国府祭(こおのまち)

端午の節句に行われる祭礼、相模国の国府祭を見物した。(2013/5/5)

相模国の一之宮・寒川(さむかわ)神社、二之宮・川匂(かわわ)神社、三之宮・比々多(ひびた)神社、四之宮・前鳥(さきとり)神社、一国一社・平塚八幡宮、総社・六所神社が相模国の国府に一堂に会する祭りである。神奈川県の無形文化財に指定されている。

この祭事は養老年間(717年-724年)に始まったと言われ2月4日に行なわれていたものが、弘安5年(1282年)に5月5日に改められ、明治に入り太陽暦にとなって6月21日(旧暦5月5日付近)に、そして昭和40年代の始めに5月5日に改まり、現在に至っている。「端午祭」とも言われている。

奈良・平安時代の国府祭は、単なる祭典行事ではなく、国司が祭り主として行なわれる神祇(じんぎ)制度下の行政であり全国各地の国府で行われていた。鎌倉時代になり幕府を開いた源頼朝が国司制度を廃止したため、国司が執り行う国府祭は全国的に廃止された。しかし、頼朝が幕府を置いた鎌倉の近傍、相模国、安房国、武蔵国の3ヵ国だけは政治の一環としてではなく祭りとして国府祭を続けることを認めた。東京都府中市にある大國魂(おおくにたま)神社の「くらやみ祭」と千葉県館山市にある鶴谷八幡宮の「八幡祭(やわたんまち)」とこの相模「国府祭」である。この中で「こおのまち」の呼び名をのこすのはこの祭りだけである。


 白丁に担がれて階段を降りる白木御輿

各社においてそれぞれ国府祭発御祭斎行をおこない御霊代を御輿に奉遷し、御輿が大磯町国府の神揃山(かみそりやま)に向け出発する。

二之宮・川匂神社の発御祭は8:00に始まる。8:40 御霊を納めた白木御輿と大御輿の二機の御輿が出発。


 階段を降りる大御輿


川匂神社を発御した二機の御輿は、川匂神社前でトラックに乗せられ、囃子太鼓社、御輿社、在庁車、世話人等奉仕者を乗せたバスと車列を整えて、国府の月京まで車列で巡幸。

月京で下車し、渡御行列を整えて巡幸開始。


神揃山の手前、化粧塚では川匂神社の御輿は塚の上で休み、10:30に「粽神事」を行う。


 木の上から粽を蒔く「粽神事」
ここで「粽神事」を行うのは川匂神社のみ。



御輿は神揃山を目指して山道を登る。

神揃山(かみそりやま)

神揃山(かみそりやま)へは、一之宮・寒川神社から五之宮格・平塚八幡宮までの五社の白木御輿が順次到着着座する。 各社は着座後直ちにそれぞれ天下太平・五穀豊穣・産業発展を祈念した神事を行う。


正午、神揃山におけるこの祭りのメインイベントである「座問答神事」がはじまる。



 「座問答神事」

式場四方を忌竹で囲い注連縄を張り巡らせた中で一之宮・寒川神社と二之宮・川匂神社がそれぞれの虎の皮を「おぉお~」といううなり声と伴に上座に押し進めること三度。三之宮・比々多神社の宮司の「いずれ明年まで」のとりなしで五社対座の内に式が終わる。

相模は古くは相模川流域の相武国(さがむ/県中央部)、酒匂川流域と中村川流域の師長(磯長)国(しなが/県西部)が並立していた。この神事は、相武国と師長国を合併して相模国とする際、相武国最大の神社である寒川神社と師長国最大の神社である川匂神社のどちらを合併後の相模国一宮にするかで争ったことに由来すると言われている。


12:20 五社の総代が六所神社へ「総社奉迎使(七度半の催促使)」として出発。各社の御輿も神揃山「発御祭」を斎行した後、渡御行列を整え大矢場の祭場へ巡幸。神揃山を降りたところで、寒川神社、川匂神社、平塚八幡神社はそれぞれ白木御輿から大御輿へ御霊代遷座(みたましろせんざ)して大矢場へ向かう。


 左に右に倒される比々多神社の御輿


大矢場への巡幸に際も、三之宮・比々多神社の御輿は大矢場の入り口で乱舞を見せる。



大矢場〔逢親場〕(おおやば)

大矢場〔逢親場〕(おおやば)では、神揃山で対座した五社に、総社奉迎使に迎えられた総社・六所神社が加わり国府祭が斎行される。

まず、七十五膳の山海の幸が献上され、一之宮から四之宮および平塚八幡神社の宮司が各社の分霊である守公神を総社に奉る「神対面神事」が行われる。古来国司による巡拝は、大変な日数と費用と人員を要したため、巡拝する神社の分霊を国府近くの神社に合せ祀るものである。守公神は1年間、相模国の守護神として総社・六所神社に祀られる。


 「神対面神事」


 「国司奉幣」
続いて国司(大磯町長が代行)による各神社への巡拝「国司奉幣」と、総社・六所神社の宮司が一之宮~四之宮、平塚八幡神社を巡拝をする「神裁許」が行われる祭りは終わる。

 「神裁許」

16:00 六所神社の御輿に見送られながら、集まったときとは逆に、五之宮格・平塚八幡神社、四之宮・前鳥神社、三之宮・比々多神社、二之宮・川匂神社、一之宮・寒川神社の順で各御輿はそれぞれ還御に向かう。


還御時、寒川神社、川匂神社、六所神社の各大御輿と、川匂神社の白木御輿による華合わせが行われた。寒川神社の大御輿は今年新造でお披露目である。

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