くだらな日記(2001年7月)


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7月31日(火)
 靖国ってよくわからない。
 どうも話題になっているので、英霊として靖国に祀られるための資格を調べてみたのだが、どうやら「天皇陛下の配下」で、「天皇陛下のために」「いくさで死んだ」人を祀るところらしい。つまり、天皇の直属である官吏、軍人であること。天皇陛下のために戦死したこと。この二大条件があるらしい。
 だから民間人はいくら死んでも英霊になれない。たとえ東京大空襲で焼け死んでも、軍属として満州に動員されてトラック運転中爆撃され死んでも、英霊にはなれない、らしい。
 そしてもし軍人官吏であっても、自然死や病死では英霊になれない(特例をもって英霊になることを許す、となるらしいが)。だから厳密にいえば同じ連合艦隊司令長官でも、米軍機に撃墜された山本五十六は英霊になれるが、台風に巻き込まれて墜落死した古賀峯一は英霊になれない。たぶん特例でなってると思うけど。
 さらに戦死でも、天皇陛下のために死んだのでなければ祀ってもらえない。反乱軍はダメ。だから西郷隆盛や江藤新平はダメ。栗原安秀や安藤輝三もダメ。磯部浅一や北一輝は、その上民間人だから絶対にダメ。
 という原則によると、なんでA級戦犯が祀ってあるのだろう?
 さすがにA級戦犯はみな軍人か官僚だから、その点では問題はない。天皇陛下のために尽くしたかどうかは問題が残るが、まあなんとかなるとしよう。しかし、あれは戦死でなく、刑死でしょ? 処刑も戦死のうち、なのか? 「特例をもって許す」のパターンなのか? 謎だ。
 もしご存じの方がいたらお知らせください。


7月29日(日)
 昨晩N間口さんが言っていた、「投票率はあんまり上がらないだろう」という言葉が、どうも気にかかっている。
 その根拠は、今回の盛り上がりはコイズミ人気のみで、政治に関心がなかったアンちゃんやオバちゃんが新たに投票する要素はあるものの、政見の争点がまるでない。だから真面目にこれまで投票してきた人間は嫌気がさすのではないか。特にリベラル左派は、投票の対象を失って棄権するに違いない、というものだ。たしかに、自由主義リベラル政党というものが、いま事実上皆無ですな。民主党はハトヤマ右翼党として脱皮しつつあるし、共産党は過去にしがらみがありすぎる。社民党は田嶋とかヘンな人材を集めてとうてい応援する気になれないし、公明党や新党・自由と希望は宗教だ。二院クラブはアオシマだし、新社会党や自由連合は泡沫だし。
 だからこそチャンスという見方もできるわけで。
 いま、社民党や共産党のようなしがらみのない、民主党のように迷走しない、ちゃんとした左派政党ができたら、それが一気に自民党の対抗勢力にまでのし上がる素地はあるわけで。
 というわけで、僕と一緒に作りませんか、国家社会主義労働者党を。君にヒトラーの役をあげるから、僕はシュトラッサーの役ね。


7月28日(土)
 Mr.デンジャーに行く。
 Mr.デンジャーとは、店主の松永正弘氏の異名である。彼は空手出身のレスラーであるが、有刺鉄線デスマッチ、ファーヤーデスマッチ、電流爆破デスマッチ、ピラニア・サソリデスマッチ、月光闇討ちデスマッチなどなど、デスマッチを得意とする。新日本、FMW、W・ING、U−JAPAN、大日本プロレスなど、登場した団体は限りない。PRIDEの前身である総合格闘技団体のU−JAPANのリングに、五寸釘バットを持って入ったことでも有名である。また趣味は動物の飼育で、自宅マンションにはデスマッチで使用したピラニア、サソリ、将来使用しようと育てているクロコダイルなどがいるという。
 その彼が、将来に不安を感じたか、なぜかステーキハウスを開店した。現在、東あずまの本店と浅草の支店がある。安くてうまいと、プロレスファンのみならず一般客にも好評である。これは行ってみなければならない。
 亀戸から東武線に乗り換えて、二つ目の東あずま下車。上り方面にしか改札口がない、実にひなびた駅である。そこから歩いて三分。ごくふつうの商店街の中にその店があった。ふつうでないのは外装である。ブッチャーかポーゴのような肥満体の人物が絶叫しているようなオブジェが飾ってある。それはあたかも機械男爵の人間狩りの獲物の剥製か、松永とデスマッチをして敗れた者の剥製のようにも見える。
 勇気をふるって店内へ。幸い、骸骨やサーベルや鎌が飾っていたり、有刺鉄線が張り巡らされていたり、松永が流血したり釘が刺さったりピラニアに噛まれていたり蛍光灯で殴られていたりする試合風景の写真が貼られている他は、ごくふつうの店である。
 幸か不幸か、店長の松永は翌日のデスマッチがあるというので不在だった。ステーキセットを注文。一ポンド(四百五十グラム)のステーキにスープ、サラダ、ライス、生ビールがついて二千円という安さである。
 肉は脂身のない、おそらく普通はカレー・シチュー用に使う肉なのだろうが、それが気味が悪いくらい柔らかい。普通のサイコロステーキの四倍くらいの肉片に切り分けられているのだが、それが何の苦もなく噛みきれる。ふつうなら筋張ってどうにもならないと思うのだが、それが筋もなにもないのだ。ニンニク、バターとからめて焼いたそういう肉を、各種ソースでいただく。さすがに肉そのものの味わいは薄いようだが、ソースが美味なので気にならない。なにより、肉が軟らかい。ハンバーグかと思ったくらいだ。
 これは秘伝があるそうで、だからこそ安い部位の肉を仕入れて安く売ることができるのだそうだ。肉の形を崩さず、筋だけを斬る。おそらく、有刺鉄線でぐるぐる巻きにして一昼夜おくとか、五寸釘バットで叩くとか、ヤマタノオロチで斬るとか、そういう秘伝にちがいない。


7がつ27にち(きん)
 きょう、どうぶつえんに、いきました。
 ごりらと ちんぱんじーが、いました。
 ぼくに、ばななを、くれたので、
「おかえしだよ」
 と、いって、マクドナルドの はんばーがーを、あげました。
 そしたら、しいくがかりの、おじさんに
「おれの かわいい ゴリきちを、チンたを ころす つもりか」
 と、めっちゃ おこられました。
           おわり


7月25日(水)
 北朝鮮機関誌によると、金正日総書記は射撃の名人で、五十メートル離れたガラス瓶を、右手で撃って五本、左手で撃って五本、パーフェクトに打ち抜いたそうだ。偉大なる指導者様は軍首脳に、「右手が負傷したことも考え、左手も鍛えておくべきだ」と教えをたれたという。
 まだそんなことやっとんのかお前ら。

 円谷英二の孫、浩(通称シャイダー)死去。私より年下じゃないか。つつしんでご冥福をお祈り申し上げます。アニーに食われまくっていたあのでくのぼう演技、僕は忘れないよ。
 追悼企画として「宇宙刑事シャミンダー」というのを思いついたのですが。
 主人公は宇宙刑事シャミンダー(村山富市)。相棒はアニー(土井たか子)。対抗する悪の組織フーマ(自民党)。神官ジュンイチローの作る不思議空間に引きずり込まれると、自民党は二倍の力を発揮する。シャミンダーを追いつめる悪のギャル軍団。ギャル1:田中真紀子。ギャル2:橋本聖子。ギャル3:小渕優子。ギャル4:山東昭子。ギャル5:扇千景。不思議獣マスゾエ(人でなしなのに介護を語る不思議)。不思議獣オーニタ(猪木と試合がやりたいので立候補した不思議)。不思議獣キンピカ(全共闘くずれの癖に教育改革を語る不思議)。不思議獣タカソ(小泉と政見が正反対なのにトップ当選が噂される不思議)。不思議獣ミズシマ(娘が民主党なのに不思議)。不思議獣スエヒロ(政党と政見が六年前と正反対の不思議)
 こーゆーネタを思いついたんですが、社民党だって辻元とか田嶋とかギャル軍団に事欠かないし、不思議獣オータ(沖縄県知事だったのに不思議)、不思議獣デン(引退を表明したのに不思議)、不思議獣ホサカ(法定得票に達してないのに当選の不思議)なんてのもいるし、さてどうするか。


7月24日(火)
 ははあ、保守党は0〜で、自由連合は〜1なのか(朝日新聞社調査)。逆になれば面白いんだが。野坂昭如やドクター中松を他の無名泡沫といっしょくたに扱う、トラヲ党首の豪腕はなかなか凄いものがある。そのトラヲ司会者を困らせるドクター中松はもっと凄いが。いちど政見放送をごらんになってください。
 それにしても立候補の理由でいちばんくだらないのは、「政治漫画家は多いが、漫画政治家はまだひとりもいない。私は史上初の漫画政治家になりたい」(高信太郎・自由連合)と「アントニオ猪木に対戦要望書を出したら、国会議員になって対等になったらやってやる、と言われた。猪木戦を実現するために参院議員になる」(大仁田厚・自民党)のどっちだろうか。ふくろう博士(自由連合)と金ピカ先生(自民党)の骨肉の争いも面白い。なんか自民党と自由連合は競り合っているようだ。

 いよいよ参院選を週末に控え、いよいよ埼玉県選出議員の選挙公報が届く。しかし選出予定議員とか、選出立候補議員とかの方が正確じゃないか、などとツッコみながら開く。たいして面白いのはないな。東京ではひとめ見て異常者とわかるような文面のがあったのだが、埼玉のような田舎ではそういう優秀な泡沫候補は近寄らないようだ。
 だいたい似たり寄ったりのつくりで、右端に顔写真と名前、上にでかくスローガンを掲げ、公約をずらずらと並べて候補者の経歴でおしまい。こんな感じ。それにしても各候補、字体がちょっとずつ違っているので、印刷屋さんも大変だろう。あ、「候補者から提出された原稿をそのまま写真にとり、印刷したもの」なのか。
 候補者の名前を一番でかい字で印刷しているのは小川たくや(無所属)、続いて、はやかわ忠孝(無所属)、山根りゅうじ(民主党)、高野ひろし(公明党)となる。一般的に党所属の候補は自分の名前と党の名前を同じ大きさで並べ、「比例代表は○○党へ」などと書いている。無所属は党名を書かない分、自分の名前をでかくしているようだ。もっとも例外がある。公明党の高野ひろしは、ふつうなら所属党名を書くところに「高野ひろし」と繰り返し自分の名前を書いている。「比例代表は公明党に」も書いていない。よほど自己顕示欲が強いのか、公明党に含むところがあるのか。いや待て、自民党と自由党の候補も書いていないな。右寄りの政治家は自分勝手ということなのか、それとも集合離散が激しすぎて党に忠誠心がもてないのか。
 ちなみに広報の中で自分の名前(姓だけでも一回と数える)をいちばん多く繰り返したのは、小川たくや(無所属)の六回。最小は一回の今澤まさかず(維新政党新風)と山根りゅうじ(民主党)、加藤盛雄(無所属)。
 党名を書けないのが悔しいのか、山口節生(無所属)などは名前の横に「自民党系中立的無所属・新党結成・参加予定」などとずらずらと書き並べている。「前自由民主党埼玉県第四選挙区支部長」などと書いているはやかわ忠孝(無所属)というのも、なかなか未練がましい。
 推薦人を並べるというのもよくあるパターンだが、最多推薦人を誇るのが今澤まさかず(維新政党新風)の二十八人で、あべ幸代(共産党)とむらた文一(新社会党)の七人を大きく引き離している。推薦人が多いから友人が多いというわけでもないようだが。
 公約の数では、林寛子(自由連合)の十七が最多。もっともこれは自由連合の公約で、林寛子本人は「主婦パワー全開でがんばります」としか書いていない。さもありなん。
 公約ひとつという人も多く、「盲導犬をふやそう」(今澤まさかず・維新政党新風)、「小泉内閣をバックアップ」(さとう泰三・自民党)、「不良債権処理と経済再生」(山口節生・無所属)などなど。
 一番凄い公約は、やはり加藤盛雄(無所属)の、「参議院不要」だろう。なんのための立候補なのだ。
 各人の経歴もなかなか面白い。「お茶の水大学卒、教師経験九年、参議院議員経験六年」(あべ幸代・共産党)なんてのは普通すぎる。「昭和四十年、劇団いろはに入団。昭和四十八年、フジテレビ『君こそスターだ!』の第一回グランドチャンピオン。昭和四十九年、『ほほえみ』で歌手デビュー」などという林寛子(自由連合)も当然すぎる(しかしなぜ「レッドビッキーズ」が入ってない?)。それに比べ、こみやま泰子(自由党)の恐るべき水増し経歴を見よ。「1965年、小宮山重四郎衆議院議員の長女として川越市に生まれる」に始まり、高校や大学のゼミ、父と海外視察に同行、お茶を学ぶ、などなど、どうでもいい些事で経歴が埋め尽くされておる。よほど書くことがなかったのだろう。小渕優子の経歴もいちど見てみたいものだ。今澤まさかず(維新政党新風)の経歴もすごいぞ。「国士舘大学を卒業、自衛官を経て戸田競艇組合に二十四年勤務後、作詞作曲家としてデビュー。南ひろこ『望郷エレジー』を作詞。銃剣道五段、柔道二段、テレビ埼玉『演歌に挑戦』審査員」などという奇想天外な人生だ。
 しかし一番の注目は、山口節生(無所属)だろうな。いきなりドーンと、「ブッシュ大統領、ブレア氏他の各国首脳に会談のコンタクトを打診、日程調整中(早期に会談予定)」(原文ママ)だもんな。どうもこの人、米英仏独伊の首脳に政策書簡を送りつけているらしい。経歴も、「一橋大商学科卒、東大経済学科卒、中大法律学科二部卒、早大政治学修士、日大法学博士後期課程満期修了(要するに博士号はとれなかったってことね)、放送大学教育学・心理学卒予定」と凄い。本当にこれだけの学校を卒業することが可能なのだろうか。「一日二百キロメートル! バイクで十七日間連日疾走します」などといっているが、そんなことで放送大学を卒業できるのだろうか。
 ということで埼玉県選出議員選挙広報大賞は、山口節生(無所属)に決定。


7月23日(月)
 根昆布水を飲む。
 それはおれ宛に届けられた宅急便の中に入っていた。田舎の親からの小包。それはいまや、収入の途絶したおれの生命を繋ぐたったひとつの存在。おれの生命。おれの使命。おれの宿命。おれの世界。
 というほどのもんでもないが、ともかく親の愛こめられた宅急便の中には、トマト、茗荷、プチトマト、シソ、ニンニク、玉葱、香草、シシトウ、山椒の実など畑で取れためったやたらなものに混じって、だし醤油、味噌、干し貝柱、そしてこの根昆布があった。この脈絡のなさこそ親の愛である。愛には脈絡がない。もしも愛する恋人が君に向かって「ねえ、新潮文庫のYONDA?CLUBの文豪リストウォッチの必要マークが二十冊分から三十冊分になったのはなぜだと思う?」などと聞いても怒ってはならぬ。その脈絡のなさこそ愛なのだ。五冊分溜めてたシート、前回のキャンペーン終了時に捨ててしまったぞ。どうしてくれる。
 ともあれ根昆布である。こんなものは戦前は食い物扱いされていなかった。たしか内田百(月in門)の随筆で、学生が根昆布を持参して「こんなものは食うわけにもいかず肥料にもならないのですが、先生なら喜ぶと思って」などとほざくくだりがあった。戦後も食い物ではなかった。今でも食い物ではない。しかし飲む。がぶ飲む。飲んでこます。
 この根昆布をコップ一杯の水に漬けて翌朝になるとアーラ不思議、根昆布水が自動的に製造されるのだ。この根昆布水ときたら万病の霊薬。酔いざまし、肝の養い、頭髪保護からガンやエイズにも卓効ありと伝えられる地獄の毒水、いや違う、観音の聖水となるのだ。わかめ酒と称する液体にも同じ効能があって、しかもそちらはビジュアル面での効能も優れていると漏れ聞くが、残念ながら小生、ご拝謁の栄に浴したことがない。乞うご開帳。
 とにもかくにも根昆布水。おれはわななく手で水道のコックをひねり、水をコップに注いだ。そこに根昆布と称する褐色の物体を投入する。見たところ昆布との差は見受けられない。根元が細く縮こまっているくらいの違いだ。しかしこれが驚異の根昆布であると、パッケージにも謳っている。根昆布を信じて。おれは再びわななく手で冷蔵庫にコップを納めた。
 その晩は期待と興奮のため眠れぬ夜を過ごした。酒を飲み過ぎてもいた。これは眠れなかったからではなく、人為的に二日酔い状態を作り出し、根昆布パワーを実証してみんとの意気込みと感じられたい。おれは三たびわななく手で冷蔵庫を開け、コップを取り出した。
 やや茶色く変色した水に囲まれて、根昆布は当社比1.5倍くらいの大きさに膨れあがっている。もしやこれが根昆布パワーか。根昆布の霊性か。そういえば朝とはいえ、こんなにも膨れたこと最近ないなあ、年齢かなあ、などと、しみじみと感慨ってみたあげく、いよいよ飲む。
 ……む。
 中途半端に生臭い。我慢すれば飲めないほどではないが、喜んで飲むようなものではない。昆布のダシが出ているような出ていないような、じつに中途半端な味。ううむ。ううむ。
 けっきょく二日酔いは夕方まで続きました。なめとんのか。
 きょうは町田康が憑依したらしい。


7月22日(日)
 またもや野球の話など。
 フジテレビで行った昨日のオールスター中継について朝日新聞が苦言を呈している。曰く、放送開始に試合開始を無理矢理合わせた審判の態度は不可解。曰く、試合中にお笑いタレントのインタビューは不謹慎。すべてもっともながら、それはオールスターの方にも問題があるのでは。
 すべて日本の野球、特にセ・リーグ野球はつまらなくなっている。試合の内容では視聴者をつなぎ止められないのは明白だ。だから各局、苦心して企画を練る。企画に頼らないと視聴率が得られない。テレビ朝日の松坂スコープだとか、日本テレビの八時の男だとか、フジテレビのお笑いバラエティ路線だとか。TBSはきょう、野球のヤの字も知らぬ女子アナを集めてひと騒動起こそうとしているらしい。それが全て滑っているのは気の毒でもあるが。新日プロに乙葉とかいう原因不明のアイドルを連れてくるテレビ朝日と同罪である。
 例えば、鶏の細切を串に刺して何か焼いたものだけを焼き鳥だと信じていると、徐々に焼き鳥が焼き鳥でなくなってくる。ブロイラーの質が落ちてくると、串に刺して塩をつけて炭火で炙っただけの素朴な、併し尤も美味な焼き鳥は食えなくなる。一口噛んだだけで口の中に薬臭い嫌な物が広がってくる。あるいは肉を噛んだ感じが索漠としてくる。やむなくカルメラと醤油を練ったようなくどいタレを塗りたくって、唐辛子をまぶして食うより他はない。併しそうなるとベトナムの、薄味のタレをひと刷毛して炭火で炙っただけの焼き鳥が恋しくなる。あの鶏なら塩だけで炭火焼きにして十分旨いに違いない。そしてベトナムは塩の旨い産地でも有名である。天日製塩という、工業的には遅れた製法ではあるが、併しそれだけに海を詰め込んだとしか形容できない味の塩があるのだ。そして鶏がまた旨くなる。
 いつの間にか吉田健一が憑依してしまった。


7月21日(土)
 「ハプスブルグ一千年」(中丸明・新潮文庫)を読んで後悔する。
 ハプスブルグ家を中心にヨーロッパの歴史を辿っていくというストーリーには興味があるし、ところどころ興味深い記述がなくもないのだが、とにかく文章がヒド過ぎる。
 やたらに文中に名古屋弁が出てくる。これはUFO特番などでよくある「オラ、あの空に飛んどる妙なモンを見ただよ」などという不明な方言を嫌い、方言部分に生地伊那谷の言葉を用いた本多勝一のひそみにならったものかと思われるが、やたらに多用しすぎる。方言でも何でもないところにも使う。しまいには会話文のすべてを名古屋弁にしてしまう。どうやら、これは笑いを取るために使っているものらしいと気づくのにおよそ百ページを要した。こんなので笑えると思っとるのか。
 さらに、言葉が汚すぎる。おもに性的な言葉が多用されているのだが、「フニャ魔羅」「早漏チンコ」「耄碌マ○コ」「肉厚のコンドームを装着してのセックスみたいな」「極悪非道の魔羅をかかえた麻呂」「スッピンの顔にカーラーをごてごてと巻きつけたまま大股開く」「このバカは包茎で早漏のくせに色きちがいという困った大バカ」などなど、作者の品性を決定づけるような台詞が一ページに三回はとびだす。どうやら中丸氏、わかりやすく語ることは下品に語ることだと信じているらしい。
 「○○をまるめて花見団子にした」という言葉が好きらしく、頻繁に出てくる。一回や二回ならともかく、十回以上も出るに至ってはうんざりだ。
 「コギャル」という言葉も好きらしく、中丸氏は多用する。この本は平成十年の刊行だそうだが、それにしても古めかし過ぎるだろう。中年もとうに過ぎたジジイが若者に媚びようと懸命にもがくさまは、哀れですらある。
 ま、この人の本は二度と買いたくない。解説で「哄笑、痛快」などと褒めちぎっている今野勉(演出家・脚本家)にまで悪意を抱いてしまうほどだ。気持ち悪くなりたい人必読。悪意をかき立ててみたい人必読。

 魁皇の優勝を見たら居眠りしてしまったのでオールスターは見ずじまい。まあいいや。入来なんてショボイ奴が先発の試合なんてくだらん。昼間見た夏の高校野球埼玉県予選のほうがなんぼか面白い。伊那学園、よくぞシード校を倒した。


7月20日(金)
そういえば政党の政見放送を見ていなかったなと思い、休みをいいことに、てきとーにチャンネルをNHKへ。
 するといきなり白川勝彦が。新党・自由と希望という政党らしい。白川さん、加藤さんに裏切られたあげく、こんな党を作ったらしい。それにしても「創価学会、公明党と戦う政党は新党・自由と希望だけです」ってのは共産党に失礼ですよ、白川さん。
 候補者一覧を見て、アレだな、宮崎学以外は白川さん好みのあたりさわりのない「独自の戦い」要員だな、などと考えていたらみごとに裏切られた。いきなり、物凄い濃い顔の人が出てきたのだ。こもりていじという人だ。大学教授らしいが、どう見ても剣客か右翼だ。黒沢映画に出てくる用心棒の顔だ。あるいは悪役商会。ゲジゲジ眉毛が凄い。目を半眼にしているのがますます怖い。と思ったら、このひと生まれつきの全盲なのだとか。失礼しました。
 次が公明党というのがなんとなく笑える。ま、公明党と自民党と民主党の政見放送はつまんないというのは通り相場だが、それにしても上滑りしすぎるよ、言葉が。あそこまで棒読みで真実味のない言葉を喋れるというのも、ある意味感動しますが(特に池坊保子。気持ち悪い)。代表代行(いつ格下げになったのだろう)の浜四津もすっかり影が薄くなったなあ。もともと客寄せパンダだから仕方ないか。公明党お得意の教育と文化を語るのはいいが、文化振興のためにはあんたとこみたいな家元制度が消えるのがいちばんだろう、池坊さんよ。
 最後が新社会党。政党と言うには議員が少なすぎ、泡沫と言うには政見がしっかりしすぎているという、なんとも中途半端な政党。元議員の多さが泣かせる。政見放送も真面目に語りすぎていて地味。党首の矢田部さんは誠実でファンも多いのだが、今回は無理でしょうな。社会党が社民党になったんだから、ここもそろそろ「新」を外して社会党になってもいいんでないかい? イヤガラセで独立社会民主党を名乗るのも面白そうだが。


7月19日(木)
参院選あげ。
花の首飾り
 コイズミ総理たちは
 コイズミ人気で
 参院の票の取り纏め
 優しく編んでいた
 おお 愛の祈り 花のコイズミ票
 私の首に かけてください
 せつない声で 大仁田は言った
 涙の候補者に コイズミ人気を
 かけたとき 嘆く候補者は
 森派に なりました
 おお 愛の祈り 花のコイズミ票

TOKIO
 空をとぶ 街をゆく ホテルの部屋をキャンセルする
 火を噴いて 毒舌だ スーパーオバちゃん舞い上がる
 MAKIKO MAKIKOがマスコミ抱いたまま
 MAKIKO MAKIKOが国破る
 リークしまくり伏魔殿だと お前は言ってたね
 つきあっていると死にそうだと 閣議の途中で涙こぼした
 MAKIKO 角栄の娘に脅されて
 MAKIKO 外務省が灰になる
 MAKIKO MAKIKOが火種を抱いたまま
 MAKIKO 内閣が燃え上がる

グレートマジンガー
 おれは 涙を流さない ダダッダーン
 政治家だから 森派だから ダダッダーン
 だけどわかるぜ 燃える政情
 小泉と一緒に 野党を撃つ
 必殺パワー「よくわからないんですけど」
 悪い野党をうちのめす
 グレート塩爺 嵐を呼ぶぜ
 俺はグレート グレート正十郎


7月18日(水)
 昨日に続いて野球の話を。
 面白さでは依然断然の差があるものの、「強さ」という点では日本の野球と大リーグの差は縮まっている。どのくらい縮まったかというと、大リーグでそこそこだった選手は日本でもそこそこ、日本でそこそこだった選手は大リーグでもそこそこ、という位に縮まっている。阪神とメッツの両球団にわたって、新庄とマーク・ジョンソンがポジション争いしているのがその顕著な例である。もっとも、阪神だろうがメッツだろうがジョンソンに外野を守らせるのは気違い沙汰だと思うが。
 ただ、縮まったのは阪神とかメッツとか、低迷球団同士、ピンキリの「キリ」のレベルで比べた場合のみである。大リーグの規模は日本よりはるかに大きいのだ。
 トップのレベルでは依然ダントツの差がある。たとえば去年のチャンピオン、巨人とヤンキースが真剣勝負でワールドシリーズをやるとしよう。おそらくアメリカの球場(ヤンキースタジアムでは江藤と清原の打球はスタンドに入らない。かろうじてジャストミートした松井の打球がレフトスタンドに入るか)、アメリカの審判を採用した場合は六勝一敗、日本の球場、日本の審判(巨人贔屓インチキ審判)を採用しても五勝二敗でヤンキースが勝つだろう。
 もっとも、レベルがどうの云々するまでもなく、阪神がとにかく弱いこと、そして阪神野球がいちばん面白くないことだけは、論を待たない。頼む、新庄帰ってきてくれ。いまの阪神は打率二割台のゼブラとかおさむちゃんが救世主扱いだぞ。まだ十本も打っていない桧山が主砲扱いだぞ。情けなくて涙が出てくるぞ。


7月17日(火)
 阪神があんなだから、阪神と巨人がらみの試合は見ないように心がけていたのだが。
 気がついてみると、パ・リーグの試合しか楽しめない身体になってしまったのです。
 たとえば中日広島戦よりも、ロッテ近鉄戦のほうがよっぽど面白い。セ・リーグの試合は、かったるくって見てられない。阪神巨人以外でも。
 ひとつには、パ・リーグの方がスピーディであることでしょう。パ・リーグの試合進行は、あきらかにセ・リーグより五割は早い。投手がぽんぽん球を投げてくる。レッドソックスの野茂がかったるく見えるくらいのスピードだ。ジャイアンツの元木や江藤がバッターボックスを外して無意味な挙動を見せている間に、ロッテの黒木なら三球は投げるでしょう。バッター三振。
 もうひとつは、パ・リーグの方がアグレッシブであること。セ・リーグの試合は、なんとかこの回も失点しませんように、と、相手のスコアボードに0を並べることを目標とするような試合だが、パ・リーグの試合は、自軍のスコアボードにできるだけ大きな数字を並べるよう努力する。この違いは、試合の面白さに大きく影響する。
 さらにもうひとつ、パ・リーグは外国人選手の品揃えに注意を払ってますな。ダメだと見極めると、容赦なく新外人を連れてくる。ダイエーのヘイニー、オリックスのヤーナル、近鉄のギルバート、ロッテのシコースキー、などなど。
 正確には「ダメだと見極めると」でなく、監督がダメかどうかの見極め中に、もう保険として別な選手にツバつけてるんですね。企業としては正解でしょう。ダメだとわかってから新しい選手をもってきても、もう機を逸してるんです。球団もダメになるんです。今年の中日と横浜がいい例。むろん、阪神も。
 阪神球団首脳陣のやり方を見ていると、どうも阪神という企業は、ロジェスティックスを理解していないのではないでしょうか。阪神デパートは、品切れになってから商品を注文しているのではないでしょうか。阪神電鉄は、事故がおこってから代替車を制作しているのではないでしょうか。阪神グループは信用できない。私には、そう思えてならないのです。


7月16日(月)
 参議院選挙運動もまっさかり。
 わが愛する埼玉にも、ついにわが愛する政党、自由連合から林寛子が出馬。ううむ、吾妻ひでおファンの私としては、義理でも入れねばならぬか? などと煩悶している今日この頃です。
 しかしわが愛する政党、自由連合の候補者は、政見はてんでばらばらなのに、ひとつの共通点がありますな。
 林寛子は「ダイエット有名人」の座をキャシー中島と争って負けた人。
 野坂昭如は新潟三区に立候補して田中角栄に惨敗した人。
 羽柴誠三秀吉は、東京都知事選で青島に、大阪府知事選で黄色い女に負けた人。
 佐山サトルは前田とのイデオロギー論争に破れてUWFを去った人。
 月亭可朝は参議院全国区で破れた、いわば敗戦のベテラン。
 ドクター中松もいろんなところで破れまくっている超ベテラン。発明政治党はどうなったのだろうか?
 というわけで、この党の立候補者はみんな、敗戦経験だけ豊富な人が揃っているのです。
 ……それもしかたないか。
 党首が、かつて奄美全島区で、自民党の保岡さんに破れ続けていましたからね。


7月15日(日)
 リバイバルが流行る世の中というのは、新しいものが産み出されなくなった閉塞状況を指し示すものらしいですが。
 「猿の惑星」が再映画化されたと思ったら、こんどは「仮面の忍者赤影」が再映画化されるそうですね。
 それにしても「仮面の忍者赤影」とはいったい何なのでしょう。
 むかしから仮面のヒーローは、その本体を隠すために仮面をかぶってきました。
 仮面ライダーはその本体である城南大学研究員本郷猛を知られてはならない(ショッカーには知られていますが)。仮面ではないがウルトラマンも科学特捜隊次期隊長ハヤタ隊員であることを知られてはならない。スペクトルマンに至っては公害Gメン蒲生丈治であることを知られたら変身能力を失う。多羅尾伴内は探偵であることを知られずに片目の運転手に化ける。遊び人の金さんが南町奉行であることを知られたら捜査は立ちゆかない。
 いずれも隠すべき実体があってこそ「仮面」があるのです。しかし赤影は。
 忍者って、そもそも隠された存在ではないですか。その証拠に、赤影の敵もしばしば覆面しているではないですか。それなのになぜに「仮面」を誇示するのか。
 現代になぞらえるなら、「仮面の忍者赤影」は、やはりこれに託すしかないでしょう。すなわち。
 「仮面の2ちゃんねらーオマエモナー」


7月11日(水)
 肉体的精神的に低調な時には、夢の中でさえも状況になすがままに流され、登場人物に相づちを打つのみの役だったりする。情けない。


7月10日(火)
 ベトナムから持ち帰った料理カードに従って、料理を作る。
 なにしろうまそうなのだ。大皿に盛られた牛肉。そのまわりに散らされた香草。真ん中に飾られたニンジンで作ったバラ。横におかれたライスペーパーとライム。。
 さっそく辞書を片手に解読にかかる。ええと、牛ヒレ肉一キロ。これは言語学的には容易だが、経済学的には困難だ。とりあえず豪州産牛切り落とし五百グラムでごまかす。
 次からがまったくわからない。辞書をもってしてもわからない。なんだよこの、「五十グラムの壺の酢」ってのは。「五十グラムの乾燥した果物」ってのは。「ひとつの酸っぱい静かな果物」ってのは。
 やむなく断念。牛肉をヌクマムで炒める。豚肉は茹でる。モヤシを茹でる。これらを、キュウリ、ミョウガ、ショウガ、シソと一緒にライスペーパーに包み、ヌクマムと豆板醤とレモンで作ったタレで食う。
 そこそこおいしい。
 教訓。妥協はすべし。

 きょうのベトナム語会話。
「義理チョコですよ、義理チョコ」
「ケォ ショコラ ギリ ダイ! ケオ ショコラ ギリ!」


7月8日(日)
 昼飯にベトナムから持ち帰ったバインバオを食う。
 要するに豚まん。まあ、中華街のありきたりの豚まんくらいの味はする。ちょっと中の具がスパイシーなのがベトナム風か。
 それよりもバインバオの売りは、中に煮染めたウズラの卵が入っていること。有名店だと二個入っているそうだが、ここのは一個であった。中まで味が染みていておいしい。オデンの煮卵を凝縮したような味だ。こういうの、日本で作っても売れるかもね。
 昨日のネムチュアの残りをフライパンで炒めてみたが、ネトネトしてきて甘みが増幅されてしまった。やはり炭火で焼くべきなのか。あとは、細切りにしてサンドイッチに混ぜるか、チャーハンに混ぜるかだな。

 昨日の飲み会のあと、カラオケに行ったのだが、そこで未鏡氏がみょうな歌を歌っていた。ピンクレディのSOSに合わせて、
「男はオーカマなのよ 気をつけなさい 年頃になったなら つつしみなさい 紳士の顔していても 心の中は オーカマがケツをむく そういうものよ (中略) エイズOS エイズOS ほらほら呼んでいるわ 今日もまた誰か お尻のピンチ」
 なんか聴いたことがある歌詞なので確認したら、やっぱり新体操会社のマンガだという。ああ、情報源が一緒だったか。鬱だ氏膿。
 たしか新体操会社の替え歌には、「若い娘が 脱糞 お色気ありそで 脱糞 ありそで脱糞 なさそで脱糞 ホラホラ黄色いクソだらけ〜」というお下劣なのもあったなあ、などと感慨。


7月6日(金)
 帰国して宅急便に預けた荷物が届く。
 カバンを開いてみると、ほのかにこうばしい香りが。ひとつづつ開けて確認。酒瓶や陶器は大丈夫だったが、どうやらヌクマムの容器から若干漏れていたようだ。
 軽いし割れないのでいいか、と思い、日本の醤油のようなプラスチック容器のヌクマムをスーパーで買ったのだが、それが圧力で潰れ、中身がすこし出たらしい。ビニール袋で包んでいたのだが、そこからわずかに漏れ、包んでいたお土産のTシャツにほのかなベトナム風味を与えていた。ホーおじさん、ごめん。
 夕食には、サイゴンのスーパーで買い、手荷物で持ち帰ったネムチュアを食う。豚肉のミンチを練って固めてバナナの皮に包み、発酵させたハムもどきの食品。市場で売っていたのよりも、唐辛子や黒胡椒、ニンニク酢漬けなど、豚肉と一緒に練り込んだ具が多く豪華版。ちょっとラプチョイという、中国のソーセージのような外見。しかし味は、やや酸っぱさが足らず甘口。やっぱり、こういうのも納豆と同じで、市場でオバちゃんが売ってるような方が美味なのかな。


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