舞水端里のかぐや姫

 むかしむかし、舞水端里に竹を取って暮らしている、老夫婦がいました。
 ある日、おじいさんは、いつものように竹を取りにいくと、まぶしい光を見ました。
「しまった! これは軍隊のサーチライトだ。きっと軍事機密を盗みにきたスパイと間違われて、強制収容所に送られるに違いない」
 おじいさんは一瞬そう思って悲しみましたが、よく確かめてみると、サーチライトではなく、竹の先端が光っているのです。
「これは珍しい竹だ。ためしに切ってみよう」
 おじいさんが竹を切ると、なんと中に、小さな女の子がいたのです。
 子供のいないおじいさんとおばあさんは、とてもよろこびました。
 さっそく人民班長に報告すると、その話が労働党を通して将軍様まで達しました。
「それはすばらしい科学技術の成果だ。主体思想の勝利といえよう。みんなで大事に育ててやるがよい」
 という、将軍様のありがたいお言葉により、老夫婦は配給もふやされ、豊かな暮らしをすることができました。
 将軍様はその子を「かぐや姫」と名づけようと思いましたが、チョッパリ(日本人)が卑怯にも、すでに人工衛星に命名していることを知り、「光明星」と名づけました。

 光明星はすくすくと育ち、やがて、たいそう美しい女性になりました。
 しかし、光明星は毎晩毎晩、悲しそうに月を見上げては泣くようになりました。
 おじいさんとおばあさんが心配してわけをたずねると、光明星は泣きながら言いました。
「じつは、わたしは月の世界の者です。いままで育てていただきましたが、まもなく、月に戻らねばなりません」
 老夫婦は突然の話に、びっくりしてしまいました。
「しかし光明星や、どうやって月に戻るのじゃ」
「わたしの生まれた竹は、銀河2号というロケットになっています。あの竹に乗って、月に戻ることができます」
 その話が将軍様のもとに伝わると、将軍様は鷹揚にうなずきました。
「朝鮮半島で生まれたものは、みんな我が祖国の国民となるべきなのだ。それと同じように、月に生まれたものは、月に帰してやるべきだ。よし、さっそく光明星を月に戻してやろう」

 しかし、腐敗した資本主義帝国どもは、将軍様のありがたいおぼしめしを知らず、「あれは弾道ミサイルの実験だ」「アメリカへ核弾道ミサイルを発射できるという脅迫行為だ」「いつもの瀬戸際政策だ」などと、悪口や言いがかりをつけてきました。
 そして、3人の覇権主義者どもが、光明星が月に帰るのを妨害しようと、次々にやってきました。
 最初にやってきたのは、世界を支配しようとする覇権主義のボス、アメリカのオバマ大統領でした。
 自分にできないことはない、とうぬぼれているオバマは、
「ミサイル発射実験は国連決議に違反している。発射を強行するなら、新たな制裁措置を行う」
 と脅迫しましたが、光明星に、
「発射をやめてほしいならば、食料援助2百万トンと、原子力の平和利用技術をのこらず持ってきてください」
 と要求されると、頭をかきながら、「アフガンが忙しいので、そっちを片付けてから、ちょっと白人に相談してくる」と退散し、二度とやってきませんでした。

 2人目にやってきたのは、アメリカの威を借るキツネ、日本の麻生首相でした。
 麻生は官僚の作成した文書を、たどたどしく読みあげました。
「貴国のとびとび体の発射は、きわめてもも発的な行為で、断じてみ過することはできない」
 しかし光明星に、
「ならば日帝支配40年の謝罪と賠償を持ってきてください」
 と言われると、「それはまず、議会で民主党の同意を得てからでないと……」と退散しました。
 おまけに、おばあさんがトウモロコシ粥をたくかまどの煙が日本のレーダーに誤探知され、それを担当官が確認せずあわてて発表し、おまけに幕僚部からメールが誤送信され、「すわ、ミサイル発射だ!」と、日本国内は大騒ぎになりました。
 これをご覧になられた将軍様は、
「今回のことで、日本の自衛隊は、機器こそ最新鋭をそろえているが、危機管理システムも連絡指揮体制もろくに整備されていない、ハリコの虎であることが明白となった」
 と、満足げに語られました。

 最後にやってきたのは、朝鮮半島分断の元凶、アメリカ帝国主義の傀儡政権、韓国の李明博大統領でした。
 李明博はおずおずと、「今回の発射は、たぶん人工衛星だとは思うのですが、国連決議に明白に違反しており、しかもわが国は、長距離のミサイルを保有せず……」と言いだしましたが、光明星は押さえつけるように、
「ならば民意を問いなさい。大韓民国の国民は制裁よりも話し合いを望む声が多数を占めていますよ。あなたは、世論から浮いている存在なのです」
 と決めつけました。李明博は泣きながら帰っていきました。

 やがて銀河2号は、予定通り発射されました。
 ロケットの1段目は日本海に切り離し、2段目は太平洋に切り離して、光明星は、みごとに月への軌道に乗り、帰っていきました。
 月に戻った光明星は、感謝の気持ちをこめて、解放の恩人金日成将軍の歌と、人民の指導者金正日将軍の歌を、その美しい声で、たからかに歌いあげるのでした。
 その歌はいまでも聞こえています。

教訓:聞こえない人は耳が資本主義、覇権主義に毒されて腐敗しています。余談ですが私は外耳道炎で、まだ聞こえません。


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