ミレニアムの祭典

「さて、年末恒例の紅白グル合戦、今年も元気にやってまいりましょう。紅組の司会はわたくし、宜保純子でございます」
「今年も新人、ベテランが揃った豪華な顔ぶれ、大晦日の祭典、とくとご覧になってください。白組司会の中村サイ九郎です」
「トップバッターはフレッシュ対決です。まず紅組は初出場、法の華です!」
「いきなり足の裏を覗いてますね」
「しかしあの教祖様は、でかいですね。あれに『君、その生活ダメだよ。死ぬね』なんて言われたらビビっちゃいますね」
「白組も負けてませんよ。こちらも初出場、ライフスペースです!」
「あらあら、いきなりミイラを持って来ちゃって」
「なんかミイラの脈拍と体温を測ってますよ。どういうつもりでしょう」
「小学校の夏休みの宿題を思い出します。私、ヒヨコの成長観察日記をつけてたんですけど、途中で死んじゃったもので、『8月5日 今日も動かず』『8月6日 動いたと思ったがウジが蠢いていた』『8月7日 ウジが肉をほとんど食い尽くす 骨と羽毛だけに』『8月8日 臭い』って書いたら先生に殴られました」
「そんなことはどうでもいいです。そろそろ決めゼリフ合戦ですよ」
「せーの!」
「最高でーす!」
「定説でーす!」
「さあ、紅組の二番手は街頭パフォーマンスなら任せとけ、宗教界の野猿といわれている、ハレー・クリシュナ!」
「わあ、大勢で弁髪を振り回して踊っていますね」
「お揃いの黄色い衣がとってもきれいです」
「よぉし、白組はこれ、ラブ・ファミリーです!」
「あれあれ、いいんですかこんなの映して。きゃぁ」
「いきなりやってますね」
「次いきましょう」
「続いては、若手真打ちといっても過言ではないでしょう。紅組が自信を持ってお贈りする、オウム真理教です!」
「……あれ、空飛ぶグルがいませんよ」
「グルは残念ながら、拘留延長のため来られないそうなんですね。衛星生中継をお願いしたのですが、『プライベートを大切にしたい』ということで、残念ながら断られました。残党がなんか謝ってます。なになに、悪いことをした。被害者には心からお詫びする、と」
「さあ、白組のこちらは懲りない絶好調教団、幸福の科学だ!」
「……本を配り始めました。これを読んで試験するそうです」
「……ちょっと、盛り下がっちゃいましたね」
「ここで心機一転、紅白攻守を入れ替えて、フレッシュ国際派対決、白組は今年集団自殺したほやほやのアメリカカルト、ヘブンズゲイトです!」
「あらあら、死んだ人たちをUFOが霊界に連れて行っていますよ」
「ひとり残された人が、俺も連れて行けと泣いています。俊寛でしょうか」
「何か言っています。ええと、『おらもぱらいそさつれていってくだせ』。ちょっと宗教違いの人のようです」
「国際派なら紅組はこれ、今年中国政府から弾圧のまっさかり、法輪功の登場です!」
「おお、気功で警官隊を倒していますね。でも紅衛兵には通じないみたい。思想が強固だからでしょうか」
「やっぱり紅は強いんです!」
「そういう問題ですかね」
「さて皆さん、懐かしい教団が、ここに再結成されました!」
「白組は700年代を駆け抜けたあのバンド、薔薇十字団です! おお、ボーカルのサンジェルマンは不老不死の霊薬、ギターのカリオストロは錬金術、そしてドラムスのリーダー、ローゼンクロイツは、賢者の石をひっさげての登場だぁっ!」
「みなさん、昔と変わらずお若いですね。さて紅組はこれも再結成、ビッグヒット『君はグノーシス』はいまだに歌い継がれています、マニ教です!」
「さてさて、毎年楽しみにしている人も多いでしょう、紅白恒例のパフォーマンス対決、いよいよ始まります!」
「白組のこの豪華なステージを堪能してください。きらきらと金粉が舞い踊っております。この夢幻的なパフォーマンスは、そう、白組のプリンス、サイババです!」
「紅も負けてませんよ。どうですかこの、美しくも狂おしく燃え狂う焚き火。紅組のシンボルの炎です。この劫火の中をしずしずと歩いていくのは、阿含宗です!」
「ここでベテラン対決です。白組は韓国生まれのメシア、統一教会です!」
「ああ、駄目です、ここでトンネル掘っちゃ。いや、飴ちゃんはいりません。純潔キャンディー? まあ失礼ね」
「集団結婚式もつつがなく終わり、文ちゃんの遺伝子は花嫁に分かち与えられたようです」
「紅組は、宗教に強きは政治も強し、創価学会です!」
「あああ、ここで折伏しちゃ駄目ですってば、え、淫祠邪教? いや、それはそうなんですが」
「最後に地域振興券をばらまいての粋な退場でした」
「粋かなあ。そろそろ紅白も終盤です。白組はカルト界の大御所、ロシアの去勢宗教、スコプチです! おお、すごい。信者が互いに去勢しあっています。あ、一般人も捕まえて去勢しています。ああ、何ですかあなた、いや私は、ひえええ、切らないでぇ!」
「あらら、切られちゃいましたね。流血して失神しています。輸血しようとする医師団を、エホバの証人が必死に止めています。崇教真光は手かざしで癒そうとしています。さて紅組は、千年の歴史を誇る、後醍醐天皇も信者だったという、重鎮、真言立川流です! きゃ、またいきなり、お坊さんと女の人が、や、やってます。あらら、そして女性のあそこから、体液を、髑髏に塗りつけて、お祈りを、あ、何だか、頭が痛いんですけど、ああああああ」
「申し訳ありません。紅白の司会が死んでしまいましたので、総合司会のわたくし、宮本龍神が大トリを紹介させていただきます。白組のトリを勤めるのは、おお、十字架に掛けられた人が、天から降りてきます。復活です。ああ、何だか地中から死者がボコボコと、ゾンビでしょうか、いや、復活ですね。最後の審判でしょうか」
「おおお、紅組では金色の光に包まれて、弥勒菩薩の降臨であります。もう五十六億七千万年たったとでもいうのでしょうか。とにかくキリストの再臨と弥勒菩薩の降臨、いったい来年の紅白はあるのでしょうか、そもそも来年世界はあるのでしょうか、それでは皆さん、また来年、え、私、地獄? いやあぁっ、地獄はいやぁっ!」


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