オアシスポケットの話


 今、私はこれをオアシス・ポケットで書いているわけですが、このオアポケとの邂逅  (かいこう)を少し話します。

 HP200LXが全盛のころ、4年ぐらい前(1994頃)のことです。HPの実物を見る機会があ
 りまして、小さくかわいいとは思いましたが、キ−ボ−ドが小さいので私のような
 大量文書製作者にはむかないな、と感じました。

 私は「タッチタイプができてかわいい端末がほしいなあ」と考えながら秋葉原を歩い ていました。そこにあったのですね。オアシス・ポケット2が。

 私はオアポケの1を知らなかったのです。ショックでしたね。理想のマシンがここに  ある、と思いました。電源は入っていなかったのですが、タッチしてみて、これなら キ−ボ−ドも打てると確信しました。(あとで問題の多さにも気づきましたが)

 そこでさっそく購入したか、と言いますと、それが出来ないのですね。
 定価は10万円くらいですが売価は6万台でした。この6万という数字は難しい。
 作家のプロならともかく、私はマンガ描きです。趣味に6万は使えないのですね。
 それから気をつけて調べてみると、オアポケ3がまもなく出ることも知りました。
 私は、3がでたら2はもっと安くなるだろうし、その時かんがえればいいや、と
 とりあえず問題を棚上げしました。

 その年の暮れ、友人と飲んでいるとき、話しが携帯端末のことになりました。
 友人はそっちの方の趣味があり、各種の小型ワ−プロ・パームトップパソコンの収集をしているというのです。

「でも、持っていても使わないよ。外に出て文章を書くというシチュエ−ションというものが、僕にはなかったから」彼はそう言いました。

 私はドキドキしながら、

「じゃ、オアポケは持ってるの?」と聞きました。「うん」
 彼は応じます。

「つかわないのなら売ってよ、2万5千円出す」「売った」
 

そういうやりとりの後、めでたくオアシス・ポケット2は私のもとに来たのです。
 (ちなみに彼は「文豪」のミニタイプを私の兄に売りつけようとして失敗しました)

 それから3年の月日がたちましたが、私がオアポケを使いこなしてきたか、と言うと あまり自信がありません。

 第一に、オアポケ特有の癖が気になって長文を入力しようとは思わないのです。
 

まず「上書き専用」ですし、全角と半角の切り換えもうまくいきません。変換はトロ
 くて長文の一括変換なんて夢の夢です。通信機能はありますが、使いこなすのは大変です。文豪やルポ、書院などに比べてもオアシスは特殊なワ−プロだと言えましょう。

 それでも私は一応その機能を一通り身につけ、ある時はアイデアプロセッサとして使い、ある時は地方からの通信に使い、航空券の予約をニフティでするなど、一応の使い方は覚えたのです。

 ここで問題ですが、わたしはこの機械に満足しているでしょうか?
 応えは当然、NOです。

 一つは時代が変わってしまったということです。携帯端末にもインタ−ネットブラウザ機能が要求されますし、ワ−プロ以外の機能もいろいろと要求されます。
 いわば付加価値が必要なのですね。

 そういう事で言えば、人間の欲望なんてどこまでもはてのないものだ、ということになるのでしょう。

 今、私はリブレットカシオペアパワ−ザウルスが夢に出てきてしまいます。あれほど欲しかったオアポケのことなんかほったらかしです。それは人間の欲望のはかなさを表していることなのかもしれません。

 しかしオアポケの名誉にかけて言っておかなければなりません。

 90年代の携帯端末は、オアポケという金字塔の上に作られなければなりませんでした。それが、どういうわけか無視されています。

 かろうじてモバイルギアが、タッチタイプ可能なキ−ボ−ド構成で応えているか、という程度です。(でも、オアポケよりデカイぞ!)

 正当な後継者であるインタ−トップも、けっしてほめられません。だいたいあれは、ポケットに入らないよ……中途半端な所がオアポケ的かな。

 まあ、こういう事を考えながら、物欲の爆発を押さえている私です。(1998)

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