梅雨の花散策(神奈川県鎌倉市 2006.06)



梅雨入り間もない小雨降る日曜日。
古都鎌倉を散策。

まず訪れたのは北鎌倉駅に近い縁切寺とも呼ばれる東慶寺。 明治に至るまで男子禁制の尼寺であった。
咲き始めた紫陽花が雨に濡れてより淑やかに見える。
鎌倉の多くの古刹は丘を背負い、谷戸と呼ばれる谷合に建立されている。 東慶寺の北側の岩場にはへばり付くように咲くイワタバコが見ごろであった。

山地では古くからイワナ(岩の菜)とよび山菜として利用されてきたそうでほろ苦味があり、 葉はタバコに似て苦味もタバコを思わせるそうだ。

イワタバコの別名は「待ちかね草」
山地の春は遅く、このイワナ摘みができる本当の春を待つ気持ちが現れています。
かぼそい茎に花をつけたアカバナユウゲショウ(赤花夕化粧)

末宵草の仲間で名前も雅だが立ち姿や花弁も優雅さが漂う。
日本の梅雨の季節にはアジサイが似合う。決して目立つ花ではないのに東慶寺の庭園で主役を演じていた。

紫陽花そのものは日本そして東南アジアが原産地。 「ヤマアジサイ」「すみだの花火」などが日本原産と言われている。

紫陽花の異名に「梅雨の花」。
雨の国・日本ならではの古くから伝わる詩的な言葉だ。
浄智寺に向かう道すがら鮮やかな色合いを見せるキンシバイ(金糸梅)

ビヨウヤナギの近縁種で中国伝来の花。

なるほどおしべが金の糸のように見える。
雨上がりの浄智寺
雨に濡れたホタルブクロが生き生きと見え「雨降り花」の異名通りだ。

独特の釣り鐘状の花のホタルブクロのホタルは「火垂る(ほたる)」で「ちょうちん花」の意味だ。
本通りから木々に覆われた切通しの小道を歩けば民家の垣根は篠竹で編まれいかにも鎌倉然としている。



しばし歩むと海蔵寺に。 正門脇の通用門は古都そのものの風情が漂う。

雨に清められた石段は爽やかで心が洗われるようだ。
紫陽花の季節。紫陽花の名月院は見物客で込んでいる様子であったが、 ここ海蔵寺は観光的な本通りから離れていることもあって訪れる人も少ない。
時々訪れる人が思い思いに静寂な雰囲気を味わっている。

背景の樹木と低木にバランスよく配置された古木の造形は、落ち着いた日本庭園の雰囲気を醸し出している。
ガク紫陽花の仲間のようだ。
赤いガクが濡れて緑多い庭園の中で白い花とのコントラストでひときわ鮮やかに見える。

入梅のこの季節はドクダミの花の季節
八重のドクダミは珍しい。

この時期ドクダミを刈り取って水洗いし陰干し。純粋なドクダミ茶はまた格別な味だ。
雨がハスの池の水を叩き絶え間なく丸い輪が広がる。

海蔵寺の縁側にしばし腰を下ろし紫陽花に降る雨音を聴けば心が癒される。
こんな安らぎを感じたのはいつ以来だろうか。
黒松の根元を覆うコケ
雨に濡れより鮮やかさを増す

梅雨の季節というのに爽やかさを感じさせる。これが日本の美意識なのか。
鎌倉に残る唯一の尼寺・英勝寺を訪れるとビヨウヤナギが彩っていた。

英勝寺の奥は高台で尼が住んだと思われる母屋がある。茶室の縁側に腰をおろして庭の草花や鎌倉の山々を眺めるもよし。

母屋の隣は竹林。まだ青白い竹が雨を吸い込んで勢いよく伸びている。
北条政子の墓がある寿福金剛禅寺。
山門から本堂までの長い参道としっとりした木々が古都鎌倉ならでわの歴史と自然が調和した落着きを感じさせる。



梅雨の花を訪ねた古都鎌倉の散策は日本人的心とも言える雨の風情の原風景を思い出した散策であった。
   
 
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