉敷出身の星野倉敷ラーメンはともかく、岡山出身の八木岡山ラーメンなんて、そんな地味な選手のラーメン、岡山以外にはないと思う。ちなみに八木ラーメンは「しょうゆ味」で、そのバッティングの如くあっさりさっぱり。星野ラーメンはまだ未食。そのうちうちで優勝予定祝賀会をやるという話なので(やるんですよね?しゃあさん、西崎さん?)そこで食わせてみよう。「とんこつしょうゆ味」らしいが。
星野ラーメン&八木ラーメン
・ちなみにこのラーメン、あわくランドの道の駅で「定価九百円のところ特価七百八十円!」というので買ってきた。ところが隣の売店に行くと、「定価千二百円のところ特価九百円!」として売っていた。こういうアバウトなところが岡山だ。値段くらい揃えろよ。そもそも定価が違うのはどうしたわけだ。


8月25日(月)
 岩井志麻子「ぼっけえ、きょうてえ」をいまさら読んだ。むかし、これを買おうとして板東真砂子の本を買ってしまったことがあるが、読後感としては「どっちを読んでも大差はなかったんじゃないかな」という感じ。
 とはいうものの板東と岩井にはむろん違いがある。なんというか、板東がさらっと書くところを、岩井はねちねちと書くという印象。江戸川乱歩と横溝正史の違いに近いような気もする。横溝は「ぼくは上方だから、これでもかとばかりにおどろおどろ書く」と書いていたが、そんな上方特有のサービス精神か。横溝正史のおどろおどろは脳髄を通過したものだが、岩井志麻子のおどろおどろは血まみれの胎盤にまといつかれるような直截な感じはする。それが男と女の差なのか、それとも作家個人的なものか、よくはわからない。
 もっともその「おどろおどろ」がうまくいっているかどうかはわからない。怪談というのは厄介なもので、読者が「ああ、こいつ、ここで怖がらせようとしとるな」と感じてしまったら、もう怖くなくなってしまう。かえって、さりげなくさらっと書いた描写が怖かったりする。ちょっとポルノに似ている。たとえば私にとって、江戸川乱歩「孤島の鬼」でいちばん怖いところは、肝心の双生児や親方の話ではなく、洞窟で迷った主人公が生きた蟹をたたきつぶしてその内臓をすする描写だったりする。あんなもんを食うくらいなら、私なら餓死をえらぶ。
 なんにせよ、岡山を舞台とした怪異譚を岡山の片田舎で深夜に読む、これはやはりけっこう迫るものがありました。
 岩井志麻子がテレビに出ているのをいちどだけ見た。地方局のレギュラーであるらしい。讃岐うどんの本を書いたらしい妙な男と香川岡山対抗戦みたいな企画で、岡山のうまいものや店などを紹介するらしい。女流の小説家や漫画家に共通した偏執狂的なところと、タレントっぽい場慣れと、軽躁病の印象をちょっとづつ感じた。故郷では素行がよくないというので、あんまり評判がよろしくないらしい。


8月19日(火)
 また商標ゴロが三流マスコミを買収して暴れているようですね。
 ちなみに私なりの「商標ゴロ」の定義とは、他人のフンドシで相撲を取ろうとするゲス根性の人間のことをさします。たとえばコピーライターのように自分で頭を絞って考えた文字列を登録するわけでもなく、たとえばプロ野球球団のように自分で球団を経営して自分の球団を優勝させる努力も払わず、他人が努力した結果を、欠陥法律と無能役人と三百代言を使って奪い取ろうとする、とてもゲスな根性の人間のことです。


8月16日(土)
 高校野球では岡山代表の倉敷工業が、すっかりヒールの座をほしいままにしているようだ。
 無理もない。もともと岡山県というだけで憎まれているうえ、初戦では北海道の甲子園初勝利に燃える純情な拓大苫小牧を手玉に取る。序盤で0−8と大量リードを許し、勝ったも同然だと喜ぶ北海道人を尻目に、あっさり降雨ノーゲーム。翌日の再戦ではあっさりと勝利。岡山人のいけずに泣く北の民たち。
 第2戦では、義足のサードという、いかにも甲子園らしいチンケな美談の選手を擁する今治西を接戦の末、下す。岡山人のいけずな勝利に、新聞ネタがなくなって泣く朝日新聞とNHKのチンケな記者ども。
 そのうえ、エースの陶山投手が久保田のような風貌でいつもにやにやと笑い、荒れ球で球が重く、デッドボールをぶつけるのが趣味というから憎まれてもしかたがない。
 もっとも、岡山人から言わせれば「倉敷は岡山じゃない」。倉敷人も「倉敷は岡山じゃない」と言うから。倉敷は将軍様じきじきに治める「天領根性」を誇り、外様の池田や森、ちっぽけな松平なんか相手にしない、という姿勢だから。なんか、直轄地だったことを誇るなんて、チンケな根性だと、ちっぽけな美作藩領民の縁者は思うんですけどね。


8月12日(火)
 NHKの高校野球の解説の原田さん、好きだ。
「この投手は気持ちがすでに逃げてるからダメですね」
「集中できていないんです。だからタマに気持ちがこもらず棒球になる」
「いまのキャッチャーは三塁ランナーを見ずに二塁に送球しましたね。信じられないプレーですよ」
「この場面はただ打つんじゃダメなんです。走るとかエンドランとかセーフティバントとか、なにか動かないと。ほら、今のカウントで三塁線に転がせば内野手は動けなかったんですよ。そういうことをやっていかないとダメです」
「今のは甘く入ってきたスライダーですね。あれを見送ったら打つとこありませんよ」
「野球ってのは相手があってするんですから、自分が打ちたい球だけ待ってたって、そりゃいつまで待っても来ませんよ」
「何も考えずに打ち上げちゃって、まったく意味のないアウトですね」
「こんな大差ですからね、ピッチングの内容は申しあげられるようなモンじゃないんですが、それでも気持ちを切り替えていかないとね」
「勝ってあたりまえ、という展開になっちゃいましたが、それでも野球の質は落としちゃいけない」
 プロ野球ですら、広岡さんか大下さんくらいしか言わないような辛口解説。それが高校野球なのだからすばらしい。
 いや、私だって、そりゃ、長崎日大の投手を見て
「もうダメだこいつ、元阪神の工藤から球威とコントロールを抜いて二倍ビビらせて三倍ノロマにしたような投手だ。もう絶対打たれるぞ。ほーら打たれたぞ。さっさとサヨナラされて恥を全日本に晒しちまえ」
 とか罵ってましたよ。でも、お茶の間でほざくのと全国放送で喋るのとではねえ。ビバ原田。がんばれ原田。超がんばれ。


8月10日(日)
 日記才人にも雑文速報にも、いわゆる「キャバクラ嬢の日記」というものが多く登録されています。このなかのどこかに、桐川さんおなじみのゆきなちゃんが隠れているかもしれない、と思うと、より楽しく読めます。

 仙台あたりはここんとこ地震ばっかりでどうなることかと思っていたら台風も直撃してますますどうなったことでしょうか。むかし、たけしのオールナイトニッポンで「地震と台風がいっしょに来ることはないよな」というたけしの発言に「天は二物を与えず、ってことですよね」と言ったダンカンが、いまや阪神ファン代表のようなことをほざいていることを思うと感無量です。


8月8日(金)
 一般では使われなくなって久しいが、なぜか私の友人たちの間では使われている台詞。
「いかんともしがたいですなあ」
「なんともはや」
「失敬」
「うむ、よかろう」
「感謝のきわみ」
「いかさま、さよう」
「御意」
「いやはや、何とも」
「妙な気配が感じられてならない」
「なに、案ずるな」
 他にもいろいろあったと思うが、とりあえずここまでにしとうござる。

 ジャイアント落合死去。ご冥福をお祈りします。


8月4日(月)
 家庭でおこなう検閲と国家がおこなう検閲とは、はっきり区別しなければならない。
 前者については大賛成だ。どんどん家風とやらでおこなうがよろしい。エッチな本はだめ、クレヨンしんちゃんは下品だからだめ、ドラえもんやアンパンマンやウルトラマンや仮面ライダーはすぐ他人に頼る依存心の強い人間を育てるからだめ、などいろいろやってほしい。ただ、国家がそういう道徳的なものについて口を出すのはおかどちがいだし越権だろう。
 遠藤周作ほどの人でもこの両者を混同していることがあった。北杜夫との対談で、ポルノ規制について「隠れて読むから面白いんです」という主旨の発言があった。これは二重に間違っている。第一に、国家によって規制されては、そもそも隠れて読もうにも、出版されないか、ヤクザが牛耳る地下出版のような歪んだ形でしか存在し得ない。第二に、隠れて読まないと面白くないようなものは、そもそも公明正大な自由競争によって淘汰されたほうがいいのだ。
 旧ソ連では地下出版のソルジェニーツィンが人気だったが、ロシアになってからはほとんど読まれていないという。だからといってソ連の文教政策を誉める馬鹿はいない。
 ともあれ、子育てに怠惰になった親が国家に規制を求める声は、家庭と国家をふたつながら腐敗させる。


8月1日(金)
 「北朝鮮 金日成は四人いた」(李命英:ワニ文庫)を読む。
 日韓併合以来の革命運動の記録を追い続け、「金日成」を名乗る人物が複数存在したことを立証し、あわせて北朝鮮の主席であった金日成が、それら先人の名声をうまく利用していったことを確かめてゆく。
 著者としては、だからあの金日成は贋者でありペテン師である、というふうにもっていきたいのだろうが、読後感としては、「そんだけみんな金日成を名乗ってたんやから、別にもうひとり名乗ったってかめへんやん」といったところ。どうせみんな偽名なんだし。
 面白かったのは、「縮地法」の話。地図上の点と点をくっつけることにより遠距離を瞬間移動するという、一種のワープなのだが、金日成将軍が日本をやっつけるときにも使ったし、息子の金正日も使えるといわれている。これ、初代の金日成がすでに使っていたんだね。というか、縮地法を使えるかどうかが、金日成である証であるらしい。考えてみれば首領様も、初代の金日成からそんな恥ずかしいもの受け継いだせいでインチキ呼ばわりされているし、その代償として金日成くらい名乗らせてやってもいいような気がする。
 ちなみに金日成の起源について考えていることがある。金日成の特徴として、縮地法のようなマカ不思議な術を使って神出鬼没であり、日本軍が攻め込んでもつねにもぬけのカラ。そこには「金日成参上」との落書きが残されているだけ。これって、誰かを想い出しませんか。そう、アメリカ人がゆくところならエジプトのピラミッドから月の裏のクレーターまで書き残されているという「キルロイが来た」の落書きに似ているのだ。そう、金日成は、キルロイが朝鮮風になまってできた名前だったのだ。おそらくアメリカへ留学経験のある朝鮮人革命家が考えついたのだろう。この説に、私はそうとうの自信をもっている。


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