天使降臨

 というわけでもう悪口を言う必要も嘘をつく必然性もなくなってしまった私は、これから心機一転、善意と真実の駄文書きとして生まれ変わろうと思う。打倒向田邦子。ぶっとばせ佐野洋子。ヴァー。

 そういうわけでエンジェルと呼ばれた男としては、今回はエンジェルについて語ろうと思う。エンジェルが縁結びの神様だと誤解されたのはなぜなのだろうか。縁ジェル、などという駄洒落とは別なところにあるものかと存じます。円ジェル、つまり断面が丸くてジェルが塗布されたゴム製の物体とも無縁だと存じます。援助るだとシャレにもなにもならないですね。ごめんなさい。アンジェるだとたぶん通用する人が極少数になってしまうと思われます。すみません。
 砒素ミルクで有名な森永のエンジェル、あれもそうだが、エンジェルはよく羽根の生えた幼児の姿で描かれることがある。ギリシャ・ローマ神話の縁結びの神、エロースもしくはキューピッドと混同されていることが多いのだ。本来天使とはああいうものではない。天上にいる天使は顔以外の肉体をもたず、首から下は八枚の羽根だけらしい。地上に降りた天使は百万ボルトに帯電し、両性具有で、おっぱいがふくらんでいてちんちんが生えているらしい。女のくせに全然ふくらんでいない人間や、男のくせにショートホープが貫通したりする人間とはえらい違いである。さてエロースもしくはキューピッドはどこにいるかというと、母親のアフロディデもしくはヴィーナスがキリスト教のもとでアスタロトという悪魔に化せられているところをみると、まず悪魔になっていると思って間違いない。だから良縁を求める男女は神に祈るよりも黒ミサをあげたほうが効き目がある。両円が必要なら黄色い看板黒ミサ、などというCMとは関係ないものと存じます。
 もっともここでややこしいのは、悪魔とは堕天使であるという考えからアスタロトを堕天使の仲間に分類することもあるのだ。悪魔の筆頭ルシフェルは間違いなくもと天使だった。神の右腕とまで呼ばれた天使の親分格だったが、神に反逆したため醜い姿に変えられて地底に封じられてしまったのだ。もともとキリスト教でいう悪魔とは、もと天使だった堕天使と他の宗教の神だった人材がごっちゃになっているのでそのへんの混乱が生じている。いってみれば日本プロレスが、もと準エースだった猪木、豊登と他団体育ちのグレート草津、ラッシャー木村、スネーク奄美などの混成旅団だった国際プロレスを警戒するようなものか。たとえてかえって話がわからなくなりました? すみません。

 とりあえず天使とは縁結びをするような生易しい存在ではなかったということで。そういえばフランス革命のサン・ジュストは「皆殺しの天使」という異名がつけられていた。イスラム教ではアズラエルは死の天使として知られ、だれかが死ぬときにその羽音が聞こえると言われる。これと混同されがちなアスラフェルは、地球上の人類が滅びて神と悪魔の最後の戦争が起きるときにラッパを吹くだけの役目で雇われている。とても安月給だそうだが、終身雇用ということで報われているそうだ。不和の天使として知られているのがヘリエルで、男女が諍いをなすとき、夫婦が喧嘩するときその羽音が聞こえると言われている。こちらは酷使で死にそうになっているそうだ。これから休みが多くなるが、どうか男女カップルの皆様ヘリエルの羽音を聞かずに済ませますように。ああなんという善意の結びだ。私ってなんていい人なんだろう。


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